第21話 謁見
「余が国王、ウードである。」
謁見の間。
多くの側近と兵士を脇に従え、玉座についている国王が名乗る。
ナオキは謁見の作法に習い、跪いてそれを受けていた。
「そなたは近隣の盗賊団を数多く壊滅させていると聞く。
見事である。
褒美を取らせるが、何か望む物はあるか申してみよ。」
「何でも宜しいのでしょうか?」
「うむ。」
伯爵の予想通り、褒美をくれることになった。
金品や地位ではなく好きなもの、と指定をされたのは好都合だった。
これで前から考えていた事が実行できる。
「では・・・。国王陛下は先の戦争の戦利品として奴隷の少女を有していると聞きます。
その奴隷を求めるのですがいかがでしょうか?」
都市で集めた情報では、国王が敗国の王女を奴隷として飼っているというものがあった。
国王の手元から奴隷が居なくなれば奴隷制度なんてもうどうでもいいと思うかもしれないし、
奴隷となっている子を保護出来る。
場はざわついている。
側近や兵士の想像では、爵位や金品、もしくは騎士の称号を求めるものだとばかり思っていたのだ。
「ふむ・・・奴隷とな?
いたぶるのにも飽きておったし良かろう。
おい、誰かあれを持ってこい。」
国王の言葉に身体が固まった。
・・・今、こいつはなんて言った?
兵士が奴隷の少女を連れてくる。
6歳くらいだろうか。
首には首輪、足には足かせがつけられている。
汚れと傷跡が全身にあり、普段からいたぶられているのが一目でわかる。
ナオキは心の底から怒りが込み上げてくる。
あんな少女に酷い扱いをしているやつらへの怒り以上に、自分に対して腹立たしかった。
奴隷というものがどういう扱いをされているか、何もわかっていなかった自分に。
自分が都市で笑って生活している間、あの子がどれだけ酷い事をされているか。
王族が奴隷を有したらどうするか。
玩具のようにいたぶって遊ぶ。
そんな良く考えれば分かることを全く想像すらしていなかった自分が腹立たしかった。
「かなり弱っておる故、長生きせんかもしれんがあれで良いのだな?
良いのなら手続きをして明日にでもそちの元へ届けさせよう。」
「お待ち下さい。
国王陛下、申し訳ありません。
出来れば今すぐ連れて帰りたいのですが宜しいでしょうか?」
明日なんて遅すぎる。
一刻も早くあの少女を解放してあげたかった。
ナオキの怒りが込み上げている目を見た国王は、「ふむ・・・。」と呟き少し考え込む。
「気が変わった。
ナオキよ、ならば今から余が用意する男と戦い勝利せよ。
さすれば好きにするが良い。
ただし負けたらそなたは一生、この国の騎士として働いて貰うが良いか?」
国王はナオキの目を見て、面白さを感じていた。
これまで自分にそんな目を向ける奴はいなかったのだ。
腕も立つとの事だしどれほどの腕か見てみたい気持ちもある。
こちらが勝てば実力者を有して国の戦力も上がる。
余興としては最高であった。
「は、構いません。」
「良し。準備がある故、1時間ほど時間を取らせるぞ。
闘技場を解放せよ!シラノを呼べ!」
国王の言葉に謁見の間は大きくざわついた。
「ナ、ナオキ殿!
闘技場が解放されると聞いたが一体何事なのだ!」
控えの間にて待機していた伯爵はナオキに詰め寄った。
一体何をしでかしたというのか。
「いやーすみません、奴隷の子を一目見たらちょっとブチ切れちゃって。
今すぐ連れて帰るって言ったらシラノって人と戦って勝てたらいいよって言われたんで、
ちょっくら戦ってきますね。」
「な・・・!」
その言葉に、伯爵は驚愕の声をあげて卒倒した。




