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悪魔達の生活  作者: 鍵宮 周
シャミの消失
20/80

消失

 依頼で街についてから今日で5日目だ。魔王からは2日3日と言われていたがそのあとの手紙で1日1日増えていき、ついに5日目に突入した。今日以降は追加されないので今日が最終日だと思う。報酬はたっぷりらしい。楽しみだ。

 さて、今日もリックと協力しながら片付けを始めるとするか。ちなみに言うと、俺はすでに3日目あたりからヘトヘトだ。リックは元気いっぱいっていう感じだけどな。




「終わった。ついに終わった」

 俺は依頼達成の余韻に浸っていた。リックは荷造りをしてもらっている。率先して「やる」というのでその言葉に甘えさせてもらった。

 今はすでに夜だ。

 ちなみに街は瓦礫がほとんどなくなっている。俺たち以外にも悪魔がぞろぞろとやってきて、片付けをしたからである。やっぱり協力って大事だな。

「おまたせ」

 リックが帰ってきた。

「よし、帰るか」

 俺たちは家に帰ることにした。ここからの交通事情を考えると家に着くのは明日の朝だろうな。それまで俺の体力は持つのだろうか。さて、シャミとリンは元気にしてるかな。5日しか離れてないのにこれは心配しすぎかな。まあ、そんなことはないだろう。





 ついに家の近くまでやってきた。人間界のような電車は止まっていたのでここまでほとんど歩いてきた。俺は当たり前だが、リックまでヘトヘトになっている。時々「もう歩きたくない~」とかつぶやいている。おぶったりしてもいいのだが俺の体力を考えると無理だ。自分の体力をこんなに恨めしく思ったことはない。

「……もうちょっとだ」

 家が見えたタイミングでリックが言った。そして、リックは急に走り出した。どこにそんな体力があるんだ。俺にも分けてほしい。俺もちょっと早足にしてその後を追いかけた。

 今の時刻は到着予定時間より少し早い。もしかしたらまだ寝ているのだろうか?シャミとリンが笑顔で「おかえり~」と言ってもらいたい願望もある。そうなればいいのだが。

 玄関の前でリックが俺を待ってくれていた。俺が合流するとリックが玄関を開け、中に入っていった。約6日ぶりの帰宅だ。大して離れていたわけでもないのにすごい懐かしい感じがする。わかるだろう?

「「ただいま~」」

 もしかしたら寝ているかもしれないのに俺たちは普通の声の大きさで言ってしまった。やばい、おこしてしまったであろうか。

 俺は靴を脱ぎソファーに寝るためにソファーの方に歩いていくと、リンが

「ロ、ロイさん、リックさん、えと、た、大変です!」

 と、言ってきた。こんなに焦っているリンは初めて見た。いっつもおとなしいリンしか見ていないためなんか変な感じがする。

「ど、どうした」

「えと、あの、えっと……」

「まず落ち着いて、深呼吸深呼吸」

 リックが助け舟を出してくれた。リンは深呼吸をしたあとに言った。

「シャ、シャミさんがいなくなりました!」

「「ハァ!?」」

 俺とリックの声がきれいにユニゾンした。



「ど、どういうことだ?」

「わかりません……」

 リンはソファーに座り俯いている。俺とリックはいまだに状況を飲み込めていない。リンは急に「あ!?」と何かを思い出したように言い、

「そういえば、朝起きたらテーブルの上にこれが…」

「そういうことは早く言ってくれ」

 俺はそういいながらリンが出した手紙を手に取り、中を見た。その内容は

『急にいなくなってしまいすいません。お兄ちゃんへの依頼と一緒に来た私への手紙にはこう書いてありました。「これからお前は新しく転生される悪魔に憑いてもらう。だからお前は、今憑いている悪魔にしっかりお礼を言ってから魔王城に来い。城に来る期限はOOだ。時間は11時までだ。」なので、私はお兄ちゃんたちと別れなければいけません。こんな形でいなくなってしまう私を許してください。ロイさん、リックさん、リンちゃん短い間でしたがありがとうございました。』

 泣きながら書いていたのか、手紙のところところが濡れていた。

 城に来る期限はなんと今日だ。時間も走ればぎりぎり間に合うかもしれない。

 俺はこんな別れ方に納得ができないのか、それとも、シャミを取り返すつもりだったのかは知らないが、ソファーから立ち上がっていた。

「ロイ、どこ行くの」

「シャミの所」

「それは無理だよ」

「なんでだ」

「魔王様の命令は絶対。それがどんな偉い悪魔であってもその命令は覆らない」

「そんなん知らん。俺は行く」

「駄目だよ。行っても意味ないよ」

「例え意味がなくたって俺はシャミのところに行く」

「自分のことばっかり考えないで、シャミがこの家を出るときの気持ちも考えてよ!!」

 リックの声が怒気帯びていた。こんなリックを俺は初めて見た。いつも笑っているリックとはかけ離れすぎている。リックは俺を落ち着かせるためかソファーから立ち上がり、俺の両肩に手を置いた。そして、俺に言い聞かせるように言った。

「シャミだってこの家を出たくて出て行ったわけじゃないんだよ。きっと、いつまでもここに居たかったと思うよ。でも、魔王様からの命令じゃ……しょうが…ないよ」

「じゃあ、どうすればいいんだよ!!!」

 俺はリックの胸倉をつかんでいた。男なのに情けないって?そんなのわかっているさ。リンが困っている顔でこちらを見ているがそんなの目に入らない。

「ここにおとなしくしてろってか!シャミなんていうやつは忘れてまた新しい悪魔でも捕まえてきて、新しい生活でもしてろってか!!!」

「そ、それは……」

 リックは悔しいのか下唇を噛んでいた。涙目にもなっていた気がする。

「す、すまん…」

 俺はリックを離した。俺は自分の無力さにむかついていた。魔王の命令は絶対?ふざけんなよ。個人の自由は完璧に無視ってか。はっ、呆れるを通り過ぎて笑えるぜ。いつの時代の独裁だ。

「くそっ!どうすればいいんだよ」

「……もしかしたら、一つだけ方法があるかも」

「なんだと」

 なんだ、とっとと言え。俺はその方法に賭けるしかないんだ。

「契約をすれば……」

「契約だと」

「あ、契約ていうのは」

「一生その悪魔に憑くということだろ」

 すでにユミさんから聞いていたからな。

「う、うん」

「で、どうするんだ?」

「え?」

「どうやって契約すればいいんだよ!」

「その方法は…………」


俺は契約の方法を聞いた後すぐに外に出て走っていった。

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