case1-4
鋼叶夢は登校の途を急いでいた。
昨日、叔父を怒鳴りつけ、事務所のすぐ近くに位置する、父の用意したアパートに帰ったはいいものの、
事務所の掃除や、叔父である努の使い走りにされたことで、家に帰ってから自らの家事に追われ寝付いたのは深夜であった。
結果、普段起きる時間を大いに寝過ごし、支度に追われ、
学校までダッシュで向かったが、もはや授業開始時間まで秒読みの状態であったからだ。
叶夢
「あのおっさんのせいだし!ムキー!」
一人怒りの声を挙げ、走るスピードを上げる。
学校まであと100mといったところで、風が後ろから吹きぬけていく。
急ぐ叶夢のスカートを舞い上げ、風は叶夢の前に現れた。
風の正体は自転車にまたがった女子高生であった。
「カナー!おさき!」
叶夢の同級生であり、叶夢が転校してから最初に友人となった加納美先という生徒である。
高校生にしては、厚めの化粧に、褐色の肌、茶色に染まった髪。
今時のませた高校生といった感じの見た目で、叶夢とは正反対の見てくれであった。
叶夢は、美先に捲られたスカートを赤面しながら、あわてて直し、自転車でさっそうと校門に滑り込む美先を追った。
叶夢
「ちょっとー!」
美先
「あはは、つかまえてみー!?」
始業の合図のチャイムと同時に、二人は校内へと入っていった。