新しい依頼
多少3・11に似た内容が入っております
今日もいつもと変わりない朝を迎えていた。
そこからは家でのんびりと過ごしていた。親がそこにいたら本気で怒りそうな感じでだらけていた。今日もゆっくりできるな、とか考えていたら
カン、カン
ドアが叩かれる音が家の中に響いた。客が来たときは俺が出て行くことにしているので俺はソファーから起き上がり、ドアの方に歩いていった。
ドアを開けると見たときあるような制服を着た宅配の人がいた。
「魔王城から届け物です」
「あ、どうも」
俺に小さいダンボールを渡し、宅配の人は帰っていった。
俺はダンボールをテーブルの上に乗せ、開けた。
「お兄ちゃん、何入ってた?」
「ん、ああ、手紙」
手紙が入っているだろう封筒にはわかりやすく大きな文字で『依頼』と書いてあった。俺は封筒をあけ、手紙を出し、何が書いてあるかを見た。
「ロイ、なんの依頼?」
いつのまにかリックが近くに来ていた。声かけられるまで気づかなかった。さすがリック、といったところであろうか。
「じゃあ、読むぞ。えーと『昨日ニュースでやってたけど、街が天使の攻撃でほぼ壊滅しちゃったのよ。そしてその街はロイの町の近くだから、修復作業の依頼出すね~。修復作業って言っても瓦礫の片づけね。恐らく2日3日は泊まりだから。あと、これが届いたらすぐ行くこと。じゃあ、よろ☆。P.S一人だと大変だと思うからもう一人連れて行ってもいいよ。』……なんだこれ。魔王軽いな、おい」
「まあ、魔王様だからね~」
リックがやれやれとばかりに教えてくれた。
「誰、連れて行くの?」
いつのまにかリンも近くに来ていた。こいつらは忍者の血でも入っているのか?ついでにシャミはと言うと、ソファーにひざ立ちして背もたれ越しからこちらを見ている。
「たぶん、力作業になるからリックを連れてく」
「わかった、準備してくるね」
なんの準備だか知らんがリックは自分の着替える部屋に向かっていった。動きやすい服にでも着替えるのだろう。……あれ、ダンボールにまだ手紙が入っている。手に取り見てみるとシャミ宛てなのがわかった。
「シャミ、お前宛ての手紙だ」
「え、私に?うん、わかった、ありがとう。あ、そういえば、お兄ちゃんとリックさんは少しの間家にいないんですよね。わかりました」
「留守番、しっかりしてるから。ロイさんは心配しなくても大丈夫」
しょうがないがシャミとリンとは少し会えなくなってしまう。なんか、寂しいよな。ちなみにリンは最初俺のことを「ご主人様」とか呼んでいたが、俺が「呼ぶならロイさんて呼んでくれ」と言ったため、リンは俺のことを「ロイさん」と呼んでいる。別に「ロイくん」とか呼んでもらっても構わないが、見た目が明らかに幼いので気が進まなかったのだ。
「おまたせ、じゃあ、さっそく行こうか」
俺たちはさっそく依頼をこなすため家を出た。
「これは……ひどいな」
「そうだね……」
その街はほぼ瓦礫しかなかった。天使がきれいに壊していったというわけだ。すでに依頼を受けたと思われる悪魔達が瓦礫の片づけをしていた。
「俺達もするか」
「うん」
俺達は近くの民家があったと思われる場所の瓦礫から片付けることにした。
やってみるとわかるのだが瓦礫を片付けるのは相当の重労働だ。災害地に派遣される自衛隊のようだ。しかも、自衛隊のような大型機がないので、俺達は確実にひとつひとつ片付けていくしかないのだ。まあ、悪魔だから力があるからいいんだけどね。あと数も多いし
リックと協力して瓦礫を片付けていると男の悪魔とその子供と思われる男の子の悪魔が俺達のほうに近づいてきた。
「お疲れ様です」
声をかけられた。俺は会釈を返した。
「ここ私の家でして、妻と娘がもしかしたら取り残されているかと思いまして……」
この街が襲われたのは夜明け前でほとんどの人が避難できなかったらしい。ようするにほとんどの人が生き埋め状態というわけだ。くそ、3・11を思い出してしまった。魔界からなので届くかわからないがここから被害者へご冥福を祈らせてもらう。
この男と息子は夜明け前から昆虫採取に行っていたらしい。人間界で言うカブトムシとかそこらへんだろう。男の子はずっと目に涙を浮かべながら俯いていた。
俺が瓦礫の片づけを再開してすぐだった。
「っ!?」
悪魔の手が見えた。その手は土ぼこりで汚れていた。俺はリックを呼び、その周辺の瓦礫を片付けた。すると、女の悪魔が女の子を抱いている形で倒れていた。すかさず脈拍の確認。……無い。すでに亡くなっているようだ。俺はこちらを見ていた親子を呼んだ。
「お母さん…」
男の子が泣き崩れた。無理も無いだろう。男も泣いていた。俺が亡くなっている2人を瓦礫の中から出してあげた。リックは近くの悪魔を呼びに行っていた。恐らく安置所に連れて行くように頼んでいるのだろう。すぐに自衛隊のような人たちが来て、2人を連れて行った。男は俺に向かって
「妻と娘を見つけてくれて、ありがとうございました」
と、俺に言い残し、自衛隊のような人たちの後を追いかけていった。男の子も俺達にペコリと深い一礼をしたあと、お父さんの後を追いかけていった。
「助けて…あげたかったね」
「そうだな」
俺達は近くにいた悪魔に残りの瓦礫を頼み、人命救助のために新しい瓦礫の山に取り掛かった。
3・11でなくなった方々に心からご冥福をお祈りいたします




