解決
「あ、あれは?」
リックの父親も驚きの声を上げていた。いや、当たり前なのだろう。話を聞いていたリックですら驚いているのだ。
ロイの何とも言えないセリフにハイジャック犯は応答する。
「ピ、ピザなんて頼んだ覚えないぞ!」
……え、そこ?
「いやー、でも確かに頼まれたんですよねぇ~~。なあ?」
「はい。確かにこの飛行機に届けてくれってのお電話でした」
リンも同じ感じで応対している。
「だから、誰もそんな電話してないって!!」
「そう言われてもですねーー」
「あぁー、ごめんごめん」
ハイジャック犯の一人が出てきた。
「電話したの俺だわ」
いた。
「ああ、はい。ピザお待ちしました」
「ありがとね。こんなところまで」
「いえいえ、仕事ですから」
ハイジャック犯が代金(ピザ代)を払い、リンがそれを受け取る。てか、ロイあんたそれ仕事じゃないだろ。
「あと、ブタ箱入りのチケットなんですけど」
「なんで俺たちが自らブタ箱に入らなきゃいけないんだよ!」
リーダーと思われる男が怒鳴り散らす。
わかっていると思うがブタ箱というのは牢屋のことだ。
「あ、それ俺だ」
ブタ箱行きの人がいた。
「お、お前なんでブタ箱なんか」
「いや、だってブタ箱って快適らしいぜ?」
「ブタ箱のどこが快適なんだよ!!」
「冷房暖房完備、特定の場所なら外出自由。風呂トイレ別室完備。3食食えるし。ひと月に一回はステーキとか焼き肉。娯楽施設もバッチシなんだぜ」
ここでロイからingで通話が入る。
『なあ、リック。魔界の牢屋ってそんな豪華なのか?』
「みたいだよ。なんか魔王様が牢屋にいても他の人と同じように過ごしてほしいとかなんとかで」
『まじかよ。それって普通の人よりいい生活してるじゃねぇか』
ロイと同じことをリーダーも思ったらしく。
「ま、マジかよ。ブタ箱悪くないかもな」
とか、言い始めてしまった。
「……あのー、このチケットどうしましょうか?」
「あ、俺もらいますわ」
と、頼んだ男がもらった。
「あ、ちょっと俺ももらう!!」
周りもさっきのブタ箱生活を聞いたからか、俺も俺もとブタ箱行きのチケットを奪い合っている。
「……あ、あの。まだ、ありますよ」
リンがそういうと、リンの周りにハイジャック犯が群がった。……まず、なんでそんなもの持ってるの?
「おい、お前ら。裏切るのか!!」
リーダーがそういっても誰もその言葉を聞こうとはしない。
そんなリーダーのもとにロイが向かい、
「リーダーさんもいりませんか?」
と言っていた。
リーダーは最初「そんなもんいるか!!」とか粋がっていたが……
「す、すいませんやっぱもらえませんかね?」
とか言って、ロイにペコペコ頭を下げているのが現状だ。
「ハハ……ハハハ」
リックは呆れているのかなんだかわからない乾いた笑い声をあげていた。
「いやー、最初侵入していった時はバトル気満々だったけど、あんなに簡単に行くとは」
空港に飛行機が戻り、待合所の一角にロイ・リック・リンが陣取っていた。リックの父親はなんか交渉してるっぽい。なんの交渉かはリックですら知らない。
「私、ビックリしちゃいました」
「でも、リンうまかったよね」
「そ、そうですか?」
そう言って、リンは俯いてしまった。恥ずかしがってるのだろうか?恥ずかしがる要素などどこにもなかったと思うが。
「てか、あのチケットってなに?」
「ああ、なんかユミさんがくれた」
「あの人なんでそんなの持ってるの?」
「いや、手作り感満載だぜ。小さい子が作る肩たたき券みたいな雰囲気がある」
リックはロイが持っていたチケットを一つもらい、見る。
「その手作り感が魔王様が作ったって勘違いしたんじゃない?」
「な、なるほど」
魔王の適当さが功をなしたか。
「で、そのユミさんは?」
「ああ、帰ったみたいだな」
「帰ったんだ」
「なんでだ?」
「いや、お礼ぐらい言いたかったなって」
「そうか」
そして、なぜか三人そろって外を見ていた。天気は雲一つないという言葉がピッタリの晴天だった。




