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第12話 夜食

夕食に呼ばれ食卓についたが、ルナの姿は無かった。

ナオキからしてみれば、何かが気に障って稽古に必要以上に力が入ったというだけの事にしか見えないのだが、見るからにプライドの高いお嬢様だったし、そんな事ですらも自分を許せないのかもしれない。

そんなわけで伯爵と二人での食事会となったわけである。


「最初に聞きそびれちゃったんですけど、なんで僕を屋敷に泊めて下さるんです?」


宿代が浮いて大変助かるのだが、少し気になっていた。

道中で知り合った商人の紹介があるとは言え、奴隷制度に反対している貴族を頼って来た少年に協力するだけならわかるが、自分の屋敷に住まわせるとは中々大胆だと思うのだ。

もし自分の命を狙う賊だったらどうするのか。


「貴方の噂は十分存じ上げておりますし、何よりヴィール氏の紹介ですからね。」


あのおっちゃん、そんなに信頼度高い人なのか・・・。


ヴィールさんとは、都市に来る途中に寄った大きめの町で知り合った商人のおっちゃんだ。

旅を始めてすぐに路銀に困ったナオキは賞金稼ぎで稼ぐことにしたのだ。

盗賊団と言えども極力殺したくないので、生け捕りにして役所に突き出したい。

しかしそれには輸送手段がいる。

そこで、盗賊団に困っている商人なら馬車を借りれると踏み、商人達に話を持っていく事にしたのである。

商人の皆さんは盗賊には手を焼いていたので快く強力してくれたし、仕事後は大変喜んでくれた。

ヴィールさんは「ボウズ、奴隷制度に反対している貴族に会いに行くんだって?そんなら紹介状書いてやるよ!」と軽いノリで紹介状を書いてくれたのだが、その軽いノリがイマイチ不安要素だったのだ。


「ヴィール氏はああ見えて仕事の腕でしか人を評価しませんから。

そのヴィール氏の紹介なら、間違いはありますまい。」


言われてみれば確かに、あのおっちゃんはそんな感じのタイプな気がする。

今度会ったら改めてお礼を言わなければいけない。


他に色々質問をしようと思ったのだが良い質問が思い浮かばない。

奥さんの姿が見えないことに聞くのは無配慮過ぎる気がする。

一緒に暮らしていなさそうなので何か事情があるか、先立たれているか。

明らかに良い空気にはならなさそうだ。

奴隷制度を無くす相談をしたいけど初日から踏み込みすぎるのもどうなんだろう。

逆に初日からグイグイ行くべきか?

そんな事を考えていると先に話を振られる。


「ところで、うちの娘はどうですかな?」


ざっくり過ぎる質問が飛んできた。

見た目、という意味ではとても美人だ。

プライドが高そうだけど好感度を上げればツンデレ界のお姫様、ツンデレラとしての地位を確立するに違いない。


「先ほどの印象だけですと、誇り高く、自分にも厳しい。

聡明そうなお嬢さんだと思いますよ。」


さすがに思ったままの事を口に出せないので無難な回答にしておいた。


「そうですかそうですか。昔からああなのですよ。

しかし食事をとらないのは少し心配ですな。

良かったらこの後、夜食を部屋まで運んで少し話をしてきて頂いても良いですかな?」


「わかりました。お力になれれば良いのですが・・・。」


若い男を年頃の娘の部屋に向かわせるのはどうなんですかお父さん。

僕が話して解決する自信なんて無いんですが良いですか?


という本音を飲み込み、暗にダメでも許してくださいと匂わせる。

お世話になってる上に事の経緯を考えると断るわけにはいかなかった。







そんなわけで、メイドのマノンさんにサンドイッチとティーセットが乗ったトレイを渡された僕は。

部屋の場所を教えて貰った僕は。

今、女の子の部屋の前に立っている。


女の子の部屋に入る。

それは男の子にとって一大イベントである。


女の子の部屋というものは未知のダンジョンと同義である。

加えて部屋の主はプライド型のお嬢様だ。

この世界に魔王がいるとしたら、もしかしたらその魔王との戦いよりも困難な戦いになるかもしれない。


部屋の前に立っただけで、女の子の甘い匂いがするのだ。

緊張しない方がおかしい。

話す内容なんて整理できていないし、整理できてたとしてもこんな良い匂い嗅いだら緊張で吹き飛んでしまう。

かと言ってずっとここに立っているわけにもいかない。


執事をイメージするんだ!

僕はお嬢様にお食事とお茶をお持ちした執事だ!

自分にそう言い聞かせ、意を決して声を出した。


「ルナさん、お夜食をお持ちしました。」

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