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戦記0「戦記へ続くプロローグ」

 久々に小説投稿することにしました。おおまかな設定や話の流れは作ってあるので、読んでくれる人がいる間は、ちまちまと続けられたらーなと。

 逆にいなくなるか気力が尽きたら、主人公に死んでもらうとか、さぁいこう僕たちの戦いはこれからだ的な終わりにすればいいかなとも思う今日この頃です。

戦記0「戦記へ続くプロローグ」


 状況にあわないことを考えていた。

 年の終わり、アッチの世界でやる『今年を一文字で表すなら?』ってやつ。

 ところどころランプが点在する以外は明かりの無い世界で、比喩的な言い方をすれば、文字が浮かぶ。 

 すぐ隣を走る男子には『焦』。

 横から出くわした刃物に切られた女子は『死』。

 『危』『剣』『暴』『犯』『戦』『傷』『殺』『殺』『殺』。

 文字が浮かぶ、文字が浮かぶ、不穏で不安な文字が浮く。

 迷路のような洞窟に、

 元は炭鉱か何かと思わしき洞窟に、

 文字が浮かび、命が沈む。

 悲鳴が湧いた、ランプが揺れる、影が重なる、土になる。


(―フハハハハ)


 顔で焦って、心で笑う。

 なんで笑うのかは、よくわからん。

 隣の『焦』が『叫』になって『死』になった。

 そこそこ仲の良かったクラスメイトだったが、夢や愛について語り合うこともなかった相手なせいか、追悼よりも自分の生存を望む方が勝った。

 クラスメイトに『死』を浮かべた男がオレに剣を振るよりも先に、クラスメイト(死)を盾に突撃。

 まさか獲物が…こいつらの視点からいえば『異世界』からやってきた学生が反撃するなども思ってなかったのか、それは見事に成功。クラスメイト(死)と戯れている間に脱兎のごとく路地を駆ける。

 できれば剣の一振りでも欲しかったのだが…揃いの姿からして、訓練された兵士なのだろう…前など見えないはずなのに、適当なようなそうでないような剣筋からして、お気楽日本の高校生が剣を奪えるとは思えなかった。

 いや、まぁ無理をすれば取れかもしれないが、剣と腕を交換じゃ割に合わない。

 なにせ、何が起きるなんてわからない世界だ。

 そう、ここは異世界なのだ。


(―ハハハ、異世界異世界、異世界ですってよコンニチワ)


 一学年、約二百名のうち、今も生きているのはどれほどだろうか?

 荒野の先を目指すのが正解だったか、

 その場でうずくまるのが正解だったか、

 いやいや、まだここが不正解とは決まっていない。

 小一時間ほど前、何の前触れもなく荒野に放り出され、身を守る場所として洞窟に移動した。


 そして、襲撃。


 観察し、想像していた『異世界?』が『異世界!』に代わっていく。

 実感してくる、

 憶測が現実に代わる、

 見たことのない道具、

 見たことのない生き物、

 見たことのない名状しがたい何かのようなもの、


 そして、高校生。


 それらをおいて、ひた走る。

 異世界に放り出されすぐにしてはハードスケジュールだ。助けてくれる勇者的な何かも神様的な何かも現れやしない。現れたのは、兵士と思わしき人間達。不思議と言葉だけは理解できる兵士達の中から、彼女はいった。


『蹂躙せよ』


 なんとカッコイイ響きだったろうか。

 なんの迷いも戸惑いもなく、隊を率いる長か何かであろう女兵士はそういった。

 当たり前のように、奪って満ちろと、そういった。

 女性が。

 あんなにキレイな女性が。

 白髪をたなびかせ長剣を手に先陣を駆け、クラスで何番目かに人気だとかいう女子を一振りで切り捨てた。

 アッチの世界だったら、白い子犬を抱いてピアノを少々とか言いそうな女性が、こともなげに美少女ややを殺した。


(―異世界だ、異世界だ、さすが異世界だ!)


 そう、異世界はこうじゃなくちゃいけない。

 当たり前のように蹴散らされて、

 当たり前のように奪われて、

 当たり前のように無慈悲で、

 当たり前のように今までが通じなくて、

 クラスで、オレなんかより頭のいい奴も死んで、運動神経がいい奴も死んで、いい子も不良も普通も、顔がいい奴も楽器が引ける奴も料理がうまい奴もとにかくありとあらゆる男子も女子もあっさり死ぬようなところで、だからこそ、当たり前のように巡り合わせがやってくる。


 それが異世界ってもんだろう?


「とまれぇ、小僧!!」


 怒号、とでもいうのだろうか…

 学校の教師なんかでは太刀打ちできない、芯の通った声がオレの足を止めた。

 声が飛んできたのは、前から。

 飛ばしたのは、オレよりも頭二つ分以上はでかいおっさん。腕も足も丸太か、といいたくなるほど肉厚な上、血管が浮き出るは、装備がさっきまでの兵士とは一線を画すは、と威圧感がすさまじい。やや禿げかかった頭髪も個人的には魅力的だ。後の初めて捧げたいとは毛ほども思わないが、格ゲーのプレイヤーキャラになら選んでしまうかもしれないほどには雄々しい。大剣もって嬉しそうにオレを睨んでなければね?


