練習
今俺は微笑ましい光景を見ている。
「あ、あのリックさん。離さないでくださいね」
「りょーかーい」
……本当にリックはわかっているのだろうか?
ああ、今はみんなで自転車に乗る練習だ。悪魔といえどやっぱり自転車はなかなか乗れないもんなんだな。俺は普通に乗れた。この体になっても普通に乗れた。少し不安要素だったので安心した。しかし、それがよかったのか悪かったのか、みんな自転車に乗るのが少し簡単だと思ったらしい。まあ、そんな簡単に乗れるわけないのだが。
「ロイさん……」
「ん?」
この合間にもシャミが乗ろうとして、転びかけるを繰り返している。
「自転車ってどうやったら乗れるんですか?」
「……慣れ、かな?」
こう改めて聞かれると自転車の乗り方ってどう教えればいいかわからない。これを教えている親御さんたちは何気にすごいと考えている今である。
「おーーい、シャミーー」
「えっ、何?」
再び乗ろうとしているシャミが一度動きを止め、こちらを見る。
「気持ちはわかるが下を見るな。前を見ながら運転してみろ」
「う、うん、わかった」
そして、シャミは前を見ながら自転車をこぎ始める。そうすると、さっきより少し乗れた。しかし、すぐ足を地面についてしまう。
「その調子で練習だ。あとは慣れるしかない」
「わかった」
ちなみに全員すでに自転車に乗っている。最初は俺以外みんな乗れなかったが、リックがあっという間に乗れるようになった。やっぱ、こういう才能がリックはあるのかもな。
「さーて、そろそろ時間か。んじゃ、リン行くか」
「わかりました」
俺はミュウに一回断りを入れてからリンと共にその場を後にした。
これから俺とリンは依頼だ。
「ここらへんだな」
「……いませんね」
ちなみ依頼内容は『害獣退治』だ。害虫じゃないぞ。害獣だ。分かりやすく言うとただのモンスター退治だ。
「確かにいないな」
周りをグルっと見わたしても何もいない。
「拍子抜け、っつうかなんつーか」
「どうしますか?」
「探すしかないだろう」
俺とリンは離れないようにお互い注意しながら害獣を探す。
しばらく歩いていると、
「あっ」
と、リンは声を上げて止まった。
「どうした?」
「害獣、お出まし」
指さした方向を見てみると。
「でかっ!」
小さいビルぐらいの大きさはあるんじゃないか?
「……どうやって倒すんだ?」
「気合い」
的を得て……ないよな。
そして俺とリンはその害獣に挑み、倒したのだった。
戦闘シーンはある事情により省かせてもらう。
まあ、ひとつだけそいつのことを言うとしたら、ビックリするほど雑魚だった。
ロイ達が害獣を探している時。
「自転車乗れませんねー」
「そうですね」
「思ったより難しいですね。お兄ちゃんやリックさんを見ているとそんな難しくもなさそうなんだけど」
シャミとリンは木陰で休んでいる。リックはと言うと、自転車に乗っていろいろな技を決めている。
「さすがリックさんですね」
「あの運動神経羨ましいです」
そう言って、ミュウがふくれてしまった。
「じゃあ、また練習始めましょうか」
「……はい」
二人はこれだけ決めていた。
ロイが帰ってくるまで自転車に乗れるようになって、驚かせてやろうと。




