病院
ゆっくりと目を開ける。いつの間にかベッドの上。そして……見たときのない天井。壁も……俺の家のものではない。
「あ、目を覚ましましたか?」
かわいらしい声がした。……この声は。
「ナ、ナナさん?」
「おはようございます、ロイさん。って言っても、すでに日は暮れ始めているんですけどね」
「ここは?なぜナナさんが?」
「ここは病院です。私がなぜここにいるかと言うと、私はこの病院のナースであなたの担当ナースになったからです」
病院。確かに壁も天井も何も模様のない綺麗な白だ。ついでにナース服も白。当たり前なんですけどね。
「みなさん呼んできますね」
みなさん?それが誰かを聞く前に彼女はドアを開け、その向こう側へと消えていった。さて、何してようかと考えたのもつかの間、すぐにそのみなさんが誰なのかを知った。
「お兄ちゃん!!」
言うまでもない、シャミ達だ。全員集合している。ナナさんは気を使ってくれたらしく、外に出て行った。
「よう」
「もう心配かけないでよ!!」
「す、すまん」
そういえば俺なんで病院なんかいるんだ?
「ああ、覚えてないよね」
リックが説明してくれた。その説明によると、俺が寝ていると急に唸りだした。その時はリンしか起きておらず、少し心配するぐらいだったらしいが、しばらくするとその唸り声がひどくなってきたらしい。いよいよ心配になり、リンはリックを起こす。そして、俺を起こそうとすると何もしていないはずの腹から血が出てきたらしい。それからはこの通り病院へ連れてこられたってわけだ。
「どうしたかと聞いてみたいところだけど、寝ていたから覚えてないよね」
腹から血?ということは、やっぱりあの夢が関連してくるのだろうか。その血が出てきていた腹を触ってみると、少し痛い。包帯がぐるぐる巻きにされている。
「ああ、さっぱりもって覚えていない。心当たりもないな」
「やっぱり、そうだよね」
リックが申し訳なさそうな顔をして頭をぼりぼりと掻く。申し訳ないのはこちらなんだがな。
「で、でも、ロイくんが元気で何よりです」
「うん、元気が一番」
リンとミュウが微笑みながら話しかけてきてくれた。
「この状態が元気と言うのだろうか」
「なーに言ってんの、ロイはいつでも元気だよ!」
そう言いながらリックが俺の背中をバシバシと叩く。腹に響くのでやめてほしいのだが。
こんな風にぐだぐだしゃべっていると、面会時間がそろそろ終わるらしくナナさんが病室に入ってきた。
「すいません、そろそろ面接時間が終わりなので」
「ああ、わかりました」
シャミが立ち上がった。それに釣られて他も立ち上がり始めた。
「今日は念を入れて病院に泊まっておらいますが、恐らく明日の正午には退院できると思います」
明日には退院できるのか。何気にホッとしている俺がいた。
シャミ達はナナさんと一言二言話した後帰って行った。明日も午前中に来てくれるらしい。まさか入院中のお見舞いがこんなにうれしいなんて初めて知ったな。
「なんか聞きたいこととかありますか?」
「いえ、大丈夫です」
「わかりました。そろそろ消灯時間なので就寝の準備をしておいてください」
そういい、病室から出て行った。
一息ついてから、病室を見渡してみる。こ、個室だと!?俺しかいないじゃねぇか。いや、個室だから当たり前なんだけど。ボッチや……。
さて、もう疲れた。消灯時間もそろそろだって言ってたな。よし、もう寝よう。
俺はあの夢を見て、これ以上傷が広がらないように祈りながら眠りに入った。




