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悪魔達の生活  作者: 鍵宮 周
ちょっとした事件
31/80

散歩

 いつのまにか夜。いつのまにかというのは昼のゴタゴタの後寝たからだ。

「お兄ちゃん。起きてる?」

 俺がまだ寝てると思っているのかシャミがこちらに向かってくる。

「んー」

「ご飯できたからね」

「わかった」

 俺はソファーから体を起こしテーブルに行き、俺の定位置のイスに座った。

「ふぁ~~」

 俺は一つ大きな欠伸をした後、ふとリックと目があった。

 リックは口に人差し指を当て、ウインクをした。恐らく昼のことは秘密と言うことだろう。言う気はこれっぽっちも無いけどな。

「じゃ、食べよう」

 シャミのこの言葉でそれぞれが「いただきます」と言い、食べ始めた。


 飯を食い終わり、今は風呂に入っている。

「ハァ~~」

 大きなため息をする。意味なんてのはほとんど無いのだが。

「リックのあの行動はなんだったんだ」

 独り言をしてみる。もちろんなにも閃かないんだが。

 しばらく何も考えずボーッとしていると、

「ロイー、体洗っちゃった?」

 脱衣所からリックの声が聞こえて来た。

「まだだが」

「じゃあ、洗ってあげるよ!」

 バン!と勢いよく風呂の扉を開けた。

「ん」

「何よその反応。せっかくこんなにカワイイ子が背中を洗ってあげるって言ってるのに」

「ん」

「ここで脱ぐよ?」

「それはやめろ」

 リックがタオルを使ってうまく泡を立てている間に俺はリックに背中を向けて座る。

「フンフンフ~♪」

 リックは機嫌がいいらしく鼻歌を歌っている。

「機嫌いいな」

「そう?」

「ああ、どっからどうみてもな」

「やっぱり、昼の出来事があったからかな?」

「…………」

 俺は無言で答える。

 この後しばらく風呂場にリックの鼻歌が響いた。


 俺は風呂から上がった。リックは俺が上がったらすぐに風呂に入り、リンも一緒に入りに風呂場へ消えた。

「シャミは一緒に入らないのか?」

「うん、私は後で入る」

「そうか」

 俺のしゃべりがなんとなくぎこちない。なぜかは知らん。

「お兄ちゃん」

「なんだ?」

「昨日はありがとね」

「別いいさ」

「でも、私を助けに来たから左目……」

 俺の左目は昨日敵に斬られた。しかし、軽い傷のため失明とかの危険性はない。今は眼帯を付けて治療中だ。

「これくらい大丈夫さ。俺のいた人間界では弓矢の先に刺さっていた自分の目玉を食ったという、とてつもないやつもいたらしいからな」

「え、本当に!?」

 シャミは想像したのか少し嫌な顔をした。

「わからん。俺の生まれるよりもかなり前の話だからな」

「そうなんだ」

 俺とシャミはお互い離れていた時間を取り戻すように話をした。

 しばらくしたあと風呂の扉が開く音がして、

「シャミーー、風呂どうぞーー」

 リックの声が聞こえた。

「はーい」

 シャミはバスタオルとか着替えとかを準備するために自分たちの部屋に向かった。

「いやー、気持ちよかったー」

 リックは冷蔵庫から牛乳を出し、コップに注ぎ、飲んだ。いい飲みっぷりだな。

「ん、飲みたい?」

「いらん」

「リンは?」

「もらいます……」

「はいよ。このコップでいい?」

「うん」

 リンも牛乳をもらい、それを飲んだ。

「昨日の出来事が嘘みたいだな」

 俺は小さな声で呟いたつもりがリックに聞こえてたらしく

「そうだね。昨日は天使とかを殺してたりしていたからね」

「ああ、そうだな」

 俺たちは昨日のことを思い出していた。……あ、回想には行かないぞ。


 20分ほどでシャミは上がり、それから30分ほどボーッとしたあと、俺以外ベッドに入った。

「ロイは寝ないの?」

「ああ、眠くない」

「じゃあ、お休み~」

 今の『じゃあ』はどういう『じゃあ』なのだろうか?

「ああ、お休み」

 リックとリンはあっという間に寝たらしい。シャミは眠れないらしくしきりに寝返りを打っている。

「シャミ、起きてるか?」

「うん、なに?」

「ちょっと散歩行ってくる」

「わかりました。気を付けて」

 シャミは笑顔で返してくれた。

 俺は夜の町へと出ていった。


 この夜の外出にはある目的があった。

「すいません、お待たせしました」

「ううん、私も今来たところだから」

 それはこの時間帯にユミさんと待ち合わせをしていたのだ。

 ユミさんはベンチに座っていた。俺は横に座った。

「どうしたんですか?」

「ん、無性に会いたくなってね」

「何言ってるんですか、待ち合わせしたのは昨日でしょう?」

 俺がそう突っ込むとユミさんはフフッと上品に笑った。

「昨日ゆっくり話せなかったからね」

「なるほど」

 昨日は戦いが終わった後、片付けだのなんだのでゆっくり話すことができなかったのだ。

「そういえば、契約おめでとう」

「ありがとうございます」

 俺は苦笑しながら答える。

「ユミさんはしてないんでしたっけ?」

「まあね。あの悪魔は堅苦しくてする気が起きないのよ」

 あの悪魔とは前に一目見たユミさんに憑いている悪魔のことだろう。

「悪魔もいろいろと大変なんですね」

「そうなのよ」

 ユミさんは苦笑しながら答えてくれた。

「で、考えてくれた?」

「何がですか?」

「私との結婚の件」

「そんなこと一回も聞いてないんですが」

 まず付き合ってもいない。

「そう?」

「そうです」

「じゃあ、気のせいかしら?」

「はい、気のせいです」

「じゃあ、今その話をしたというわけで結婚を」

「しませんよ」

 ユミさんと話をするときはほとんどペースを持って行かれてしまう。

「……なんでそんなに結婚、結婚言うんですか?」

「だって、誰でも好きな人とは結婚したいでしょう?」

「まあ、そうだと思いますが」

 俺はいつまでも話のペースを持って行かれていた。

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