8話 魔王の娘?
楽しんでいただけると嬉しいです
「ここはシリウス洞窟なのか?」
「そうなんじゃないかしら。上から落ちてきたし……でも本当なら上に行かないとダメなのかなー。」
「まぁ、どちらにしろここから出ないことには何にも始まらないからな。それにここがシリウス洞窟なら8人の中の一人の能力を得るチャンスだから結果オーライだ。」
「でもそれにしては魔物が居なさすぎない? だって最初追われた魔物をメタスラちゃんが倒してから一体も見てないよ。」首をかしげ疑問そうに口にする美穂。
「そういえば美穂、サーチ使えたよな。」
「…………忘れてた。テヘッ」
美穂が自らの頭を小突き舌を出す。
「置いていっていい?」悟に青筋が浮かぶ。
「ごめんね。悟くんからかうと面白いし、だって同じ部屋で寝たときも私の声に驚いてたし。私、声には自信あるんだ。ほとんどの人の声真似だったら余裕だよ。」美穂は笑いながら自らを指差す。
「あのときか、あのときはビックリしたな。おっさんの声が聞こえて」
「ひどい! 乙女におっさんはひどいよ。」美穂が涙目で訴えてくる。
「はいはい、乙女ね。美穂は可愛いよ。とりあえずサーチしてほしいなー。」適当にあしらおうと悟はするが。
「ダメだよ。人にものを頼むときはもっと丁寧に言わないと。美穂、俺のためにサーチしてほしいです。お願いします。って言わないと」
「ほんとに置いていっていいかな?」悟が笑いながらドスの効いた声を出すと美穂は急いでサーチしだした。
(からかいすぎたかな。反省反省、次はどうからかおうかな)美穂は反省してから1秒後にはどうからかおうか模索していた。
「これは!」
「何か分かったのか」
「うん、とりあえず敵は近くには居ないみたい。分かったことなんだけど、ここは上から500メートルは地下の場所みたい。ルシファーが転移させてくれなかったら死んでたわね。それと、多分この洞窟……建物の構造からして上に進むより地下にいく方が正解だと思う。」
「建物? 俺らがいるのは洞窟じゃないのか?」悟が回りを見渡すが回りは苔や岩肌が見え、ただの洞窟にしか見えない。
「口で説明するのはむずかしいなー。んー、あの入り口があったピラミッドは建物の上層階だったの。下層までは隠し扉を通じて迷路のようになっているわ。しかも隠し扉だけ魔法感知不可能になってる。私は範囲拡大して全域サーチしてるから大丈夫だけど、他のみんなは気づけないと思う。」
「なるほどな、だけど上のピラミッドの事を考えると相当大きな建物だな。能力を得るには時間が掛かりそうだ。」
「いや、そうでもないみたい。」美穂が何もない建物の行き止まりを指差す。
「ん? 何もないけど?」
悟は首をかしげ美穂に聞くが
「え? ほんとに?」
美穂が何もない空間をまるで何かあるかのようにさわっている。
「ほら、悟くんも来て。触ってみたら分かるよ」
「これは、……ただの透明な石じゃないのか?」
「透明な石なんてあるわけないでしょ。この石から魔法が確認できるし多分、意図して石に透明の魔法をかけたのよ。多分、下に何かあると思う。」
「でも動かないぞ。」悟と美穂が押しても石はびくともしなかった。
「メタスラちゃんに頼むのは?」
「手がないから押せないよ」
「じゃあ、錬成してみるのは?」
「あ! その手があった。」悟が石に手をおく。
「錬成!………………なにも起きないな。どうなっていっ!」悟が話終える前に洞窟内部が揺れ動き透明の石が少しずつ動き出した。
揺れが収まる頃には石は隅に移動しており、その下にあった階段が露になっていた。
「いったいどうなっているんだ?」
「わからないわ。一応サーチしたけど魔物の反応はなし。中は檻みたいになっていて人が1人いるだけみたい。」
「人がいるのか!?」
「生きてるけど死にかけてる。すぐ助けないと死んじゃうくらい衰弱してる。」
悟と美穂はその人物を助けようと急いで階段を降りる。
階段を降りると檻があり、その中に1人の角が生えた少女が壁にもたれ掛かっていた。
「大丈夫? 今、助けるからね。悟くん、少し退いといて。」美穂が斬撃系の魔法を唱え鋼鉄でできた檻の棒を切り人が行き来できるくらいの幅を作ると急いで少女へ駆け寄った。
「何年待ったことか。ようやく我を殺しに来たのか。そうか、我は生の苦しみから解放されるのだな」少女はなにやらぶつぶつと呟く。
「なに言ってるの? 殺しに来たんじゃなくて助けに来たのよ。」
「そうかじゃあ早速殺してく…………、は? 助けに来た? どういうことだ? 貴様は勇者ではないのか?」
「勇者ではないわ。それより、私は貴様じゃなくて、椎名 美穂。気軽に美穂って呼んでね。」
「そうか。じゃあ何しにこんなところまで来た。父上がいたはずだが……まさか、倒してここまで来たのか貴様!」
「だから、貴様じゃなくて美穂! 椎名 美穂! それに、父上ってだれよ。そんな人どこにもいなかったわよ。」
「父上を知らぬのか美穂とやら。父上は魔王ベルゼブルじゃ。かの偉大な魔王を知らぬとは愚かな人間もいたようじゃな。」
「………………」
「恐ろしくて声も出んか。ふっ、まぁいい、とりあえず我を助けろ。そして我と共に神を打ち倒そうではないか。我の名はアスタロトじゃ、よく覚えておくようにな。」
「……よし、美穂! こいつめんどくさそうな奴だから置いて帰るぞ。」
「そうね、こんな言葉もなってない子を助けることないものね。人にものを頼むときはもっとていねいに言わないと。」
「何ぶつぶつと言うておるのじゃ。はよう我を助けよ。 それに神を倒すかどうかも聞いておらぬしな。」
「…………」「…………」悟と美穂が無言でアスタロトから離れていく。
「わかったから、助けてくれ!」
「わかったから? 助けてくれ? もっとていねいに言わないと助けてあげないわ。」美穂が嗜虐的な笑みを浮かべ少女を見る。
「わ、分かりました。た、助けてください。お、お願いします。ど、どうか、た、助けてください。」プライドを投げ捨て、助けを求める魔王の娘に悟は……
「誰が助けるか、バーーカ」
「なっ、誰がバカじゃ。」
「お前しかいないだろここには、大体何でこんなところに魔王の娘がいるんだよ。」悟は最初から疑問に思っていたことをアスタロトに聞いてみた。
「何で?と聞かれても答えようがないのじゃ。そもそも記憶が抜け落ちておるし、わらわの父上のことと、自分の名前がアスタロトであること、それと神を撃たねばならない理由のことしか覚えておらぬ」
「記憶喪失ってやつなのか?」
「そうじゃないかな。原因はわからないけどね」
「とりあえず、わらわは神を撃たねばならない」
「その神を撃たねばならない理由を聞いてもいいか?」
「なぜ聞くのじゃ?」
「「神を撃たねばならない理由が俺(私)にも有るから」」
「それによっては俺達と共に行動して神を倒したいと思っている。
「なるほどの。じゃあ話すとするか。ちと長くなるから少し省略して話すぞ。」
「あぁ、頼む。」
「それは、世界の終末の日のときだった……」
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3月5日の日におおはば改稿いたしました