話
……どうしよう。ばれたよ。絶対にばれた。これにこそ命を懸けると言い切れるぞ。絶対リンにばれた。俺嘘つくの下手すぎるだろう。自分でも驚きだわ。俺ってあんなに嘘をつくのが下手だったのかね。ただいまリンはリックと共にお風呂に入っている。……いや、そんなのはどうでもいいのだ。ちょっと羨ましいとかどうでもいいのだ。リックの奴はなんであんなに胸がでかいのかなんてのは本当にどうでもいいのだ。てか、なんで今こんなことが出てくるんだ。
さて、どうする。兄妹っつうのがばれちまったぞ。ここは正直にナナさんにメールでもして報告しておくべきか?……ダメだ。その後どうなるか予想してみたがどう考えても最終的には説教と言うゴールにたどり着いてしまう。さて、本当にどうしたらいいものだろうか。
いろいろと考えてみても一番いいと思える選択肢が何一つ見つけられない。どれもこれもダメな考えばかりだ。ではいったいどうすればいいんだ。
「さっきからうんうん唸ってどうしたんですか?」
「え?唸ってた?」
「はい、唸ってましたよ」
そんな気はなかったのだがな。無意識と言うのは怖いものだ。
「なんか悩み事ですか?」
「ま、まあな」
「私でよければ聞きますけど?」
「いや、これは俺個人の事だからさ。なるべく一人で考えたいんだ」
「そう、ですか」
「いや、でもありがとな。心配してくれて。気持ちだけで十分だよ」
ミュウの頭をポンポンと叩いてやる。
「いつでも相談に乗りますからね」
「おう」
次は唸らないように気を付けながら考えることにしよう。
それで、一体どうすればいいのかね。隠しておくのは身が引けるが、ナナさんには言わない方針で進めていこう。あとはリンだな。すでにバレた以上誤魔化したりすることなど到底無理な話だ。ならどうするべきか、俺はすでにその解決方法を見つけていた。
で、それをする以上はリンと二人きりが一番いいだろう。いつその機会が来るだろうか。なるべく早い方がいいのだが、それは状況を見てだな。
さて、考えがまとまったところで一眠りすることにしよう。いつも動かしていない頭をフルで稼働させたので脳が休みをくれと訴えている。俺はその本能に身を任せて寝ることにしよう。
「ミュウ、俺軽く一眠りするわ」
「え、でもお風呂は?」
「先に入っていいぞ。俺は最後でいい」
「あ、はい。わかりました」
「んじゃ」
そのままソファーに寝っころがり瞼をゆっくりと閉じ、睡眠の海底へと沈んでいった。
「ロイー。起きてー」
頭をぺしぺしと叩かれる。目を開けるとそこにはリックの顔があった。頭の下には柔らかい感覚がある。いつの間にかリックに膝枕をされていたようだった。
「お風呂みんな入ったけど、どうする?ロイは入る?」
「んー」
「んーって、どっちよ」
「入るぅ」
後ろ髪をひかれる思いでリックの膝から頭を離す。まだ眠いのか頭がぼーっとする。まあ、いい。風呂に入ればある程度は目が覚めるだろう。という考えは甘かった。
いざ風呂に入っても、眠くて眠くて堪らない。心地よい温かさが体全体を包み込み、何度眠ってしまっただろうか。そして何度湯船に沈んだだろうか。
いい加減にしようと風呂から上がる。10分も入ってない気がするがいいだろう。寝たら溺れ死んでしまいましたなんかじゃ恰好がつかないからな。
風呂から上がり、リビングへと向かうとそこにはリンが一人でソファーに座っていた。
「リン?」
「早かったですね」
「まあな。で、みんなは?」
「お散歩だそうです。つい2,3分前に行ったところですよ。帰ってくるのはだいぶかかるでしょうね」
「リンは行かなかったのか?」
「はい。ロイさんが一人だと可哀想だったので」
笑顔でこちらを見てくる。俺はそんなに寂しがり屋の印象なのだろうか?
ってか、この状況俺とリンだけ。つまり、話すにはもってこいじゃないか。でも、いざ話すとなると躊躇ってしまう。でも今話さないといつ話せる機会が来るか分からない。なら、今話すしかないじゃねえか。
「リン」
「なんですか?」
「話がある」




