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第7話 ベース

隣の部屋に行くと、お兄さんと奥さんが仲睦まじい様子で何かをこねていた。


「ああ、今作っている途中だから少し待っててね。」


あれは、多分麺類だ。

蕎麦打ち職人がこねているような塊と似てるからきっと麺類だ!

この世界の麺を楽しみにしながら待っていると、背後から声がする。


「パパ、ママ、おはよー。」


「リル!もう少し寝てなくて大丈夫かい?」


娘さんが起きてきたのだ。

起きている姿を見ると、寝ている時以上に可愛らしい。

年齢は6歳くらいだろうか?


お兄さんは娘さんに駆け寄り抱き上げようとする。

しかし、手が粉塗れになっているのに気付いたのだろう。

抱き上げようと出した手を引っ込め、かわりにしゃがんでリルちゃんの額に自分の額を当てた。


「うん、熱はもうすっかり無いね。よかった。」


外国人の若き父親と娘のやり取りは、まるで映画のワンシーンのように絵になると思った。

粉塗れの手さえ見なければであるが。


「リルすごく元気になったの!だからお手伝いするー!」


そうして、僕は3人が奮闘する姿を眺めている。

僕もやると申し出たが、「お兄ちゃんは座って見てて!」と美少女に言われてしまっては大人しくせざるを得ない。


「何を作っているんです?麺類とか?」


見ているだけでも絵になるし退屈はしないが、作っているものに興味もあるし聞いてみることにする。


「ああ。patだよ。この辺りでは一般的な麺類さ。

この後にお肉やミルクと一緒に茹でて、茹で上がったらチーズと一緒に食べるのさ。」


「パット?」


「違う違う。pat!」


即席の英会話?講師を前にして、僕は合格が出るまで復唱する。

正しい発音を口に出来るようになると、お兄さんはにっこりと微笑んだ。




出来上がったご飯を目にして驚いた。

ちょっと水っぽいクリームパスタにチーズを乗せたものをイメージして欲しい。

お皿の横には木製ではあるがフォークが置いてある。

一口食べると、見た目通りの味、クリームパスタだった。


お兄さん達の見た目といい、料理や発音といい、

この世界の人類はヨーロッパあたりがベースなのだろうか?

パスタと言えばイタリアか?

でも言語は日本語・・・謎だ・・・。


「お兄ちゃんお兄ちゃん!美味しい?」


リルちゃんに感想を求められ意識を戻されたので、「凄く美味しいよ。ありがとう。」と微笑む。

好みから言うとクリームパスタにはサーモン派なのだが、お肉でも十分美味しかった。

何より空腹なので美味しさも倍以上に思える。


「えへへー!リル頑張ったもん!」


そう、彼女は頑張ったのだ。

僕に病気を治して貰ったと聞いて「じゃあお礼に美味しいの作る!」と張り切ってお手伝いをしたのだ。

例え美味しくなかったとしても美味しいと答えなければいけないところだ。

偉い偉い、と言って頭を撫でると顔をくしゃくしゃにして笑う。


外国人の幼女って本当に天使だよな・・・と心の底から思う瞬間である。

決してやましい気持ちはない。決して。

僕はロリコンではないはずだ。決して。多分。


ご飯を食べ終わったら、今後のために情報を集めないといけない。

まずは地図とか近くの町の情報。

土地を治める権力者の情報。

この世界の常識。

そして奴隷制度の話。

考えなければいけない事が多すぎて憂鬱になる。


「お兄ちゃん、どうしたの?」


頭を抑えている僕を心配してくれたのだろうか。

上目遣いで尋ねる金髪の天使。


「ううん、なんでもないんだ。

それより一個だけお願いしてもいいかな?」


「なぁにー?」


「おかわりを貰っても宜しいですか?」



今後の事で悩むことを先延ばしにした僕は逃避するのであった。

ご飯と、美少女の笑顔へ。

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