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愛しい君へ (トマス視点)

 カサンドラ城を管理するマンダイ家、そしてマンダイ家当主が治めるラスタ。

 五十年前に、カサンドラ城を女性を守るための城と定め、女性の騎士団が創設された。数年の混乱のち、騎士団は城内を警備するだけの業務に留まり、今の形に落ち着いた。

 マンダイの当主は何を思ったのか十年前より独自の騎士団を作り、ラスタはカサンドラ、マンダイ、街の警備兵団と三つの武力組織が共存している不思議な街だ。

 そのため王城では、数年単位で文官を送り街の様子を報告させる事にしていた。

 前任者は全く仕事をしなかったようだ。マンダイ家からの接待に毎日忙しく、その報告書はマンダイ家とその騎士団を讃えるようなものばかり。


 隣国から戻り王都に飽き飽きしていた私に、父がこの任を押し付けた。


 マンダイ家からの誘い以外は快適な生活だった。街の様子は貴族の姿のままでは探れないので、私自身が変装したりして、それなりに楽しませてもらった。

 そんなおり、王都の友人が訪ねて来た。


 ――カサンドラ騎士団長ファリエス・リンデについて調べてくれ。


 そんな事を頼まれ、困っているとどうも王女からの頼みらしい。理由を聞いたところ、王女が懸想している王宮騎士ナイゼル・カランの想い人、という返答が返ってきた。

 悪いが断らせてもらった。


 恋愛沙汰などに付き合っていられない。

 王女も時折困った事をされ父が嘆いていた事を思い出した。


 ある日、偶然にもそのファリエスに会った。一言でいうならば火のような女性だった。

 赤毛に茶色の瞳。

 感情豊かで面白い、会うたびに私は彼女に惹かれていった。

 身分を隠して会っていたが、色々疑われてしまい、暴露した。

 可能な限りだけど。


 一週間ほど無視をされた後、私達は正式に付き合う事にした。

 婚約を済ませ、結婚までの日程を練っている中、ナイゼル・カランが訪ねて来た。

 最初に驚いたのはその容姿だ。ファリエスの男性版のようで、自己陶酔的な人物だと疑うしかなかった。話して見ると普通の男性で、胸を撫で下ろしたが。だが彼が私達の婚約を歓迎していないのは明らかだった。


 彼は結局結婚式を欠席した。ファリエスは本当に彼の想いに気づいていないらしく、かなり怒っており、すこしばかり同情した。


 もしかして彼が告白していたら勝機はあったかもしれない。それくらい二人は仲が良く、お互いを理解していた。

 

 けれども私は一生ファリエスには彼の想いを伝えるつもりはない。



 愛しい君へ

 私は、君が思っているような穏やかな男ではないんだよ。

 本当は君を私だけの籠に入れておきたい、そう考えている。

 けれども君に嫌われたくないから、私は猫を被り続けるよ。

 いつか、君が私の本当の姿に気づいても逃がしてあげないから。



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