突然の出来事
リックについての話をしばらくの間続けていきます
それはある日突然訪れた。まあ、宣告されていても困ったが。
コン、コン
ドアをたたく音が聞こえた。来客の知らせだ。お約束通り俺が出ていく。
「はーい、どちら様ですか?」
ドアを開けると、そこには見たことのない初老っていう感じの男の人がいた。
「えーーっと?」
俺が困っていると、
「ああ、初めましてだね。君は契約悪魔のロイくんだね?」
「ええ、ああ、はい」
なぜ俺の名前を?
「あなたは?」
「わたしは」
初老の男の人が自分の名前を言おうしたところで
「あぁーーーー!!!!」
後ろからリックの声が聞こえた。なにごとかと俺が振り返ると、そこには驚愕の表情を浮かべている。
「どうした」
「お、お、お父さん!!??」
「おお、リックか。久しぶりだな」
「え?お父さん?」
この時の俺の頭の中はクエスチョンマークがたくさん浮かんでいた。
「どうぞ」
「ああ、ありがとね。お嬢さん」
シャミがお茶を出し、男性が礼を述べる。
「えっと……」
俺がどう切り出そうか考えていると、
「お父さん、何の用?」
リックが少し不機嫌な声を出して聞いた。なんで不機嫌なんだ?
「ああ、私がこの家まで尋ねに来たのはな」
その後、男性は衝撃な言葉を口にした。
「リックを連れて行くためだ」
「……えっと、それはどういう意味で?」
「そのままの意味だ」
「つまり、リックを連れて帰ると?」
「そういうことだな」
シャミがいなくなった次はリックってか。
「な、なんで!?私がこの道を進むって言ったときにお父さんだけ私の味方になってくれたじゃん!!」
リックは勢いよく立ち上がった。
「その時はそれでもいいと考えていたのだ。今は状況が変わってな」
「状況ってなんなの!?」
「リック、まずは話を聞こう」
「……わかったよ」
俺が止めると、リックはしぶしぶといった様子で座る。
「で、理由をお話しくださいますか?」
「ああ」
男性は一回深呼吸をして息を整えた。
「2週間ぐらい前だったかな。妻が、要するにリックの母親が病で倒れた」
「お母さんが!?」
「ああ。前触れもなく急に倒れてな。正直に言ってしまえば残りの命も大して長くないらしい」
前にも言ったがこの世界の病気の症状はかなり重いのだ。おそらくリックのお母さんは重い方の病気になってしまったのだろう。
「それで私にはどうしろって?」
「リック!」
リックの態度があまりにも悪かったため、俺は見るに見かねず注意をした。
「ああ、ロイくん。別に大丈夫だよ」
男性は俺にやさしい笑みを浮かべてくれた。
「で、リックには家に帰ってきてほしい。これはお母さんからのお願いでもある」
「お母さんの?」
「ああ、そうだ。そして、リックには悪いと思うがその後、家にいて、家の仕事を引き継いでほしい」
「家の仕事……ですか」
「ああ。リックにはお母さんの枠の所についてほしい」
「でも、私は!」
リックは反論する。しかし、男性がそれを制止させた。
「わかっている。でも、これはしょうがないことなんだ」
「しょうがないことってなに!」
当たり前だが俺の口を挟むところではないな。というか、この雰囲気は居づらい。
「しょうがないだろ!」
男性が初めて怒鳴った。
「お母さんが……もうダメなんだ……」
「でも……」
「言いたくなかったが、お前も約束は果たして無いようじゃないか」
約束?
「それは……」
「こう言ってはなんなんだが、返事は今すぐの必要はない。次に家に帰る交通手段がまだ整っていないのでな」
男性は立ち上がった。
「そうだな、次は遅くても一週間後にはまた立ち寄る。それまでに決めておいてくれ」
男性は玄関へと向かっていった。見送りをするために俺も玄関へと向かった。
「見送りなどいらなかったのに」
「いえ、そんなわけには」
「急ですまなかったな」
男性はそう言い残し、帰って行った。
俺がリビングに戻るとリックは
「なんで……なんで、こんなことに……」
と言い、俯いていた。




