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悪魔達の生活  作者: 鍵宮 周
リンの異変
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泣き虫

「お兄ちゃん、どういうこと?」

 さて、困ったな。あの状況をどのようにして説明するべきだろうか。素直にリンが俺の首を絞めて来たからと言っても信用されないだろう。むしろ俺への好感度がガタ落ちだ。なんだかんだ言っても話を信じるのは同じ性別の女子同士だろうしな。ここら辺はやっぱり人間も悪魔も同じか。

「ロイくん説明してもらっていいですか?」

 文字で見ると何ともないが、ミュウのこの言葉の威圧感が半端ない。どう言い訳したらこの場を乗り越えられるか。

「あの、えっと……私が」

 リンが説明するのかわからないが、なんか言い出そうとした。

「ああ、リン。俺が説明するから」

 このリンの性格だと恐らく俺の首を絞めてしまったからとか正直に言ってしまうだろう。いや、知らんけど。

「えっと……だな。ほら、リンってエルフだろ。エルフってさ戦闘種族じゃん。この頃そういう戦闘の依頼とか受けてなかったからなんか鬱憤みたいなのが溜まっていたみたいなんだ。それいう相談を聞いたから、押し倒した方が勝ちって言うルールでその鬱憤を晴らしてやろうということで、ソファでやっていたら、俺少しムキになっちって、リンを押し倒しちゃって、その時ちょうどお前らが帰ってきて……」

 ……うん、言い訳がぐだぐだすぎる。自分でも途中で嫌になっていた。誰か俺の頭の容量を大きくして。そうするともう少しましな言い訳ぐらいできるから。

「…………」

 ほらー、この雰囲気。なにこれ。気まずい。俺が目を泳がせていると

「そうかー」

 あら。リックさんこんな言い訳で納得?ってか、こんなぐだぐだな言い訳で誤魔化したこと前にもなかったっけ。忘れたけど。

「お兄ちゃん、そういうのは外でしてください。あと、大人気ないですよ」

「あ、ああ。すまん」

 なんであんな言い訳で誤魔化せたわけ?俺以外と頭働く人なの?いや、そんなわけないはずだ。バカだもん。俺、バカだもん。

「でも結局ロイくんが原因ですよね」

「そうだな。俺がもっとそういう依頼受けていればな」

 ま、まあ。結果オーライだ。丸く収まればいいんだ。これが丸く収まっているのは知らんがな。


 で、俺とリンが仲が悪くなっているとでも勘違いした三人が俺たちに気を利かせてくれたのか二人で買い物に来ている。

 別に仲は悪くなってなどいないのだが、さっきのことがあったので気まずい空気だけが流れている。

「……これで全部そろったか?」

「うん……」

 てか、なんで俺たちが今こうやって買い物に来ているんだ。さっき三人で行っていたのは買い物だったはずなのだが。俺の勘違いだったのだろうか。

 さて、リンにさっきのこと聞いてみるか?いや、でもな。……やめておこう。これ以上気まずい雰囲気にするのもあれだ。ひとまず謝っておくだけ謝っておこう。

「あー、リン。さっきはすまなかったな」

「私こそごめん」

 なんか急にリンがシュンとしてしまった。悪いことをしてしまった気分になってしまう。

「なんであんなことしたのか、私でも……」

「いや、大丈夫だから。な?泣くなって」

「でも……」

「そりゃあ、驚いたけど、な?俺も腹殴っちまったことだし」

「うん……」

「だから泣くなって!」

 このまま帰ったらまたあの三人に何か言われることに違いない。ひとまずこいつが落ち着くまで喫茶店にでも入って休もう。時間はまだまだあることだし、少しぐらい遅れても別に大丈夫だろう。

 というわけで、近くの喫茶店に入ることにした。

「いらっしゃいませー。あ、ロイちゃん」

 この声。そして、俺をちゃん付けで呼ぶのは一人しかいない。

「あ、お久しぶりです」

 名前は知らないあのファミレスの店員さんだ。え、なんでこの喫茶店にいるの。

「この店とあのファミレスって姉妹店みたいな関係だから。私もたまにこっちで働いてるってわけ」

 なるほど。で、店員さんはリンが泣いているのに気付いたらしく、

「ロイちゃん、女の子を泣かせちゃダメだよー」

「いや、これにはいろいろな訳がありましてですね」

「まあ、ゆっくり休んでいって。仲直りもそれから」

 俺とリンはカウンターの端に案内された。これは気を利かせてもらったのだろうか。

 ひとまず俺はコーヒーとオレンジジュースを頼んでおいた。

「泣くなって。俺もムキになっちゃったし。それでおあいこだ」

「うん……」

 こういう時って、なんて言って慰めればいいんだ?わからん。

 俺がいろいろ悩んでいると

「あれ、ロイ?」

 どっこで聞いた時のある声だな。当たり前だが。

「ジンか」

 なんであんたは俺がここに来ると毎回いるんですか?なんか狙ってる?

「うぃっす。なんかここに来るといっつもお前に会うな。なんか尾行とかでもつけちゃってる?」

 それは俺のセリフだ。

「まあ、すぐ出て行っちゃうけど。待ち合わせの時間だからな」

「また買い物に付き合って、追い出されたのか」

「ご名答。いやー、なんで追い出されるのかね。俺邪魔なのかな」

「知らん」

「だよな。じゃあな。今度機会があったら俺の子たちに会わせるてやるよ」

「ああ。俺も機会があったら紹介しよう」

 隣にいるがな、一人。

「んじゃあなぁ」

「おう。じゃあな」

 嵐のように過ぎ去っていったな。この短い時間でいつの間にか飲み物がテーブルにあった。リンはコップを両手でつかんで少しずつ飲んでいた。

「落ち着いてきたか?」

「あの、本当にごめんなさい。ごめんなさぃぃぃ……」

 俺にしがみついて泣いてくる。ああ、また泣かせちまった。

「大丈夫だからな?だからもう泣きやめ」

 リンの頭をやさしく撫でてやる。こんな状況なのになぜかホッとしてしまっている自分がどこかにいた。

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