最後の夢
リンに兄妹と言うことを伝えてから数日が立った。前に呼び出されて以来ナナさんから連絡は来ていない。どうやらバレてないらしいな。毎日ビクビクしながら生活している。
家の中はすでにいつも通りになっている。わかりやすく言うとバカやっている。
「ん」
リックが口にくわえたポッキーの先を俺に向けてくる。
「なんだ?」
「ポッキーゲーム」
「アホか」
だいたいこんな感じだ。
今回の事件の中心人物であるリンもすでに落ち着いている。あれ以来暴れるようなことなどない。俺も一安心だ。
ソファーに身を沈める。この何日かでかなりの疲労がたまった気がする。いくら休んでも疲れがとれない。俺以外のみんなは元気でなによりだ。むしろ分けてもらいたいところだ。
「ロイくん」
今度はミュウがくわえたポッキーを向けてきた。この家の奴らは本当にこういうのが好きだな。
俺はミュウがくわえているポッキーを半分ぐらいで折り、自分の口に運ぶ。
「ロイさん」
今度はリンがマーブルチョコをくわえてきた。
「まさかとは思うが、ポッキーゲームとか言うんじゃないだろうな」
「うん、そのまさか」
リンの鼻先を軽く押してやる。本当になんなんだ。どいつもこいつも。
そして、その夜久しぶりにあの夢を見ることになった。
「ぱんぱかぱーん」
どうやら夢の中の妹は元気いっぱいのようだ。
「この度はお疲れ様でした」
深々と礼をする。なんかいつもと違うのが逆に気味悪い。
「なによ、気味悪いって」
今回は顔がはっきりと見える。表情も豊かになっている。ニコニコ笑っているのはいいと思うが、冗談抜きで気味が悪いぞ。なにか企んでるんじゃないだろうな。
「今日もこうやって出て来たけど、正直言うこと何もないんだよね」
じゃあ、なぜ出て来たんだ。
「前に言ったヒントの答え合わせぐらいだね」
大きな変化と小さな変化だっけか。大きな変化と言うのは恐らくリンが妹とわかったことだろう。小さな変化は、考えてもわからん。
「まあ、そんな感じだね。小さな変化というのは、まあもうしばらくしたらわかることだよ」
意味深な感じで微笑んでくる。もったいぶるなっていうの。
夢の中でありながらも意識が段々と遠ざかっていくのが感じる。どうやら今回の夢は何も起こらずに終わってくれるようだな。
「じゃ、お別れだね」
ああ、そういうことみたいだな。
「あっちの私によろしくね」
了解。って、こいつリン自身じゃないのか?この夢もあいつ視点で見てるのだと思うのだが。
「バイバイ、お兄ちゃん」
妹はリンと同じような笑顔を見せて俺に別れを告げた。




