二人乗り
またしばらくぶりの更新となってしまいました
これでも頑張っていますので、温かい目で見守ってください
「そんな落ち込むなって」
俺は落ち込んでいる二人を励ますのに必死だった。その二人と言うのはシャミとミュウのことであり、なぜ落ち込んでいるのかと言うと、なんか自転車に乗ることができなかったかららしい。
そんな焦らなくていいのに。一日二日で乗れるような物でもないしな。あれはとにかく数をこなすしかないだろ。
「そうそう、落ち込まなくていいって」
「お前が言うな」
リックが言ったってなんの力もない。なんせ一日もかからず、というか3,4回で自転車に乗れていやがった。その時の俺は開いた口が塞がらないということわざがピッタリだった。だって、運動神経バツグンのリックでもさすがに時間がかかるだろうと思っていたからな。俺が人間の時の苦労がバカみたいだ。
「そうだよ。私も乗れてないし」
俺とリン(+リック)で励ますがまったくもって、状態が変わらない。さっきからずっと俯きながら「…………」だ。
「まあ、今日無理でも明日だ。明日駄目でも明後日がある。そんな気負わないでゆっくりがんばろうぜ」
そういってみると、
「はい。明日こそ乗れるように」
「明日には乗れるようがんばります」
と、一応しゃべったのだが頑なに明日にこだわる。……なんでだ?
っと、いつの間にか家に着いた。励ますだけで相当な時間を使ったようだ。まあ、元気を少し出してもらっただけでも良しとしようか。
それぞれ「ただいま」を言い、それぞれが別のことをする。ちなみに俺はリックと共にソファーに一直線だ。
時計を確認するとまだ5時だ。さて、夕飯作るまで何してようかな。
「ねえ、ロイ~~」
「あ?」
「もうちょいそっち行って」
待て待て。俺はもうソファーの端にいるんだが。肘をついてるんだが。
「無理。お前がそっち行けよ」
「あ、それは『俺のそばにいろよ』と言うことですか!?」
「一人で勝手に妄想してんじゃねえよ」
リックは「ぶー」と明らかに不満そうな声を出した後、離れていった。なんなんだあいつは。
とか思っていると、俺とリックの間にリンがちょこんと座ってきた。このソファーにこの三人がそろうと、ついシャミがいなかった時のことを思い出してしまう。……もうあんな思いしないようにしたいな。
「なんか、親子みたいですね」
このソファ-のメンバーを見て、ミュウがそう言ってきた。
「えーー、マジ?」
「ちょ、ロイ。なんでそんな不満な声出すの?」
だって、こんなやつが奥さんとか嫌だよ。こいつはせめてあれだ。迷惑ばっかりかけてくる幼馴染だ。ここまでぐらいならなんとか許せる。あ、でもリンが娘はOKだぜ。まあ、娘と言うより妹って感じだけどな。……妹?
「ロイくん、どうしたんですか?」
「ん、あ、嫌。なんでもない」
いつだか見た夢を思い出しちまった。もう見たくねえよあんな夢。
「……あ」
急にシャミが声を上げた。
「どうした?」
「あの、夜ご飯のおかずが無くて。買ってこないと。いや、買ってきます」
「俺も一緒に行くよ」
「ありがとうございます」
さっそく自転車の出番だな。俺はテーブルの上に置いていた鍵を取る。
「んじゃ、リック留守番頼むぞ」
「お土産お願いねー」
「ねぇよ」
俺はシャミと一緒に外へ向かった。
自転車の鍵を開け、サドルに跨る。
「んじゃ、シャミ。荷台に乗れ」
「う、うん」
シャミが荷台に座った。
「座ったか?」
「うん」
「ちゃんと俺につかまっとけよ」
「え?あ、はい」
「じゃあ、行くぞ」
そして、俺は自転車をこぎだす。
おー、この風の感覚。懐かしい。そして今は、腰にシャミがつかまっている。これは人間界でも体験したことのない感覚だ。なんか彼女ができたみたいだ。
「自転車って乗れると、こんな感じなんだね」
「ああ。早く乗れるようになろうな」
「……私はこのままでもいいけど?」
「ん?なに?」
「あ、なんでもないなんでもない!」
うーん、絶対今なんか言ったよな。声が小さくてさっぱり聞こえなかった。
そんなこんなで幸せな時間を過ごしていたら、商店街に着いた。そして、買い物を済ませ同じく自転車で家に帰った。帰りもとても幸せな時間だった。




