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第9話 噂話

「ルナー!ねえねえ聞いた?盗賊狩りの勇者様の噂!」


授業も終わり帰ろうとしていると、学友のサラに声を掛けられた。


「盗賊狩りの勇者様?何だそれは?」


「最近盗賊団を壊滅させ、役人に突き出しているお方がいるらしいのよ!

そこの領主が褒美を与えようとしても、その分を領民の皆さんの為に使って下さいって言って懸賞金しか受け取らないんですって!

その出来た人柄と多くの盗賊団を壊滅させていることから、盗賊狩りの勇者様と呼ばれているのよ!」


サラは普段から日常を退屈だと憂いている。

彼女を興奮させるには十分な内容だった。


「盗賊狩りの勇者様、か。

何人くらいのパーティーなのだ?」


盗賊団というからには人数も多い。

噂によると、世の中には100人以上の盗賊団も存在するらしい。

盗賊団を殲滅させるほどの勇者様ご一行は何人くらいなのかが気になった。


「一人よ!」


「え?」


一人、と聞いて意味がわからなかった。


「あまり面白い冗談じゃないぞ、サラ。

盗賊団って言うからには少なくても30人、多くて100人以上じゃないか?

一人で殲滅できるわけが・・・」


「一人だからこそ勇者様なにょ!」


「でも一人ならどうやって懸賞金を受け取るのだ?

お役所に行くにも、首30個以上なんて一人では持ちきれないぞ。」


興奮しすぎて噛んでいるが、そこはにはツッコミを入れず現実的な箇所に言及する。

盗賊の懸賞金を受け取るには、最低限の証明として首が必要である。

首100個を持ち歩く人物を勇者と呼ぶにはいささか抵抗があった。


「なんでも、盗賊を倒す前に商人に話をつけて馬車を借りるんですって。

盗賊を殲滅したら馬車を呼ぶ合図を出して、馬車に詰め込んで役所まで運んでるらしいわ。」


なるほど。

それなら馬車一つあれば盗賊の首を詰め込むには事足りる。


「凄いわよねえ・・・。

これまでの歴史の中でも、盗賊を一人も殺さず殲滅してる人物なんていないのに・・・。」


「ちょ、ちょっと待て!」


驚いて声を上げてしまった。

彼女はまたも、意味のわからない事を言ったのだ。

一人も殺さずに懸賞金を受け取る。

それはつまり・・・・


「ぜ、全員生け捕りにしてると!?

馬車何台必要だと思ってるのだ!?

っていうか一人で全員生け捕りに出来るわけがない!」


あまりにも現実的ではない話である。

そんな事は不可能に思える。

この国一番の魔法使いであれば壊滅させれるかもしれない。

しかし生け捕りともなると、一人では無理だろう。

剣で全員打ち倒すにも、この国一番の騎士でも100人生け捕りなんて不可能に思える。

噂が独り歩きしているとして思えない。


「だからー!一人で剣一振りでやってのけちゃうから凄い噂になってるのよ!

商人も商売の邪魔が一掃できて、国の事業が潤うなら商機も増えるってもんだからありったけの馬車を出すでしょうし。

お役所も大忙しらしいわよ?」


悪人を突き出されたお役所はどうするか。

罪状にもよるが、極悪人の場合は公開処刑だろう。

だが、そこまでの極悪人ではない場合は労働力として利用されることとなる。

砦や炭鉱など、国事に関わる作業の労働者として。

盗賊団の場合、ボス以外の多くが労働者になるだろう。

お役所は突然大量の人材の有効利用を迫られるのだ。

盗賊団が減るのはとても良い事のはずだが、お役所の人にとっては地獄なのだろうなと思った。


というか剣一振りで!?

とても現実の話とは思えないが、それが事実だとしたら・・・。


「・・・どんな人なのだろうな?」


「お!ルナも興味持っちゃった?」


自分もまだ未熟者とはいえ、剣には覚えがある。

一度だけでも指南を仰ぎたいと思った。

帰ったらお父様に噂について聞いてみよう。

伯爵の父からならもっと正確な情報が入手できるかもしれない。

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