寝言
夢を見てから一ヶ月ほど経った。あれ以来夢を見ていない。もしかしてあいつの言っていた小さな変化ってこのことだったのか。前は夢を見ることに恐怖を覚えていたが、今はちょっと物寂しさを覚えている。どうかしちまったのかな、俺。
「ん、ロイさん。どうかしたんですか?」
「いや、なんでもないぞ」
「でもなんか、寂しそうな表情してましたよ」
やれやれ、リンは誤魔化せないみたいだな。
「まあ、いろいろと考え事をしているんだよ」
適当に答え、外に目を向ける。今日もいい天気だ。絶好のお出かけ日和じゃないか。外に行く気なんかこれっぽっちもないけどな。
今家には俺とリン以外誰もいない。買い物だそうだ。なんかデジャヴを感じるが別に問題無い。あの時のリンと今のリンは違うからな。たぶん。
「なあ、リン」
「なんですか?」
「あれ以来変わったことはないか?」
「特にはありませんかね」
なら、よかった。あれ以来ingにはユミさん以外からはメールは来ていない。これはもうビクビクしなくてもいいって言うことなんですかね。そうだとありがたい。
そろそろ夏にでも突入するのだろうか。段々暑くなってきている。別に夏は嫌いじゃないからいいのだが。むしろ好きな部類だ。
「あの、隣行っていいですか?」
「ん、ああ。別に構わないが」
リンが隣に座る。
それから沈黙が続く。だが、不思議とその沈黙が苦にならない。むしろ、なにか落ち着く。たまにはこんな時間も刻むのもいいのかもしれんね。
しばらくすると肩にコツンとリンの頭が置かれた。
「人間の時も私たちこんなことしていたんですかね」
「そうかもしれないな」
「そう思うとなんか嬉しいです」
嬉しいね。俺も同じさ。嬉しいって言うか落ち着くっていうか。少なくてもこの時間が終わってほしくないと思うね。
「お兄ちゃん」
ん、ああ、俺の事か。急にお兄ちゃんとか言われても実感を持てん。シャミによくそう呼ばれているが、もちろんそれとこれは別物だ。
「どうした?」
「……これからもよろしくお願いします」
「……こちらこそ」
「たっだいまー」
元気よく家に入るリック。買ったものはすべてリックが持っている。買い物に行く時にリックがいると大助かりだ。
「シャミー、これどこ置けばいい?」
「テーブルに置いておいてください。冷蔵庫には私が入れますので」
「シャミさん、私も手伝いますよ」
「それじゃ、お願いします」
シャミとミュウがキッチンに入っていく一方リックはリビングの方へ行く。
「ロイー、テレビつける……ありゃ?」
ロイとリンが仲良く眠っていた。リンはロイの肩に頭を置いて、ロイはそのリンの頭の上に自分の頭を置いている。傍から見ると兄妹みたいだ。
リックはそんな二人を見て微笑んだ後、シャミたちを手伝うためにキッチンに行く。邪魔してはいけないと思ったからだ。
誰も聞こえない大きさでリンを寝言を言う。
「お兄ちゃん、大好き」
リンのお話もついに終わりました
これからもがんばっていきたいと思います




