恋心は夏甦る
気が付けば恋をしていた。
・・・一目惚れ、それはそんな恋だった。
そう気がついたのは後のことだがそうだろうと思う。
その想い人は夏になると村へやって来てわずか数日ののちに帰ってしまうのであった。
その村は夏になると行商人が訪れ、想い人はその行商人一行と共に毎年村へやってきていた。
夏の訪れを今か今かと待ちわび、ようやく訪れたその日々はあっという間に過ぎてしまう。
そしてまた、次の夏を胸を焦がし待ちわびる・・・
父からは「奴とは住む世界が違うのだからあきらめなさい」と言われ、一家の者からも
「お嬢!素性を知れば並の奴なら逃げ出しますぜ?」と言われる始末。
それは決して報われないそんな恋だった。
わかっている・・・そんなことはとうにわかっているのだ。
娘は非常に美しかった・・・こんな辺鄙な村で見かけるなど場違いなほどに。
にも関わらず娘の素性を知る村の者から向けられるのは忌避の眼差し・・・決して
美しいものへ向けられるそれではなかったのだから。
そしてまた夏がやってくる―――
彼もまたここへとやってくる―――
長らく秘めていたその胸の内を明かさずにいられなくなった娘は
初めて彼を見つけたその海岸でその想いを告げるのだった―――
始めこそ驚いたような顔をしていたがやがて微笑みかけながらこう言うのだった。
「お嬢さん、気持ちは嬉しいけども君と僕とでは住む世界が違うよ。」
彼は人間で、
娘は人魚だった。
彼は陸に住み、
娘は海に住む―――文字通り住む世界が違ったのだ。
彼は翌日、人魚に会ったと、そう村の者に告げた際、
この村に伝わる歌で惑わし人肉を喰む人魚の伝説を聞かされ
二度とこの村を訪れることはなかった。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
唐突に小説が書きたくなり作ってみた初の短編なので文章・表現など見苦しい所も
あるかとは思いますが暖かく見守って頂ければと思います。
誤字・脱字などあればそっと教えて頂けると喜びますヽ(´▽`)/




