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悪魔達の生活  作者: 鍵宮 周
ちょっとした事件
29/80

元の生活

 魔王城が攻められると言う、魔界史上今までなかった大事件の次の日。

「……ん」

 俺はベッドの上で目を覚ました。太陽がすでに高い位置にある。

「寝過ごしたか?」

 枕元にある時計を見てみる。10時。ちょっと微妙な時間だ。

「ん、ん~~~~」

 ベッドから体を起こし、大きく伸びをした。久々に気持ちがいい目覚めだ。

 俺はそのままの体勢から右を見る。昨日契約を交わした悪魔、シャミが寝ている。久しぶりに見たな、シャミの寝顔。うん、カワユス。そして、左を見る。そこにはリックがへそを出して幸せそう(逆に言うとアホ顔)に寝ていた。

「風邪ひくぞ」

 俺は毛布をしっかりとリックにかけてあげた。そして、もう一人の悪魔、リンもそこに……いなかった。

「お、リン起きてたのか」

 俺はシャミを起こさないように慎重にベッドから降りながら言った。リンはソファーの上で体育座りの要領で両膝をかかえながらテレビを見ていた。

「あ、ロイさん、おはようございます」

「おはよう」

 俺はリンの隣に座った。

「ロイさん……寝癖ひどいですよ」

「そういうリンもけっこうひどいぞ」

 お互い寝癖がひどかった。昨日髪を乾かして寝なかったのが原因だ。

「早く直した方がいいですよ。シャミさんに嫌われる……」

「……ハハッ、それもそうだな。よし、リン、寝癖直しに行くぞ」

「え、私も……?」

「そうだ、行くぞ」

 俺はリンを連れ洗面所に向かった。


 寝癖を直すと言っても水をつけるだけなのだが。

「直らねぇ」

 今日の寝癖はすぐに直ってはくれなかった。水をどれだけつけてもピョンっとまたはねてしまう。苦戦しているのは俺だけのようでリンはすでに終わっており、俺の戦いを観察している。

「ちょっと待ってて」

 リンは洗面所を出て行った。しばらくするとドライヤーを持って戻ってきた。

「はい……」

「ありがとな」

 俺はドライヤーを受け取り、それを駆使しながらなんとか寝癖を直した。

「よしっ、終了!」

 俺はドライヤーをリンに返した。リンはドライヤーを戻しに洗面所を出て行った。洗面所にいる流れで顔を洗い、リビングに戻った。リンはすでに戻っており、さきほどと同じ体制でテレビを見ていた。

「そういえば、お前何時ごろ起きたんだ?」

「8時」

 俺の2時間も早く起きていたか。

「なんで起こさなかったんだ?」

「疲れていると思って……起こした方がよかった?」

「いや、大丈夫だ」

 正直まだ寝てたい。欠伸も出る。

「……飯でも作るか」

「私が作る……」

 リンがソファーから降りた。

「いいって、たまにはゆっくりしていなさい」

「でも、働くのが私たちの仕事……」

 それもそうだな。でもこのまま任せるのもちょっとな……。

「じゃあ、一緒に作るか」

「うん、わかった……」

 俺とリンは朝食兼昼食を作ることにした。


 メニューを発表しよう。普通の目玉焼きだ。目玉を焼いたわけじゃないからな。

「二人も起こすか」

 皿を並べたりするのをリンに任せ、俺はシャミとリックを起こしに行った。

「おい、起きろ」

 俺はそれぞれの体を叩き、起こした。

「あ、お兄ちゃん。おはよう」

 シャミはすぐに起きてきた。

「おはよう。飯作ってるから顔洗ってこい」

「わかった」

 シャミは顔を洗いに洗面所に消えて行った。残りのリックはと言うと。

「もうちょっと……」

「もう11時だ。十分寝ただろ」

「じゃあ……おはようのキスしてくれたら起きる」

「……なにバカなこと言ってるんだ。早く起きろ」

 俺はリックの毛布を剥ぎとる。

「……寒い」

「早く起きろよ」

 俺はリックに一声かけ、再びリンの所へ向かった。

「あと何すればいい?」

「じゃあ、目玉焼き並べて……」

「おう」

 まだ並べてなかったらしい。俺は皿を並べた。並べている途中リックかむくりと起き、洗面所に向かっていった。「シャミー、顔洗って~」とか言っていたことも添えておこう。

 ご飯が盛られている茶碗を並べて終えると同時にシャミとリックが戻ってきた。

「じゃ、食べるか」

 それぞれが「いただきます」と言い、食べ始めた。

「……あ」

 リックが何かに気づいたように声を上げた。

「ん、どうした?」

「牛乳が無かった」

 リックは冷蔵庫に行き、牛乳を探した。しかし、無かったらしく、

「リンー、牛乳あるー?」

 と、リンに聞いていた。

「あ、たぶん奥に」

 リンも牛乳を探しに、冷蔵庫に歩いて言った。リックは探すのを邪魔してはいけないと思ったらしく、テーブルに戻ってくる。

「朝は牛乳飲まないとねー」

「昼だけどな」

 なんて無駄口を叩いていると、

「あの、すいません……無かったです」

 と、申し訳なさそうにリンが言った。

「えー、無いのー?」

「文句あるなら自分の胸から出したらいいだろ」

「ロイ、それは私に母乳を出せと言ってるんだよね?」

「まあ、そういうことじゃね」

「出るわけないでしょ」

 そりゃそうだ。

「それとも、出すためにヤッちゃう?」

「ブッ」

 危うく口の中にあったものを出しそうになった。横を見るとシャミも同じことになっている。

「飯食ってる時にそういうこと言うな」

「言い出したのロイじゃん」

「あのな~」

「まあ、一回ぐらい牛乳飲まなくても大丈夫なんだけど」

「ああ、それ以上お前に胸がでかくなられても困るしな」

「……それ、どういうこと?」

「ご想像に任せる」

 少し下ネタを挟んでしまったが、ちゃんと残さずに飯を食べた。ついでに「俺が胸がでかくなられても困る」と言ったときにシャミが自分の胸を見ながら小さな声で「私も牛乳飲もうかな」と言っていたことを添えておくことにしよう。

 俺だけがご飯を食べ終えていたので、みんなの会話を聞いていたら

「ロイ、なんでニヤニヤしてるの?」

 と、言われた。

「ニヤニヤしてたか?」

「うん。すこし気持ち悪かった」

「悪かったな」

 俺はそんなことしてた覚えはないのだが、周りから言われたということはニヤニヤしていたのであろう。

 で、なぜニヤニヤしてたかって?そんなの一つしかないだろう。俺はシャミが戻って来たこの、いつも通りの生活が嬉しかったのだ。

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