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悪魔達の生活  作者: 鍵宮 周
リンの異変
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 頭が痛い……。魔王城を後にして家に帰るためにえっちらおっちら歩いているわけだが、ナナさんが教えてくれたことを整理しようとしているのだがうまくまとまらない。考えすぎなのか頭も痛くなってきたしな。ここで考えるのをやめておくべきか?いや、そんなわけにもいかないよな。

 俺がまだ人間だったときリンが妹だってのは理解できているつもりだ。でも、頭のどこかで「そんなわけがない」「信じられない」という考えが眠っているらしく、そこから先がどうにも考えられない。さっきから俺の頭の中はそんな葛藤でいっぱいだ。っつうか、頭の中がもうぐるぐるだ。

 帰ったらどう接したらいいかな。いつも通りでいいっていうのはわかってるんだが、いつもどおり話せる自信がこれっぽっちもない。ギクシャクしちゃう可能性大だな。

「はぁ」

「なーに、溜め息出してんだ?」

「あ?」

 後ろから急に声をかけられる。誰かと思い後ろを振り返る。そこには数少ない話す奴の一人、ジンがいた。

「久しぶりだな」

「そうだな」

「なんか悩み事か?」

「まあな」

「んじゃあ、ひとまずいつもの喫茶店でもいこうや。お前が話せるならその悩み事ってやつも一緒に聞いてやるよ」

 と、俺はうんともいいえとも言っていないのに話を進め、勝手に歩いて行ってしまった。ついていくしかねえか。

 それにしてもユミさんといいジンといいタイミングがいいのか悪いのかっていうタイミングによく来るな。


「えっと、コーヒー2つで」

 喫茶店でカウンター席に並んで座り、ジンが俺の分の飲み物も一緒に頼んでくれた。勝手に頼まれたとは決して言わないぞ。

「で、ジンはまた買い物の邪魔になるから追い出されたのか?」

「正解」

「なんか哀れだな」

「何がだよ」

 毎回毎回追い出されているとか哀れ過ぎんだろ。雇っている子に追い出されるとか。立場的にジンの方が下なんじゃねえのか?……俺のところもそんなもんか。尻にしかれているってやつだな。

「で、お悩みってなんなんだ?」

「ん、ああ」

 これ言っちゃダメなんだよな。厳重に注意されてるし。なんか監視されてそうだしな。言った瞬間、逮捕みたいな。

「なんつうか。今雇っている子といざこざがあっれね。詳しいことは言えないんだが」

「毎度毎度お前はそういうのに巻き込まれるよな」

 ジンがケラケラと笑う。こちとら笑い事じゃないんだけどな。

「そんな睨むなって。コーヒーでも飲んで落ち着けや」

 ん、いつの間にかコーヒーが来てた。砂糖とミルクを一つずつ入れて飲む。なんか苦いな。いつもはこれで充分なんだが。まあ、飲めないわけでもないしこのままでいいか。

 ジンが鼻歌を唄いながら砂糖を3つ入れる。あれ、こいつ意外とコーヒー苦手な奴なのか?

「ん、ちょっと苦いのあんまり好きじゃねえんだよな」

 じゃあ、なぜコーヒーを頼むんだ。他の頼めよ。

「まあ、なんだ。お前の表情を見るにかなり深刻そうな問題みたいだし、俺も口出しできそうにない。でも、この問題でもなんでももし俺が協力できそうなら言ってくれ。いつでも手伝ってやるよ」

「……ありがとな」

 こんなやつと仲良く話せるなんて俺は嬉しいよ。こういう奴のことを親友とでも呼ぶのかね。

「あぁ、お前ingのアド教えろ」

「わかった」

 ingのアドを交換した後にジンが時間になるまで一緒に喫茶店でダベってた。今回も奢ってくれなかったな。誘ってきたんだから奢ってくれたっていいじゃねえか。まあ、コーヒー代に困るほど金欠じゃねえけどな。


 本当に長い時間話していたみたいだ。空が少し暗くなりかけている。喫茶店入る前はけっこう太陽が高い位置にあったと思うんだがな。

 ジンと話せたおかげか気持ちが楽になった気がした。やっぱり、持つべきものは友だな。

 やっとこさ家に着き、ドアを開ける。

「ただいまー」

 返事の代わりに物を壁やそこらに投げてつけている音が聞こえる。リックとかが誰かとはしゃいでいるのか?それとも誰か暴れてるか。って、食器の割れる音まで聞こえてきた。さすがに俺も「これはやばくね?」と思い始める。

「おい、お前ら何」

 リビングに入った瞬間皿かなんらかの食器が俺の顔すれすれをかすめて行った。唖然と、いやビビってしばらく動けなかった。

「あ、おかえり」

 リックがこっちに気が付く。いや、おかえりじゃねえよ。なんだよこの状況。っつうか、お前血流してんじゃねえか。リックに駆け寄る。

「お前、血出てんじゃねえか」

「ん、ああ、大丈夫だよこれくらい」

 リックは血を拭う。で、この物を投げたりしているのは……やっぱりリンか。

「シャミとミュウは?」

「キッチンの方で隠れてる。私、リンのこと止めようとしてみたけど力が段違いで」

「わかった。俺に任せろ」

 俺は立ち上がり、リンのもとに近づいていく。途中枕だのなんだのが投げられるが当たっても痛くないし、腕で防いでいる。何個か顔に当たったが。投げて来た物の中には食器などの危険なものも入っていた。

「来るな来るな!」

 リンが完璧狂っちまってる。本当にどうしちまったんだ。お前は。

 そして、俺は一発リンの頬に平手打ちをかましてやった。

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