ドロボウ
「ハァ~~~」
俺はでかいため息をついていた。
「あの説明をシャミ達にか……」
俺の手には4枚の紙がある。もちろん似顔絵が描いてあるやつなんだが。
「……ハァ~~~~~」
俺はさっきより深いため息をついた。
「ただいま」
「おかえり~。どこ行ってたの?」
「ちょっと、な」
言葉を濁す。
「すまん、みんなちょっと集まってもらっていいか?」
俺が声をかけるとみんなが集まってくる。
「あの、ドロボウの件なんだが、なんていうか……進展した……かな?」
「……進展したの?してないの?」
「……した」
リックが俺がなるべく言いたくないところを確実についてくる。
「どんなふうに?」
「まあ、説明する」
俺は商店街で聞いたことを少しも隠すことなく話した。もちろん、似顔絵も見せながら。
3人は驚きを隠せなかった。……当たり前だよな。急に濡れ衣を着せられたのだから。
「……一応、そういうことだ」
「そんなことが……」
「ああ。だから、これからお前らはこれが解決するまで外出しないでくれ」
「え?」
「買い物やなんやらは俺が全部やる」
「でも」
シャミは納得してないようだ。
「シャミ、しょうがないよ。ここはロイに任せな」
……なんかかっけーなこいつ。
「すまないな。犯人は俺が少しでも早く捕まえる」
俺は一言断り、再び商店街に向かった。
ひとまず俺は魚屋に向かう。
「おっちゃん、説明してきた」
「ああ、すまんな」
「で、さっそくで悪いんだが」
「また、盗まれたか?」
「いや、あの客いるだろ?」
「ああ」
俺はおっちゃんが指差すほうを見る。
「あの客、似顔絵に似てないか?」
俺は似顔絵とその客を交互に見比べる。似てるっていうか、本人だ。
「ちょっと行ってくる」
「すまんな」
俺は商品を選んでいるその客に近づく。
「ん?」
俺は踵を返し、魚屋へ戻って行った。
「どうした?」
「匂いが違った」
「そうか。じゃあ、この4枚の似顔絵はすべて外れか」
「そうだな」
なんとなく俺とおっちゃんの会話がぎこちない。
「ああ、そうだ。一つ頼みがあるんだが」
「なんだ?」
「夜も張り込むことにしたんだが、その時は他の3人と一緒にいたい。さすがに夜に1人の張り込みはきつすぎる」
「そうだな。そうしてくれ」
俺は頷きで返事をし、俺は張り込みを始めた。
そして約1週間朝昼晩と張り込みをするが、ドロボウは一回も姿を現さなかった。
「あぁー、仕事がドンドン溜まってくるーー」
「すまん」
「あ、ロイを責めたわけではないんだけど」
1週間も家に籠りっぱなしなので、リックへの仕事がドンドン溜まるんだろう。
「……散歩、行くか?」
「いいの、お兄ちゃん?」
「俺と一緒なら別いいだろう」
俺はみんなが気晴らしできるようにと俺を含め4人で散歩にいった。
「久しぶりの外ー」
「そうですね」
シャミもリックの言葉に賛同する。リンもコクコク頷いている。
俺はなるべく人が多いところを避けて、散歩をする……つもりだったが、人混みに遭遇してしまった。
「なんか人が多いところに来ちゃったね」
「そうだな。……帰るか?」
「もうちょっと散歩しようよ。ねー、シャミ」
「あ、は、はい」
俺はこのやりとりを微笑みながら見ていると、
「ん?」
どっかで嗅いだときのある匂いを感じた。
「どうしたの?」
リンが聞いてきたが、俺は無視をして、その匂いの主を探し始めた。
その匂いが誰のとは言うまでもないだろう。ドロボウのだ。
「あいつか?」
俺はその匂いの悪魔と思われる人を見つけた。後姿で顔は見えないが、背中の真ん中ぐらいまでの茶髪だった。
俺はその女の肩に手を置いた。
「ちょっといいか?」
シャミ達が目に驚きの色を帯びていた。まあ、傍から見ればナンパしてるみたいだもんな。
