兄妹
俺はリンに包み隠さずすべてを話した。知っていたと思うが俺達が兄妹と言うことから夢で自称妹が出てきたということまで。何もかもだ。
俺が話している間リンは真剣な表情で聞いていてくれた。一切口を挟まずに。話がつまずいた時にも急かさずに待っていてくれた。時にはあいずちもしてくれた。リンはとても話しやすい相手だった。
「こんな感じだ」
「……うん、知ってました」
「はは、だろうな」
「ロイさん嘘下手すぎますよ」
その言葉には苦笑を浮かべるしかありませんよ、はい。しかし、こいつはいつ俺たちが兄妹だと気づき始めたのだろうか。そんなことを漂わせる発言をしただろうか。
「……私もいまいち分からないんです。なんかもしかしたらって思い始めてきて」
もしかしたらが本当だったわけか。怖いね、悪魔の勘というのは。リックといいリンといいみんな勘が鋭いもんな。少しくらい分けてもらいたい。自分でもわかるぐらい鈍感なんでね。
「あの、ロイさん?」
「ん、なんだ?」
「夢についてなんですけど」
なんか思い当りがあるのか。
「その妹さんの目線で同じ夢を見ていた気がするんです。夢と言うか白昼夢って言った方が近いんですかね…」
「俺の首を絞めたり、刺したり?」
「その夢も見ました。いや、見たというか首を絞めたり、刺しました」
じゃあ、なんだ。あれは兄妹そろって違う目線で夢を見ていたというわけか。なんてシンクロ率なんだ。これは偶然で片付けていいものなのだろうか。それとも…?
「この話秘密なんですよね。私に言ってよかったんですか?」
「まあ、バレると怒られるだろうな。でも、当事者でもあるお前が知らないってダメだろ」
ナナさんたちのことだ。今にもこの家に乗り込んできてもおかしくはない。でもな、なんで俺は兄妹と言うことを知ってるのに妹であるリンが知らないというのは不平等じゃないか。こんなのグダグダ続けていてもしょうがないからな。ぱっぱと解決した方がいいだろう。そうしないと俺の体も持たん。
「とにかくそういうことだ。これで何かが解決するなんては期待してない。でも、お互い知っていた方がいいだろ?」
「はい、そうですね。だけど、」
「だけど?」
「なんで私、ロイさんの首を絞めたりしてしまったんでしょうか…」
「…さあな。それは俺にもわからん。人間だったときに恨み持たれることしたっけかな?」
心当たりはないぞ。いや、事故で助けなかったことか? でもそれはしょうがないことだと思うし、例の子助けたときもそれがあったから体が動いたわけだし。
「別にされた覚えはありませんね」
これは俺達で考えてもわからないか。おとなしくナナさん達からの報告を待つとしようか。それとも夢であの妹やらが出てきたときにでも聞いてみるというのもいいかもしれないな。
「ただいまー!」
リックの元気な声が家中に響く。時計を見ると結構時間が経っていた。
「よし、この話は終了だ。あ、この話は絶対に言うなよ。いいか、一生のお願いだ」
「わかってますよ」
余裕の笑みで返される。これなら心配なさそうだな。
「ロイー、水ー」
「自分で出しなさい」
さて、ひとまず山は越えたか。これが夢にどう関わってくるかだな。やれやれ、魔界に来てからは毎日が事件みたいなものだな。
その日の夜。すでに電気が消えており真っ暗。真っ暗になると反射で未だに体が強張ってしまうが、今はロイとリックに挟まれている。
「ロイさんが私のお兄ちゃん…」
無意識ににやけてしまう。前のところにいたときは何度もいつも一緒にいてくれるお兄ちゃんやお姉ちゃんが欲しいと思っていた。今はそのお兄ちゃんが隣で眠っている。素直にうれしい。
「ロイ…さん…」
ロイはリンに背中を向けて眠っている。起こさないようにゆっくりとその背中にくっつく。
「温かい……」
少し大きな背中、不思議と安心する。
「なーにしてんの?」
後ろからリックに抱き着かれる。急なことでビックリしてしまった。
「あ、リックさん起きていたんですか?」
「うん、なんか眠れなくてね。え、なに。急に甘えたくなっちゃったみたいな?」
「そんなことじゃありませんよ」
「そんなことなら私に甘えてくれていいのに。お風呂の時みたいにさ。私の胸に来ていいんだよ」
ダメだ。聞いていない。てか、もう何を言っても無駄な気がする。
「さあ、おいで」
「……じゃあ、お言葉に甘えて」
豊満な胸に顔をうずめる。リックは優しく抱いてくれ、頭も撫でてくれる。
リンは知らぬ間に眠りの世界へと入っていった。
生きています
もう少しでリンのお話も終わりそうです
これからも不定期ながらも続きを書いていきたいと思います




