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悪魔達の生活  作者: 鍵宮 周
ちょっとした事件
37/80

パーティー

 俺はミュウより一足早く家に帰った。

「ただいまー」

「あ、おかえりなさい」

 シャミが出迎えてくれた。すでに泣き止んでいる。

「ミュウさんは?」

「弟たちのところに行ってくるって」

「じゃあ、もうちょっとできますね」

「ん、なにが?」

「こっち来てください」

 俺はシャミについて行った。向かった先はキッチン。そして、キッチンにはリック、リンが仲良く料理を作っていた。

「……これは?」

「ミュウさんの歓迎パーティーですよ」

「あ、なるほど」

「あと、シャミの歓迎、っていうか、まあ、シャミのも一緒にね」

 2人のパーティーを一緒にしようということで料理に手を入れているんだな。

「なんか手伝うことあるか?」

「そうですねー」

「じゃあ、ロイは飲み物買ってきて」

「俺はパシリか」

「お願い」

 ……しょうがないけど行くか。

「わかったよ。他に買うものは?」

「特にないと思う」

「そうか。飲み物は何でもいいんだよな」

「はい。じゃあ、お兄ちゃんお願いね」

 俺は財布を持ち、玄関で靴を履いていると

「あの、ロイさん」

 リンに声をかけられた。

「なんか買うものあったか?」

「ちがう。えっと、行くときとかにミュウさんと会ったら……」

「足止めか?」

「うん。いい?」

「もちろん。じゃあ、行ってくるよ」

 俺はリンの頭を軽く撫で、買い物へ向かった。


 商店街で飲み物とか個人的に食べたいものとかを買っていると、後ろをミュウが通りかかった。

「お、ミュウ」

「あ、何してるんですか?」

「買い物だよ。リックとかに頼まれてな。ミュウもなんか飲みたいものとか無いか?」

「いえ、私は」

「別に遠慮はいらねーぞ」

「遠慮なんかは……」

 俺はボリボリと頭を掻いた後、近くにあった八百屋からみかんを一つ買い、ミュウに投げて渡した。

「え、え!?」

「食え」

「でも……」

「いいから食え」

「おい、ロイ。立って飯を食うってのは行儀悪いんじゃないのか?」

 八百屋のおっちゃんは気を使ったのかなんなのか知らないが、座るのを勧めてくれた。

「そうだな。じゃあ、座らせてくれ」

「そこのイスに座れ」

 おっちゃんがイスを準備してくれた。俺の分も。

「ほれ、ミュウ座れ」

「あ、はい」

 ミュウは座り、皮をむき、みかんを食べた。

「あ、おいしい」

「そうか、ならよかった」

「俺の店の物は全部うまいんだよ」

「本当はここの店のものじゃないだろ」

「今は俺の店のだ」

 調子のいいおっちゃんだよ、まったく。

「ごちそうさまでした」

 いつのまにかミュウは食べ終えていた。

「お、食べ終えたか。んじゃ、帰るか」

 俺は荷物を持って立ち上がる。

「おっちゃん、ありがとな」

「あ、ロイ。ちょっと待ってろ」

「ん?」

「これ持ってけ」

 おっちゃんはみかんを5個くれた。

「みんなの分のな」

「いいのか?」

「遠慮するな!!」

 俺は背中を叩かれた。少し痛かった。

「じゃあ、お言葉に甘えてもらっていくよ。よし、ミュウ帰るぞ」

「はい!」

 俺たちは帰ることにした。

 帰る途中、足止め代わりに何本か飲み物を買い足した。


「ただいま」

「えと、ただいま?」

「なんで疑問形なんだよ」

 俺は軽く突っ込みを入れて、家の中に入って行った。

 ミュウも少し遅れて入ってきた。そして、ミュウがリビングに入ると、

 パン!!!

