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鋼鉄探偵  作者: フォボス
9/9

case1-8

総合スーパーマーケット『スパマック』。

買い物フロアーは三階、駐車場完備で、食品や日用品はもちろん、家電や自転車、ゲームまで取り扱い全国展開するスパマックグループの一店舗。

建設されてから十年は立つが、近隣の商店街との折り合いは悪く、泥沼の価格競争を続けている。


主に家電や、ゲーム、おもちゃなどを取り扱う2階。

フロアーに設けられたトイレの一室で一人の男が戦慄していた。

会社から飛びだした、隅端居蔵であった。

何者かの声を、自分のあらぬとこから聞いた隅端は息絶え絶えになりながら、このスーパーのトイレに駆け込んだのであった。



『どうしたぁ・・・?相棒。

 そんなに驚く事はねぇだろうに。』



数人の少年の声が混じり合ったような声が自分の股間から、また聞こえた。

隅端はおそるおそるチャックを下ろし、自分のそれを確認しようとし、仰天した。

下腹部から太ももにかけて、皮膚をくすんだ緑の鱗のようなものがビッシリと生えていたのだ。

そして、自身の粗末なイチモツもその鱗に覆われていた。


これは幻覚だ。

変な悪夢を見て、上司にどやされ、幻聴を聞き、更に今幻覚を見ているのだ。

そんな思いが頭の中をかけめぐった。



『いーや、残念ながら現実だよ。』



イチモツからまた声がする。

そして、緑色のそれは先端から肉食獣が口を開くように、中ほどまで裂けた。

二分されたソレはパクパクと開いたり閉じたりしながら喋り始めた。



『昨日から今日まで、あんたが見たことは全部現実だ。

 俺はあんたが“最高の快楽”を得られるようにサポートするパートナーだ。

 昨日の話、まさか忘れたわけじゃねぇよなぁ?』



自分の男性器が嬉々として自分に話しかけている。

今にも失神しそうな状況で、隅端は必死に頭を働かした。

これからどうすればいいのか。

まず病院か?いや、やっぱり死のう、目の前のコレと話すか?冗談だろ。



『ひっひっひ。

 混乱してるね、相棒。

 俺はあんたのパートナーだからさ、あんたの思ってる事は全部わかるんだ。

 死のうったって無理だぜ?』



隅端はパクパクと動きながら、饒舌に喋るソレを無視して自分の鞄からボールペンを取りだした。

ここまでいかれてしまった自分に生きる資格などない。

昨日とは打って変わって、自分の人生の後悔や残された家族への懺悔など考える余地もなく、自分の喉元に突き刺した。

しかし、柔らかい皮膚をつきやぶり血しぶきを上げるはずだったそれは粉々に砕け散り、血の代わりに大量のインクをまき散らした。



隅端

「うわああああああああ・・・・!」



誰もいないトイレの個室で隅端が半狂乱になった。

目の前の洋式の大便器を拳で打ちつけると、今度はそれがバキンと音を立てて砕けた。

「ッヒ」と短く声を上げて、その力におののく。

目の前で起こっている非現実的な現象全てに動転していた。



『今はこんなもんだ。

 本題はここからだよ相棒。』



次の瞬間、太ももまで生えていた鱗のようなものが、一気に爪先まで展開し、隅端の足全体が巨大な爬虫類のように姿を変えた。

そして、短くみすぼらしかった男性器もメキメキと隆起し、縦にも横にも膨張し、ワニの頭のような形態に変貌し、

先程までパクパクと開いていた裂け目からは牙が無数に生えている。

その時だった。

トイレの、個室の外の外。

男性用便所と女性用便所の境目あたりから声がした。



「ままー!トイレに行ってくるねー!」



声から想像するに、幼稚園児かそれくらいの女の子の大きな声であった。



『ナァーイスタイミング・・・!』



放心状態の隅端の意思とは関係なく、いきなり下半身がズボンやパンツを引き裂いて動きだし、大便器の個室をつきやぶった。

さきほどまで男性器だったそれは、ガバっと口を開け、牙だらけの口からピンク色の触手のようなものを凄まじいスピードで男性便所の外へ伸ばした。

ギュンとの伸びたそれは、女性用便所へかけこもうとする少女を絡め取り、男性用便所へ引きずりこんだ。

そして、怪物と化した隅端の下半身は、少女を地面に叩きつけた。

一瞬の出来事と目の前の怪物に凍りつく少女。

隅端は目の前の状況に我に返り、必死で下半身を制そうとしたが、全く自由がきかなかった。



隅端

「まさか・・・やめろ。やめろ!」



隅端の意思に反して、下半身は更に巨大化し、悲鳴をあげようとする少女の全身をバクンとはさみこんだ。

白く清潔感のある、トイレが一瞬にして鮮血に染まった。

隅端の下半身は獲物を咀嚼するように動き、ゴクンと音をたてた。


隅端が自分の一部である何かが起こした惨劇に絶叫をあげようとした瞬間、隅端の全身に何かが走った。

初めは電流のように、そして間をあけて大きな波がおしよせるようにゆっくりと強く、爪先から脳まで。

自分が体感したことのないような肉体的な快感。

圧倒的快感が五臓六腑、全身に染み渡り、体の自由を奪った。



「ミーちゃん!ミーちゃぁん!まだぁ?」



トイレの外から、少女の母親らしき声が聞こえる。



『さて、とりあえず説明は後だ。

 ずらかろうか相棒。』



この町全体を揺るがず、おぞましくも悲しい事件の火蓋が切って落とされた。

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