第2話 三つの要求
「ほう、三つとな?どんな能力を欲するのじゃ?」
「まず1つ目。なんでも治せる力をください。」
「治す?なんでそんな力が必要なんじゃ?」
「例えば奴隷商人から奴隷を解放した時、その人達が病気で動けなかったらどうしようもないからです。」
そう、目的は奴隷制度を無くすことなのだが、奴隷となっている人達は酷使されているだろう。
疲れ切っているだけなら休めばいいだけの話だが、病気になって死を待つのみの場合はどうすればいい?
腕や足が無くなっていることすら有り得る話だ。
せっかく助けたのにそんな状態だとこちらも助けたなんて到底思えない。
「確かにのう。まあ良いじゃろう。どーせその世界のお主のパラメーターに一行書くだけじゃし。」
案外ちょろいなこの神様。
って待て!?
一行書くだけ!?
そんな簡単な話なのか!?
「ほい。良いぞ。次はなんじゃ?」
神様は手を軽く動かしただけなのだが、どうやら能力の追加をしたようである。
「次に、時間を操作する能力をください。」
「時間、とな?またえらく高い要求じゃのう。」
神様は難しい顔をしながら髭をいじり考えている。
このままではダメと言われそうな気がする。
「いや、良く考えてくださいよ?
僕なんの取柄もない15歳の高校生ですよ?
時間くらい操作できないとその世界であっさり死にますって。
ファンタジーな世界に行くわけですし、奴隷商人とか騎士とかと戦えって言われてもこのままじゃ勝てませんよ・・・。
時間止めて動けるならともかく・・・。」
「確かにのう・・・。サービスし過ぎな気もするんじゃが・・・まあ良いとするかのう。
では時間を止めたりスローで動かせるようにしてしんぜよう。
ただし、ワシには影響せんぞ。
して、残りの1つはなんじゃ?」
適当に見えて自分には影響しないという条件はしっかりつけてくる。
「はい。武器です。」
最後の一つ。
それは、僕の命となるものだ。
「武器か・・・。ここまでサービスしたんじゃし、そんな強い武器はやりたくないのう。」
「それ一本でその世界を生き抜かなきゃいけないので絶対に折れない刀がいいです。」
「・・・刀!?最強の攻撃魔法とか銃器ではなく何故刀なんじゃ!?」
これには神様も驚いたようである。
そりゃそうだ。
機関銃ぶっ放せば人類相手なら大抵カタが付く。
異世界で生き抜くための攻撃方法なのだ。
普通は核兵器や戦闘機並の火力を求めるだろう。
でも・・・!
「神様、奴隷解放しようとしてる人が銃とか魔法ぶっ放して人殺しまくってたらですよ?
周りがついて来ると思います?」
ハッ!という顔をする神様。
この人本当になんも考えてねえな。
「ううむ。でもこれまでの能力が強力すぎるのに絶対折れない刀はちょっとのう・・・。」
「ただし、その刀は日本刀で、逆刃にしてください。」
「さかば?なんじゃそれは?」
「日本刀の刃と背を逆にしてください。背に刃がある感じです。」
「べ、別に良いが・・・そんなん武器としては微妙だと思うんじゃが、本当に良いのか?
なんでそんなモンが良いんじゃ?」
神様は本当に驚いているようだ。
あんなに適当な人が僕に確認をしてくるなんて。
「そんなの決まってますよ。だって。」
僕は親指を突き出し、高らかに言ってのけた。
「カッコいいじゃないですか!!!」
「・・・は?」
神様は「何言ってんだこいつ?」という目で僕を見ているが、気にせずまくしたてる。
「まず日本刀がカッコいい!
全ての刀の中でこんなカッコよくて持ち歩きやすいものは他に無い!
鞘もあるし!
何より、刀なのに殺生が目的ではない造り!
人を殺すためではなく、人を活かすための剣!
それが!逆刃刀でござる!!!!」
熱が入りすぎてござる口調になってしまった。
そう、僕は異世界で・・・!
侍デビューを目論んでいる・・・!
「ふはははは!わかったわかった!良いじゃろう。でも良いのか?
日本刀じゃなくても、光の剣とかにして出したい時に出せるとかでも良いんじゃぞ?」
「そんな便利なモンいりません。刀は腰にあるもんです。むしろ心にあるもんです。」
ビームサーベルなんて振り回したら侍ではなく宇宙戦士になってしまう。
「よし、気に入ったから良いぞ!じゃあ、早速旅に出てくれ。
暇な時はチラ見しておるが助け船は出さんぞー。」
神様は笑いながら、指をパチンと鳴らす。
瞬間、僕は森の中に居た。
本当にここは異世界なんだろうか・・・
腰に日本刀があるところを見ると、さっきまでのは夢じゃないらしい。
ということは、まだやり方はわからないが、なんでも治せるし、時間を操作できたりするはずだ。
時間を操作・・・時間を止めることはおろか、時間を戻したりも・・・!
「よっしゃ!いっちょやったりますか!」
意気揚々と、僕は森の中を歩きだした。