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第10話 無礼者

「お父様!」


「・・・これこれ、ルナ、お客様がいるのにはしたない。」


「これは失礼致しました。娘のルナと申します。」


帰宅してすぐ父の部屋へ飛び込んだのだが、来客中らしい。

無礼を詫び一礼し、客人に目をやると自分と歳の変わらない青年であった。

ニコニコしている様子から、それほど強そうとは思えないのに腰には細い剣が下げられている。

レイピアだろうか?


「初めまして、ナオキと申します。少しの間、この屋敷のお世話になることとなりまして。」


「うむ、都市は初めてとのことでな。当分我が屋敷に滞在して頂き、色々学んで頂くこととなったのだ。」


父はお人良しである。

困った人には手を差し伸べるし、奴隷制度ができた時も一番最初に反対意見を上げる。

今回もいつものお人良しが出て、どこぞの田舎者のお世話をすることにしたのだろう。


「それはそれはお客人、簡単なご案内で宜しければいつでも私か、メイドのマノンにお申し付けください。」


うちには使用人が一人しか居ない。

普通は伯爵家ともなるとメイドが数人はいるものなのだが、父の方針でそうなのだ。

最低限は自分達で出来なければならない、という。

なのでお客人のお世話は私の仕事でもある。


「いやーお世話になりますー。でもそんなにかしこまらないで下さい。

普通で良いです、普通で。

それと1つお願いがありまして。」


「お願い、と申されますと?」


「剣の稽古をしたくてですね。

伯爵様のお話では、ルナ様はなかなかの使い手であるとか。

是非ご指南を頂きたく・・・。」


「わかりました。それでは後ほど、手合わせ致しましょう。」


騎士でも目指しているのだろう。

剣の力をつけたいと願う気持ちは自分にも解るので共感できる。

しかし、妙な話になってしまった。

稽古をつけて欲しいのは自分の方だったはずなのに、何故か見知らぬ青年の稽古をつけることになるとは。


「ところでルナ、先ほどは急いでどうしたのだ?」


「お父様、盗賊狩りの勇者様について何かご存知ないでしょうか?」


「「・・・ぶあっはっはっはっは!!!」」


一瞬、場が静寂に包まれた。

次の瞬間、父と、何故かナオキ殿が大笑いをはじめた。


「し、失敬な!何故笑うのです!」


「いやいやすまんすまん。先ほどナオキ殿ともその噂について話しておってな。

色々知っておるぞ。盗賊狩りの勇者様の話を聞いてどうするのだ?」


「はい!噂を聞き、是非一度剣のご指南を頂けないかと思ったのです!」


言い終わった瞬間、また爆笑する二人。

なんだというのだ。

父だけならまだしも、ナオキまで笑うとは無礼にも程がある。


「そうかそうか。大丈夫、任せておけ。

そのうち稽古をするよう働いてみよう。」


父はまだ笑っている。


「では、先に僕と稽古しましょうか。」


クスクス笑いながらナオキが続く。

純粋に稽古をつけるつもりだったがこうなってはその気も失せた。

この無礼者を徹底的に痛めつけてやろうと心に決めた瞬間であった。

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