その女は俺を見、目を見開いた。どうやらビンゴのようだな。
「俺が誰だかわかるよな?」
「ま、まあ、ね」
「じゃあ、来てもらおうか」
少しは抵抗すると思ったが、あっさりとしていた。
「よし、お前らもついて来いよ」
俺はその女を連れて、商店街へと向かった。シャミ達は何が起こったかわかっていなかったぽいが、ちゃんと付いてきてくれた。
少し歩き、俺たちご一行は商店街へと無事に着いた。
「おっちゃんいる?」
俺は魚屋により、おっちゃんを呼んだ。
「ん、どうした?その女の子は?」
「それよりまず、みんな集めてきてもらっていい?」
「あ、ああ」
おっちゃんは商店街のみんなを呼びに行った。余談だが魚屋のおっちゃんはこの商店街の会長的存在の人だ。
俺は女を近くのイスに座らせた。
「あの、お兄ちゃん、この子は?」
「あとで説明する」
しばらくすると、おっちゃんが商店街のみんなを連れて戻ってきた。
「で、一体なんなんだ?」
俺は座っている女を指差し
「たぶん、こいつドロボウ」
と、みんなに教えた。
「そう、なのか?」
おっちゃんの言葉に女はコクリと頷いた。
「なんか、怒りにくいな」
おっちゃんの言う通り、なんか責め立てにくい雰囲気だった。その女が俯き、シュンとなって明らかに反省の色を見せているのだ。
「あんた名前は?」
俺は聞いた。いつまでも女とかこいつとかじゃ悪いからな。
「ミュウ」
なんかポケモンにいたよな。
「種族は?」
「召喚」
どこからともなく「まだいたのか」という声が聞こえてくる。
「なんでこんなことをしたんだ?」
誰も聞かないので俺は次々と質問していく。
「私、親がいなくてね。でも、弟妹がいっぱいいるんだ」
「何人?」
「私入れて、8人」
8人兄弟ね。そりゃ多いな。
「それで食べるものが無いから……こうやるしか」
「……今回が初めてか?」
「……うん」
人間界でもありそうな話だな。
「働こうとは?」
「私を雇ってくれるところなんてなくて……」
魔界も不景気だのなんだのって騒いでいるからな。どこも大変だな。
さて、どうしたらいいものか。まあ、どういう処置を取るのかは商店街の人たちに任せるか。
「おっちゃん、どう……す……る?」
俺が振り向き、みんなを見ると、そのには驚きの光景があった。
「そうか、あんたも大変だったんだな……」
なんでだろう、みんなが泣いている。泣いてないのは俺だけの気がする。
「えっと、みん……な?」
俺は戸惑っていると、八百屋のおっちゃんが
「みんな、見逃すことにしようや。この子は家族のために必死だったんだ!」
と、涙を滝のように流しながらみんなに言った。みんなは「おう」とか「当たり前じゃないか」とか言っている。……そんなんでいいの?
肉屋のおばちゃんが急に
「私の店でいいなら雇ってあげるよ」
と、泣きながら言っていた。それを初めにいろんな人が「俺の店に来い」とか「私のところでもいいよ」とか言っていた。あれ、なんかみんなの意見が一致してきた。
俺は困って、リックたちの方を見る。
「ロイ~、その子いい子だったね。ドロボウとかもうどうでもいいよね」
リックが俺に泣きながら言ってくる。……ドロボウはどうでもよくはなくね?いい子なのは同意だけど。
シャミもリンも泣いていた。……俺も泣いた方がいいかな?
「そうだ、ロイ。あの子雇ってあげようよ」
「え?」
「そうだよ、お兄ちゃん。雇ってあげよう」
リンもウンウンと頷いている。
この会話をみんなが聞いていたらしく
「ロイさんの所に雇ってもらうのが一番だ」
とか、言っている。
「いいでしょ?」
シャミが聞いてくる。
「俺は別にいいが」
そう言った瞬間、周りがワーーーーッと言う歓声に包まれた。
そうして、俺たちの所にまた悪魔が増えた。




