奪還
「……ハァ……ハァ」
「なかなかの腕前だが、ワシにはまだまだ勝てんぞ」
ロイが7階に着いたとき、リックは苦戦していた。
「「「オラッ!」」」
3人ほどの悪魔が男に向かって斬りかかる。
「太刀筋はいいが、甘いっ!」
男は一太刀一太刀冷静に捌き、大剣を薙ぎ払うようにして悪魔を斬った。
「この頃の悪魔は手ごたえがないな」
「悪かったね」
「いや、お前はなかなかの腕だ。まあ、相手が悪かっただけだ」
「……そう」
リックの体力はだいぶキツくなっている。周りの敵にも気を配らないといけないため、神経も使い、体力の消耗が激しい。
「さあ、そろそろ白黒つけるか」
「そうだね」
男は大剣を振りかぶる。リックはここがチャンスとばかりに男の喉元目掛けて槍を突き刺す。
「っ!?」
さっきまで両手で大剣を持っていたが、男は今、槍を手で掴んでいた。そして、大剣は片手で振りかぶった状態のままだ。
「フンッ!」
男が大剣を振り下ろした。リックは槍を手放し、横にダイブし避けた。
「賢い判断だな」
男はそう言うと槍を半分に折った。
「……面倒だ」
男は唐突に言った。そして、男の目線はリックの後ろに注がれていた。
「ん?」
リックが振り向くとそこには、大人数の悪魔がいた。
「小娘、大丈夫か?」
一人の悪魔が声をかけてきた。
「たぶん大丈夫」
「そうか」
そして、みんなそれぞれの武器を取り出し、構えた。
「それでは、俺も援軍を呼ばせてもらう」
男がそう言うとどこからともなく天使が現れた。
「……忍者か」
リックが小さな声でツッコミを入れた。
「行くぞ!!」
リックに声をかけた悪魔が言うと
「「「おおーーーー!!!」」」
周りの悪魔が答え、両軍ぶつかっていった。
リンの所では銃撃戦になっていた。
「くそっ!あたらねぇ!」
隣に陣取っている悪魔がつぶやいた。
天使は窓の外で飛んでいるため、弾がなかなか当たらないのだ。
逆に天使は外を飛び回り、矢の先に火薬を仕込み、爆発させるなどの工夫をしているため、魔界軍への被害が多い。
その調子で銃撃戦を続けていると
「そろそろキリをつけるぞ!突撃っ!」
リーダーのような天使が号令をかけると、天使が室内に侵入してくる。
「囲め!この悪魔どもは接近戦に弱いぞ!」
リ-ダーが言うと、天使が囲んできた。そして、攻撃を仕掛けてきた。
あちらこちらで断末魔の叫びが聞こえる。銃しか持っていないため、接近されると弱い。
しかし、リンは拳銃を2丁持って冷静に弾を命中させていく。
「なんだ、この小娘!」
リンを囲む天使の数が増える。しかし、リンは焦らない。確実に弾を当てる。弾を尽きたら素早くリロードを繰り返す。
「……ロイさん、まだかな?」
時間的にロイがシャミを連れて、戻ってきてもおかしくない時間だ。
ロイのことを少し気になりながらも、リンは銃を撃ち続けていた。
「どうしようかな……」
ロイは迷っていた。迷う時間は無いのだが、この天使の数ではしょうがなかった。
「や、やめて!!」
唐突に声が聞こえた。女悪魔の声だ。なんか危機的状況らしい。……急いで助けなければ。
「お、いいもん見っけ」
ロイは近くに手榴弾が落ちているのに気づいた。
「ホイっと」
ピンを抜き、投げる。
そして爆発。うまく中心に投げたため、けっこうの数の天使が倒れた。
「悪魔がいるぞ!」
「気づくのが遅い!」
ロイは剣で次から次へと敵を斬る。
「囲め!敵は所詮1人だ」
天使がロイを囲むが、ロイは両手に持っている剣で切り捨てて行く。
「くたばれっ!」
遠くから天使が矢を放ってきた。
「くっ!」
かろうじて避ける。しかし、その矢に気を取られ、他の天使が接近しているのに気づかなかった。
「死ね!!」
天使は剣で斬りつけてきた。
「っ!」
ロイはその剣を避けきれなかった。左目が斬られた。左目を開けられない。
「くそ!」
その天使を切り捨てる。そして、落ちていた銃を拾い、残りの天使を片付けていく。
「…ハァ」
思ったよりすぐ終わった。最初の手榴弾が良かったみたいだ。
廊下の一角に固まっていた女悪魔に近づいていく。
「大丈夫か」
「……は、はい」
「よかった。あんたらは……その、誰かに憑いている悪魔なのか?」
「いえ、私たちはまだ見習いのメイド悪魔です」
メイド悪魔?いわゆるお手伝い悪魔だよな?まだまだ知らないことがたくさんだな。
「あの、目が……」
「……気にするな。大丈夫だ。…それより、シャミという悪魔は知らないか?」
「あ、シャミさんならそこの部屋にまだいるはずです」
「ありがとう」
ロイは指差された部屋に向かおうとすると、手を掴まれた。
「あの、私たちは……?」
「ひとまずここにいてくれ、すぐ他の悪魔が来る」
そう言うと同時に、他の悪魔がやってきた。
そして、ロイは指差された部屋に入っていった。いざという時のために銃を持ちながら。
「だ、誰?」
「シャミ、か?」
「お、お兄ちゃん!?」
「助けに来たぜ」
シャミはロイに抱きついた。
「大丈夫だったか?」
「うん」
「そうか、よかった」
「でも、お兄ちゃん。その目……」
「大丈夫だ、気にするな」
シャミのためならこれぐらいの痛み、どうってことはないさ。
「よし、行くぞ」
「……どこに?」
「リンとリックの所だ。多少危ないところにいるからな」
「うん、わかった」
シャミは扉付近に落ちていた弓矢のセットを拾い、装備した。
「使えるのか?」
「自分は自分で守らないと」
「そうか、じゃあ、行くぞ」
ロイとシャミはリンとリックのところに向かった。
ひとまずシャミ救出のところまで行きました。
受験などがありなかなか更新することができませんでした。




