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悪魔達の生活  作者: 鍵宮 周
ちょっとした事件
35/80

ドロボウ

「ハァ~~~」

 俺はでかいため息をついていた。

「あの説明をシャミ達にか……」

 俺の手には4枚の紙がある。もちろん似顔絵が描いてあるやつなんだが。

「……ハァ~~~~~」

 俺はさっきより深いため息をついた。


「ただいま」

「おかえり~。どこ行ってたの?」

「ちょっと、な」

 言葉を濁す。

「すまん、みんなちょっと集まってもらっていいか?」

 俺が声をかけるとみんなが集まってくる。

「あの、ドロボウの件なんだが、なんていうか……進展した……かな?」

「……進展したの?してないの?」

「……した」

 リックが俺がなるべく言いたくないところを確実についてくる。

「どんなふうに?」

「まあ、説明する」

 俺は商店街で聞いたことを少しも隠すことなく話した。もちろん、似顔絵も見せながら。

 3人は驚きを隠せなかった。……当たり前だよな。急に濡れ衣を着せられたのだから。

「……一応、そういうことだ」

「そんなことが……」

「ああ。だから、これからお前らはこれが解決するまで外出しないでくれ」

「え?」

「買い物やなんやらは俺が全部やる」

「でも」

 シャミは納得してないようだ。

「シャミ、しょうがないよ。ここはロイに任せな」

 ……なんかかっけーなこいつ。

「すまないな。犯人は俺が少しでも早く捕まえる」

 俺は一言断り、再び商店街に向かった。


 ひとまず俺は魚屋に向かう。

「おっちゃん、説明してきた」

「ああ、すまんな」

「で、さっそくで悪いんだが」

「また、盗まれたか?」

「いや、あの客いるだろ?」

「ああ」

 俺はおっちゃんが指差すほうを見る。

「あの客、似顔絵に似てないか?」

 俺は似顔絵とその客を交互に見比べる。似てるっていうか、本人だ。

「ちょっと行ってくる」

「すまんな」

 俺は商品を選んでいるその客に近づく。

「ん?」

 俺は踵を返し、魚屋へ戻って行った。

「どうした?」

「匂いが違った」

「そうか。じゃあ、この4枚の似顔絵はすべて外れか」

「そうだな」

 なんとなく俺とおっちゃんの会話がぎこちない。

「ああ、そうだ。一つ頼みがあるんだが」

「なんだ?」

「夜も張り込むことにしたんだが、その時は他の3人と一緒にいたい。さすがに夜に1人の張り込みはきつすぎる」

「そうだな。そうしてくれ」

 俺は頷きで返事をし、俺は張り込みを始めた。


 そして約1週間朝昼晩と張り込みをするが、ドロボウは一回も姿を現さなかった。


「あぁー、仕事がドンドン溜まってくるーー」

「すまん」

「あ、ロイを責めたわけではないんだけど」

 1週間も家に籠りっぱなしなので、リックへの仕事がドンドン溜まるんだろう。

「……散歩、行くか?」

「いいの、お兄ちゃん?」

「俺と一緒なら別いいだろう」

 俺はみんなが気晴らしできるようにと俺を含め4人で散歩にいった。

「久しぶりの外ー」

「そうですね」

 シャミもリックの言葉に賛同する。リンもコクコク頷いている。

 俺はなるべく人が多いところを避けて、散歩をする……つもりだったが、人混みに遭遇してしまった。

「なんか人が多いところに来ちゃったね」

「そうだな。……帰るか?」

「もうちょっと散歩しようよ。ねー、シャミ」

「あ、は、はい」

 俺はこのやりとりを微笑みながら見ていると、

「ん?」

 どっかで嗅いだときのある匂いを感じた。

「どうしたの?」

 リンが聞いてきたが、俺は無視をして、その匂いの主を探し始めた。

 その匂いが誰のとは言うまでもないだろう。ドロボウのだ。

「あいつか?」

 俺はその匂いの悪魔と思われる人を見つけた。後姿で顔は見えないが、背中の真ん中ぐらいまでの茶髪だった。

 俺はその女の肩に手を置いた。

「ちょっといいか?」