 と、大きな音が3つした。

「え、これは?」

「ミュウの歓迎パーティーだとよ」

 俺はミュウに説明した。

 さっきの音はクラッカーのものだ。部屋には火薬のにおいがなんとなく残っている。

「帰ってくるタイミングはこれでよかったか?」

 リンに聞くとコクンと頷き返してくれた。

「夜ご飯にはまだ早いですけど、もう食べましょうか」

「おーー!」

 シャミが聞くと、リックだけが答えた。そして、各々自分の席に着く。

「ほら、主役がボーッとしていてどうする」

 俺はミュウに座るように促した。

 俺も席に座り、飲み物を自分のコップに注いだ。

「みんな準備できた?」

 リックが周りを見る。

「じゃあ、かんぱーい!!」

「「「「かんぱーい」」」」

 リックの乾杯の音頭に続いて、みんなが言う。

 楽しいパーティーが幕を上げた。

 テーブルには所狭しと美味しそうな料理が並んでいる。

「ミュウさん、料理はどうですか?」

「はい、とてもおいしいです」

「お口にあって良かったです」

 俺たちはしばらくの間この歓迎パーティーを楽しんだ。


 パーティーもお開きとなり、今は俺とシャミで食器を洗っている。

「今日はありがとな」

「当たり前のことをしただけだよ」

「そうか」

 ミュウも喜んでいるみたいだったからよかった。一番楽しんでいたのはリックだった気がするが。

「お兄ちゃんはもう休んでていいよ」

「最後まで手伝うよ」

「もう終わったみたいなもんだからいいよ」

「じゃ、お言葉に甘えて」

 俺は手を拭き、ソファーへ向かった。

 ソファーにはリックが腹を出して気持ちよさそうに寝ていた。

「おーい、リック寝るならベッドで寝てくれ」

 俺はリックの頭をペシペシ叩きながら言った。ちなみにミュウとリンは入浴中だ。

「うーん……うるさい」

「うるさいじゃねぇよ」

「……じゃあ、おんぶ」

「いやだよ。ベッドなんてすぐそこだろ」

「おんぶ~~~~」

「拒否る」

 俺はリックの足をどかし、スペースを作り、そこに座った。

「じゃあ、抱っこ」

「歩いていきなさい」

「抱っこ!!」

 とか、言って、リックは俺に飛びついてきた。

「うおっ!」

 そして、リックは覆いかぶさる形で倒れてくる。

「ちょっと、離れろ!あと、酒くせぇ!!」

 カクテルだけでこんなに酒臭くなるもんなのだろうか。

 俺はリックを起こし、しょうがなくおぶり、ベッドまで連れて行った。

「ありがと~~。お礼のチュウいる?」

「いらんからとっとと寝なさい」

「は~い、お休み~~」

 リックはそう言った瞬間寝てた。

「早っ!」

 俺は驚きだか突っ込みだかよくわからない発言をした後、ソファーに座った。

 すると、ミュウとリンが風呂から上がってきた。

「次はロイさん?」

「あぁ~、じゃあ、俺入るかな」

 シャミはまだ入れる雰囲気じゃないからな。

「シャミ、先に入るぞ」

「うん、いいよ~」

 俺は部屋で着替えとか準備した後、風呂へ向かった。


 俺は湯船に入ることなくシャワーだけで体を洗い、すぐ風呂から上がった。

「シャミ、入れ~」

「あ、早かったね」

「まあな」

 俺はソファーに体を沈めた。

「ねみぃ」

 すでに疲れがピークに達している。リンも眠いらしく、何回も欠伸をしていた。

「リン、ベッドで寝たらどうだ?」

「う、うん」

「歯は磨いたか?」

「うん」

「じゃあ、寝ろ」

「うん。お休み」

「おう、お休み」

 リンはベッドに入り、寝た。

 さっきは目に入らなかったがミュウも眠たそうだ。

「ミュウも寝たらどうだ?」

「えと、ご主人は寝ないんですか?」

「ロイって名前で呼んでいいよ

「え、でも。……じゃあ、ロイ……くんで」

「じゃあ、それで頼む」

「で、寝ないんですか?」

「俺はシャミが上がってくるまで起きてるよ」

 上がってきたら誰も起きてなかったじゃ寂しいだろうからな。

「じゃあ、私も起きてます」

 ミュウは目をこすった。

「別に無理をしなくてもいいんだが」

「無理なんかしてません」

 ミュウは固い決意をしたみたいだったが、5分ぐらいで寝ていた。

「寝てるじゃねえか」

 やっぱ、無理してたみたいだな。まあ、慣れない環境だし、当たり前のことなんだろうが。

「それにしても今日はいろいろあったな」

 まさかドロボウを捕まえたと思ったら雇うことになるとは。思いもしなかったぜ。

「よっと」

 俺はミュウをお姫様抱っこの形で持ち上げ、ベッドに運んで行った。そして、リンの横に寝かせた。寝かせたと同時にシャミも風呂から上がってきた。

「みんな寝ちゃいましたか」

「疲れてたみたいだな」

「私たちも寝ますか?」

「寝苦しくないか?」

「ん、大丈夫ですよ」

「そうか。じゃあ、寝るとしよう」

 俺は出していた水を冷蔵庫にしまい、ベッドに向かった。

「お兄ちゃんはどこで寝る?」

「そうだな、酒臭いリックの隣で寝るとしよう。リンの顔がなんとなく迷惑そうだし。シャミはやっぱ外側か?」

「そうだね」

 シャミは朝、一番に起きて朝食の準備をするため、毎回外側で寝ている。

「じゃあ、お休み」

「お休みなさい」

 俺はリックを少し転がし、自分が寝るスペースを作り、そこに入って行った。

 さて、今日もぐっすり眠れそうだ。

長くなりましたね

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