喫茶店
「あれで、よかったんだよな」
空港からの帰り道、俺はずっと考えていた。
「こんな俺に憑いているならもっと優秀な悪魔に憑いた方が幸せだよな」
まあ、考えていたというより自分に言い聞かせていたのだが。
「あぁ、もうやめだやめ!俺は一人で生きる。そうだ、俺はがんばる」
そして何も考えず、なんとなーくで歩いていたら喫茶店が目に留まった。いつぞやジンと一緒に入った喫茶店だ。ちょうど喉も渇いてたところだ休憩がてら入ることにしよう。
入ると、店員から好きなところに座れとご指示を仰ぎ、どこに座ろうか周りを見渡すと、
「あれ、ロイじゃねぇか」
そこにはジンがいた。
「お前、また一人でフラフラしてたのか?」
「そういうジンこそ一人じゃねえか」
ジンを見つけた後、ジンの座っていたカウンター席の隣に座りアイスコーヒーを一つ頼んだ。
「俺はあれだよ。買い物においてけぼりにされたんだよ」
「前とおんなじ理由じゃねぇか」
「ん~、そうだっけ?」
ちょうどこのタイミングで頼んでいたアイスコーヒーがきた。
「そういえば、なんだっけ、あの~、あれだ」
「どれだよ」
「あれだよ。契約してたのに魔王の招集命令で魔王城に行っちゃった子。結局どうなったんだ?」
「ん、ああ。あの天使共に攻められた時にドサグサに紛れて連れ戻したよ」
「おぉー、かっこいいな」
「茶化さないでくれ」
まあ、その悪魔も解雇同然の扱いにしちゃったけどな。
「ん、そういえばジンはその時どこで戦ってたんだ?城では見かけなかったけど」
「俺は近くの街で戦ってたよ」
「そうなのか。ジンの戦闘見てみたい気もするな」
「見ない方がいいぜ」
「なんでだよ」
「なんとなくだ」
「なんだよその理由」
そういうと、俺とジンは少し笑う。
「さて、こんなバカ話はここまでだ」
「どうしたんだ?」
「いや、そろそろ待ち合わせの時間だからな。集合場所にいかないと怒られちまう」
「そうか。んじゃあな」
「おう。あ、今回は奢らないからな」
と、言い残しジンは帰って行った。しかし、なんだろうな。ジンと話してると、同級生と話してるみたいで気が楽になるな。
さて、俺もこのアイスコーヒーを飲んで家に帰るか。そう思って、アイスコーヒーを口に含めた瞬間
「ロイさん」
後ろから急に声をかけられた。同時に肩もたたかれた。俺はその声に心当たりがあったので驚き、アイスコーヒーを吹き出しそうになってしまった。
「……ゴホッ、ゴホッ」
「大丈夫?」
「だいじょばないな」
その声の主はリンのものだった。
「で、なんでここにいるんだ」
「なんとなく」
「そうか。んじゃ、リック達の所に帰れ。俺の所よりよっぽどマシだろ」
「嫌だ」
え、イ・ヤ・ダ?
「私、ロイさんが何と言おうとずっとロイさんのところにいる」
「なんで」
「どうしても」
リンは不満そうに頬を膨らませる。その顔はとても子供らしい仕草だったのでつい俺の頬がゆるんでしまった。それにしてもリンは俺の家に来てから表情がいろいろと豊かになった気がするな。
「そうか。んじゃ、勝手にしろ」
俺はそう言いながらもリンの頭を撫でてやった。
「ロイさん、泣いてる?」
「泣いてねぇよ」
「……涙目」
「うるせ」
こんな俺にリンは追い打ちをかけてくる。
「空港でのロイさん、寂しそうだったよ」
超能力者かコイツ。
「私、人の表情読むの得意だから」
「怖いぞ、その特技」
「そう?」
「ほれ、なんか一つ頼め」
「一つだけ?」
「一つだけ」
「ケチ」
「ケチじゃない」
そうしてしばらくの間、俺とリンは喫茶店でしゃべっていた。
シャミの話と同じくらいにしようとしていたのですが
どうやら、まだまだ続くみたいです。
長い目で見守ってくれるとありがたいです




