5話 夢の続き…… そして少年は望む 後編
少し遅くなりました。すいません。
楽しんでいただけると嬉しいです。
5話 夢の続き…… そして少年は望む 後編
「何があったの?」
悟は優しく少女に問いかけた。
少女曰く、一時間ぐらい前に母親から隠し扉の中の部屋に隠れるように言われた。
隠し部屋の中は本や資料などが一杯あり今夜、母親に言われるまで存在すら知らなかったという。
それから、物音が聞こえしばらくして聞こえなくなってから部屋から出てきたら母親が倒れていた。
悟は少女の母親へ黙祷をすると、少女に隠し部屋へ案内してくれと言った。
少し冷たいようだが、悟は二日の間で両親が死んでしまった少女にどう声をかけ慰めるかもわからなかったし、現状打開するためにはその隠し部屋にある本や資料などだけが頼りだった。
部屋にはいると中には、きれいに整頓された本や纏められた資料などがあった。
「やぁ、久しぶりだなー、あの神崎さんたちと椎名さんたちよりも強い純真な思いを抱えてるものに会うなんて♪
僕はケノン。闇精霊であり、虚無を司る精霊でもあるよ。まぁ、いまはルシファー様に仕えてる身だけどね♪」
突然だったので悟は驚いて声もでなかった。
それも、なにもなかったはずのところからいきなり少女が現れたのだから少女に至っては尻餅をついている。
ケノンと名乗る精霊は少女の容姿をしており、腰まで延びている黒髪が特徴的で、まっすぐこちらを見る瞳はその名の通り虚無、黒く怪しい瞳がこちらを射ぬくように見ている。
「あれ? おかしいなーどうしたのー。おーい? あ! そうか、こんな美少女に会っちゃったから見惚れて声もでないか。うんうんわかるよ。私可愛いしね。」
そんなケノンと名乗る少女に少しムカついた悟は頭をぶっ叩いた。
「な、何で叩いたのよ。誰にも殴られたことないのに! ルシファー様に言いつけるわよ!」少女が涙目でこちらを睨んでくる。
「だってイラッてきたし」
そんな少女の視線をさらっと受け流し、悟はいつの間にかケノンの後ろに立っていた男へと目を向けた。
「言いつけるとかの前に目の前でしてたからな。というか今のはケノンが悪い。自分で美少女って言うか普通、少しは謙遜しろ。」
男はスーツ姿のサラリーマンの格好をしていて顔は誰が見ても格好いいと褒め称えるほどの美形だ。
「わ、分かりました。ルシファー様に免じて許して上げます。」ケノンはよほど痛かったのか頭をさすりながら言ってきた。
「僕はルシファー、君たちの世界では堕天使として認識されていると思うけど、これでも普通の天使だから。これから宜しくね。
それとケノンがすまないね。久しぶりに椎名さんたち、神崎さんたち以外に会ったから少し意地悪したくなっただけだと思う。
でこちらにどんな用だい? 神崎さんたちには口止めしてあったはずだったけど、もしかして緊急事態かな。
しかもこんな子供なんてよほど焦っていたのかな?」
男は困惑するような仕草をみせながらこちらを品定めするような目を向けてきた。
「お前は、僕と少女の両親とどういう関係だ。それと本当にケノンは精霊なのか? 本当にあの堕天使ルシファーなのか? その三つを答えろ。」
「ふふ、ずいぶん高圧的だね。まぁいいけど、とりあえず僕らのことだけどケノン、魔法使ってよ。魔法の種類は火属性のファイアーで明かりを灯すぐらいでいいよ。」
「うん。分かった。」
ケノンが手を前に出し人差し指だけを上に向けると指先に火が出た。
「さて次に僕の方だけど、ん? おーい? きこえてるかい?」
「すまない、魔法を実際にこの目で見るとは思ってなくて見惚れてしまった」悟はぼーっと見惚れていた自分にムチをうち、話を聞くことにした。
「じゃあ僕は、羽を見せれば納得してくれるかな」
ルシファーは笑顔のまま僕にそう言うと突然背中から右から白く美しい羽と左から黒く怪しくも美しい羽を生やして見せた。
「これで納得してくれたかな? スーツがどうなっているかは企業秘密だよ!」
そう笑顔で言うルシファーに悟は……
「あほか! 何で片翼黒いんだよ。偽物じゃねーのか? それか魔法があるくらいだから幻術か?」
「いや違うから本物だから
痛っ! 痛いって引っ張らないで!」
「ルシファー様になんてことをするんですか。」
……………………
「羨ましい!私にもさせてください!」
「……ケノン? いや、Sかなーとは思ってたけどまさかそこまで重症だったなんて!」
ルシファーと悟はケノンにドン引きしていた。
「え? だって自分より立場が上の人を罵ったり従わせたりぼこぼこにしたりできるんですよ。快感じゃないですか!」
「「……」」
ケノンのSっ気の重症度合いに二人はささっと2メートルほど距離を取った。
変態は素直に放置に限る。
「さて、次は君たちの両親とどういう関係かだよね。何しろ「何で距離を取ってるのよ」結構長い話になりそうだから端的に言うよ。「なに無視してるのよ。泣くわよ。」実は君たちの「だからーーなーーんーーでーーむーーしーーしーてーーるーーのー?」両親とはある計画の協力関係にあったんだ。」