「ここまで逃げてきたのは、お前が初めてだ」


 オヤジのすぐ向こうから、ゆるい光…おそらくは月や星の明かりがさしこんでいる。

 出口はここ以外にもいくつかあった。出口があるはずの通路から兵士が切りかかってきたので、そのいくつかのうちから、一番遠い出口を選んだわけだけど…突撃かけられたときには全部塞がれていたのかもしれない。しかもこのおっさん、普通の兵士は元より、女兵士よりも立場上じゃなかろうか?

 隊長より立場が上?

 将軍とかってこと?

 そんなおっさんが1人、出口で待ち構えてる?

 外からは学生の声も兵士の声も聞こえない…本気で1人?

 あなたどんなレベルのオッサンですか?


「一等賞の祝いに、俺と戦ってみるか、逃げてみるかの選択肢をやろう。選べ」


 じりっと、足が下がる…

 悩ましい選択肢だ。できれば決断まで三日ほど頂けるとありがたい。

 もしかしたらその間にたまたま現れた正義の味方とかが


「三!」


 考える時間もくれない!

 どうせ、その『三!』も、三日の三ではないんだろ―


「二!」


 ほらね? だと思った。いいよもう、どうせ、魔王からは逃げられない、な状態なんだろうし。


「…まだ、一秒ほど悩む時間はあったが?」

「一秒悩む時間があるなら、その一秒分準備したほうがよいかと思って」

「なるほど、理に適っておる」


 おっさんはニタニタと笑いながら俺が準備するのを…そこらへんに落ちてた蓋なんだか扉なんだかよくわからない木材を拾うのを待ってくれた。たぶん、三秒はゆうに過ぎてた。心づくしに涙が出そうである。


「しかしいかんなぁ…そんな木材で俺の大剣が防げると思ってるのがいかんなぁ」

「しかしいかんなぁ、その大剣防ぐために木材拾ったと思ってるのがいかんなぁ」


 どうせ死ぬなら、目上への礼儀もくそもなかろうと思ってついた悪態は、殊の外おっさんの琴線にふれたらしい。こみ上げる感動をゲハハハハと笑いに変換する時間をありがたく頂戴し、頭の中で行動をシュミレーションする。

 さて、ここに至るまでに用意できた手札でなんとかなるもんか…


「国宝、竜一文字」


 オッサン、笑顔のお礼か、デモンストレーションとばかりに手近な岩に大剣を―竜一文字とやらを振り下ろす。

 岩、真っ二つ。

 オッサン、悠然。

 オレ、唖然。

 オーディエンスは超騒然。

 いないけど。


「さて…準備はよいか? 何か言い残したいことでもあるか?」

「できれば…」

「ん?」

「異世界にきて最初に会話するのは、美少女がよかった…」


 ほんと…なんで、おっさんなんだろう…こう、もっとこうさ…異世界ファンタジーっていったら、美少女とぶつかってとか、お姫様に召喚されてとか、女神さまに導かれてとかこう、さ…せめてさっきの女兵士さんでもよかったのに、悪漢から救ってもらうどころか命狙われるっていうね、狙うなら違う意味でハート狙ってくれれば嬉しいのに…


「…すまんな、初めてを貰ってしまって」

「せめてこの世界に美少女なんかいなければ諦めもつくのに…」

「残念ながらおるな」

「そうね、おるよね…」

「おお、それもわんさと」

「わんさとって…マジで?」

「金髪から褐色から、色白からボインもナイチチも、わっさわっさとおるぞ」

「わっさわっさとおるのに…わっさわっさとおるのに、なんでオッサンなんだよぉ!」


 それは、心の叫びだ。

 そして、行動の始まりだ。

 金髪美少女に会うための、もとい生き抜くための生存戦略だ。


(―なお、黒髪色白少女も好きな模様)


 木材の裏に隠すようにもっていた『鉄の塊』をオッサンにぶん投げる。


「ぬっ」


 が、当たらない。『どこから取り出した!?』程度には慌ててるようだが、剣の腹で受け止め、それだけだ。だから、次を出す。

 次段、再度『鉄の塊』。効果、当たると痛い。

 なお、自慢ではないが、当方ドッチボールでは最後まで残っていたタイプである。主にボールから逃げることで。

 しかしオッサンの大剣は鉄の塊を撃ち落とした…というよりは切り落とした。

 切り落としたおっさんに再度『鉄の塊』を投げ―た瞬間切り落とされた。


(―もうこれ、完全に見切られてるじゃないですかぁぁぁぁ!)


 と分かっていても、他にやれることもないのだから、次段『ガラスビン』を投げつけ、オッサンこれを刀で真っ二つにし―なぁぁぁぁぁい!!