 シャミ達が目に驚きの色を帯びていた。まあ、傍から見ればナンパしてるみたいだもんな。

 その女は俺を見、目を見開いた。どうやらビンゴのようだな。

「俺が誰だかわかるよな?」

「ま、まあ、ね」

「じゃあ、来てもらおうか」

 少しは抵抗すると思ったが、あっさりとしていた。

「よし、お前らもついて来いよ」

 俺はその女を連れて、商店街へと向かった。シャミ達は何が起こったかわかっていなかったぽいが、ちゃんと付いてきてくれた。


 少し歩き、俺たちご一行は商店街へと無事に着いた。

「おっちゃんいる?」

 俺は魚屋により、おっちゃんを呼んだ。

「ん、どうした?その女の子は?」

「それよりまず、みんな集めてきてもらっていい?」

「あ、ああ」

 おっちゃんは商店街のみんなを呼びに行った。余談だが魚屋のおっちゃんはこの商店街の会長的存在の人だ。

 俺は女を近くのイスに座らせた。

「あの、お兄ちゃん、この子は?」

「あとで説明する」

 しばらくすると、おっちゃんが商店街のみんなを連れて戻ってきた。

「で、一体なんなんだ?」

 俺は座っている女を指差し

「たぶん、こいつドロボウ」

 と、みんなに教えた。

「そう、なのか?」

 おっちゃんの言葉に女はコクリと頷いた。

「なんか、怒りにくいな」

 おっちゃんの言う通り、なんか責め立てにくい雰囲気だった。その女が俯き、シュンとなって明らかに反省の色を見せているのだ。

「あんた名前は?」

 俺は聞いた。いつまでも女とかこいつとかじゃ悪いからな。

「ミュウ」

 なんかポケモンにいたよな。

「種族は?」

「召喚」

 どこからともなく「まだいたのか」という声が聞こえてくる。

「なんでこんなことをしたんだ?」

 誰も聞かないので俺は次々と質問していく。

「私、親がいなくてね。でも、弟妹がいっぱいいるんだ」

「何人?」

「私入れて、8人」

 8人兄弟ね。そりゃ多いな。

「それで食べるものが無いから……こうやるしか」

「……今回が初めてか?」

「……うん」

 人間界でもありそうな話だな。

「働こうとは?」

「私を雇ってくれるところなんてなくて……」

 魔界も不景気だのなんだのって騒いでいるからな。どこも大変だな。

 さて、どうしたらいいものか。まあ、どういう処置を取るのかは商店街の人たちに任せるか。

「おっちゃん、どう……す……る?」

 俺が振り向き、みんなを見ると、そのには驚きの光景があった。

「そうか、あんたも大変だったんだな……」

 なんでだろう、みんなが泣いている。泣いてないのは俺だけの気がする。

「えっと、みん……な?」

 俺は戸惑っていると、八百屋のおっちゃんが

「みんな、見逃すことにしようや。この子は家族のために必死だったんだ!」

 と、涙を滝のように流しながらみんなに言った。みんなは「おう」とか「当たり前じゃないか」とか言っている。……そんなんでいいの?

 肉屋のおばちゃんが急に

「私の店でいいなら雇ってあげるよ」

 と、泣きながら言っていた。それを初めにいろんな人が「俺の店に来い」とか「私のところでもいいよ」とか言っていた。あれ、なんかみんなの意見が一致してきた。

 俺は困って、リックたちの方を見る。

「ロイ~、その子いい子だったね。ドロボウとかもうどうでもいいよね」

 リックが俺に泣きながら言ってくる。……ドロボウはどうでもよくはなくね?いい子なのは同意だけど。

 シャミもリンも泣いていた。……俺も泣いた方がいいかな?

「そうだ、ロイ。あの子雇ってあげようよ」

「え?」

「そうだよ、お兄ちゃん。雇ってあげよう」

 リンもウンウンと頷いている。

 この会話をみんなが聞いていたらしく

「ロイさんの所に雇ってもらうのが一番だ」

 とか、言っている。

「いいでしょ?」

 シャミが聞いてくる。

「俺は別にいいが」

 そう言った瞬間、周りがワーーーーッと言う歓声に包まれた。


 そうして、俺たちの所にまた悪魔が増えた。

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