「だから無視しなっ…… 痛い。また叩いた! 絶対後で後悔させてやる。」悟が話の間にも関わらずちょっかいをかけてくるケノンにしびれを切らしおもいっきり頭を叩いた。
「へぇー、具体的には?」
「え……た、例えば……、わ、私の魅力でパシリのごとく使うとか……」
「その魅力っていうのにこれっぽっちも興味ないんだけど……」悟の一言によりケノンは「え?…………そ、そうよね。お子様にはまだ早いわよね。」と強がるが……
「いやケノンも十分お子様だろ。見た目中学生で、精神年齢幼稚園児って、ふっ、笑える。」この一言によってケノンはノックアウトした。
「まぁその辺にしてあげてケノンも黙りこけちゃったし、それに話の続きがね。」
「まぁSは打たれ弱いからな。なんだっけ? そうそうケノンが幼稚園児からやり直したほうがいいんじゃないかって話だったな続きどうぞ」
「悟くん?そんなこと言ってたら話さないよ?」
「分かったから、悪かったよ。話の続き頼む。」
「まぁ、計画の内容を説明するために色々話が飛ぶけどごめんね。」
「いいよ。続けて」
「悟くん妙に落ち着いてるよね。まぁ、その方がいいけど。
この世界が作られた理由から説明するね。」
「おい! なぜそんなことが関係するんだ? 両親とルシファーの関係を知りたいだけなんだが」
「それが関係あるんだなー、まぁ聞いてよ。世界が作られた理由は神の遊戯のためだ。神っていっても沢山いてね、願いの数だけこの世に存在するし、その大きさによって序列が決まってるんだ。で、当時序列が上位の神達がもっと面白くするため新たな世界を構築したんだよ。その世界がここだよ。
で、神の娯楽のために神が人を操り、世界操り面白くしているんだよ。まさに人形劇だね。それに人が気づくのは不可能だ。
なぜなら体を乗っ取ったり、本人も気づかない程度で精神操作してる。だから気づかないし気づけない。
でも世界にまれに神でも予測できない事態が発生することがあるんだ。それが人に関することかもしれないし環境が変わることかもしれない今回は人の方でその人が椎名さんたちと神崎さんたちというわけ。
椎名さんたちと神崎さんたちはある能力を持ってたんだ。異世界の人でもない限り持てないはずの能力をね。
しかもそれが僕らが探していた神殺しの能力だったんだよ。それから僕らが行動するのは早かった。早速接触して僕らのことを知ってもらえたその日のうちにこの事を話してこちらの世界から切り崩そうと協力を求めた。答えはイエスだったよ。前から今の神に反感を持っていた神たちもいたしね。
上位神の遊びに反対な神や天使、精霊、妖精たちは試しに異世界に能力のない複数の人間を神の住む異世界に過去8人転移させたんだ。
そのときは、その人たちも神に操作されて失敗したんだ。
今度は、その神が、こちらの世界から直接人間を転移させるそうなんだ。だからそれに巻き込まれる予定の人とその人の身近な人と接触したかったんだよ。もちろん協力を得るためにね。その巻き込まれる予定の人が君たちで、実際に接触したのは身近な人の両親の方だったってわけ。
両親としてはやっぱり君たちを命に変えても守りたかったんだよ。どちらにしろ転移する人は決まってるし変わらないなら僕たちと協力して変えようとしたんだ君の両親は、けど両親の方は神に気づかれたみたいだね。
すまない僕らが不甲斐ないばかりに。
それと改めて協力を求めたい。君と僕らで協力して今の神を倒してくれないか。」
「面白そうだな、協力してやるよ。
でも、転移してから元の世界には帰れるのか? 友達もこの世界にはいるからな。」
「ずいぶん協力的だね。元の世界に帰れるのかどうかは僕らにはわからない。神に直接聞けばわかるかもしれないね。」
「そうか。神を倒すついでに聞いたらいいか。」
「まぁ、異世界も楽しいところだから」
「そうだといいな。」
「とりあえず今までの記憶を全て封印させてもらうよ。
神に見られたりしたら堪らないからね。封印するのは僕らに関することと自分たちの事だよ。今まで学んだことはそのままにね。じゃないと神に両親のことがバレてるのに君たちも危険になるかも知れないし。
でも異世界に転移してからしばらくして僕らと会った後に記憶を戻すから。」
「まぁ、それは仕方ないことだな。それと、この少女も転移する予定なのか?」
「そうだよ。彼女には悪いけど変わらない運命なら変えれる力を与えて君と共に行動してもらう。」
「そうか……じゃあ始めてくれ……」
「分かったよ」
悟と少女の体が光に包まれていく。しばらくして光が発散した後には、ルシファーとケノンの姿はなくただ記憶を失った悟と少女がいただけだった。
……
…………
………………
「まだ生きてるみたいだな」悟と椎名は真っ白な場所にいた。
「ようやくお目覚めかな?」
「遅い、ルシファーもう少し早く来てもいいんじゃないのか」
「手厳しいね。助けてあげたんだからそれくらい許してよ。」ルシファーは苦笑いしながら答えた。
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