 あろうことかオヤジ、巨体に見合わぬ速度でかわしやがった。地面にぶつかり割れるビン。そこから漏れるのは、ランタンからとっておいた油。


「やはりな。で、次は火種か?」


 油からも俺からも距離を取るオヤジ。しかたなく俺は火をつけたばかりの松明もどきを地面に放り投げた。おまけに、持ってた木材も投げ捨てる…ふりしてオヤジにぶん投げたが、オヤジの剣に切り裂かれるだけだった。

 なんだよこのオッサン、普通、油は被るだろう。そして炎にまみれるぐらいまではなるのが礼儀ってもんだろう。オレがそうなれよと言われれば無論全力で断るが。


「異世界の…それも来たばかりの小僧にしてはなかなか面白かったが…終わりか?」


 ニタリと笑うオヤジ。

 たらりと後ずさるオレ。

 思い浮かぶのは、楽しかったというほどでもないアッチの世界のあれやこれやで、そういえば彼女ができそうだったりなかったりとかそういったいわゆる走馬燈的な―


「いかんなぁ…そういう細かい演技はいかん。まだあるんだろう、奥の手が?」


 あぁ、そうですか、ばれてましたか。

 溜息しかでやしない…強いうえに聡いとか、どないせーと?


「どうも、何かを呼び出すか、生む力を持ってるようだが…次は何を出す気だ?」


 奥の手もばれてるじゃねーですか。

 そうですよ、そのような力で木材の裏から諸々取り出して投げてたのですよ。


「あー、もしかして特殊能力? みたいなのってこの世界にいっぱいあるの?」

「多くはないが、ちらほらおる」

「ちなみにオッサンは?」

「わしにはない。が、能力持ちを殺したことは数度ある」


 はっは、笑うしかねー。俺のアドバンテージほぼなしじゃん。


「お前が何を取り出すつもりかわからんが、この竜一文字で切れぬものを出せるとは思えぬ…万策尽きたか?」

「そうね、ちょっと悩んでる」


 異世界にきて早々不思議な力に気が付いて、スタートダッシュは万全とか思ってた数時間前のオレをぶん殴ってやり直したいほどに。


「その能力があれば、この世界で無双できるとでも思うておったか?」

「さすがにそこまでは…せいぜい、少しおいしい思いができるといいなぐらい」

「例えば?」

「きれいなお嫁さんに、頼れる仲間、あと少々の宝物とか?」


 半分冗談、半分本気…異世界っていったら、そういうもんだろう?

 しかし、オッサンはちょっと違ったらしい。


「…三妃、七竜、一三宝。三つの柱を揃えし王は、この世で誠の王となる」


 なんといえばいいんだろう…ブランデーを傾けながら、口慣れた歌を漏らすような…いい大人が母親から聞かされた子守唄や御まじないを繰り返したような…オレには到底はけないような、不思議な音がオッサンから漏れた。


「すなわち、三人の嫁と、七人の将軍、一三の秘宝、揃えた王が最強である。この世界の言い伝えのようなものだが…なしえた者は、まだ1人としていないという」


 王と姫と竜と宝。

 世界のためでもなく、

 選ばれたわけでもなく、

 自分の為に揃える、まだ誰も辿りついていない者。

 それは、とっても異世界だ。

 少なくとも、オレにとっては。


「…いいな、それ」

「であろう?」

「うん、冒険者も捨てがたいと思ってたんだけど…それ聞いちゃったらなぁ」


 もし、このオッサンに会わなかったり、

 会ったとしても、別のセリフを聞いていたら、違う道にいっただろう。

 でも、オヤジとは出会い、言葉と出会い、道は決まった。

 ゲハハハと笑う男に、声こそなくとも笑うオレ。

 そして、呼び出す。

 剣を。

 そして構える。


「お前も、目指すか?」

「そうしてみようと思う」

「そうか、なら」

「ん、とりあえず…」


「ここから生き延びる!」×「ここから生き延びろ!」


 それは後に―


 キョウ王として戦記に名を刻んだ男と


 ユウ王として戦記に名を刻む少年の


 『ユウ王戦記』として歴史に残った物語の


 それは、始まりのできごとだった。





 というわけで、プロローグでした。

 オッサンとの会話ばかりで、美女(美少女)との会話がないという、異世界ファンタジーにあるまじき事態に我がことながら不安。

 異世界ファンタジーらしく主人公が何かしらの能力に目覚めてるくせに、いいようにやられてるあたりも不安。

 200人のクラスメイトもモブばかりで不安だし、これ投稿する前にキーボードが壊れて仕方なしにUSBキーボード買って打たないといけなくなった結果、デリートキーがあった位置にプリントスクリーン配置されてて、デリート連打のつもりがスクショ撮りまくりで不安。

 そしてアトガキの半分くらいか本編と関係ない話題で不安。

 最後になりましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。

 まだ続くんじゃよ。



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