家にて
どれくらい固まっていただろう。いや、動けなかったと言った方がいいかもしれない。しかし、これも当たり前のことかもしれない。あんな美人なお嬢様にキス、おまけに口に直接されたら仕方ないことだと思う。むしろ、そう思いたい。しかし、唇柔らかったな。
「帰る…か」
俺はフワフワとした気持ちのまま、帰ることにした。
「ただいまー」
無事事故にあうこともなく帰宅。
「おかえりー」
リックがソファーから顔を出し言ってくれた。
「あれ、シャミは」
「シャミはリンと一緒にお買い物ー」
そう言うと、またテレビを見始めた。と、思ったら
「そういえば、ロイまだ朝食まだでしょ。今温めるからちょっと待ってて」
と言い、ソファーから降り、冷蔵庫の元へと向かっていった。それぐらい自分でしてもいいのだが。手際よくリックは飯を温め終えてくれた。俺は一人悲しく朝食をとることにした。
今の時間は11時30分を少し回った時だ。いまだにシャミとリンは帰ってこない。なんか、心配になってきた。リックは心配している欠片もない。てか、寝ている。なんか途中で俺の膝を枕にし始めた。普通膝枕ってものは男がしてもらう物だと俺は思っている。いや、嬉しいよ。こんな美女が俺の膝の上で寝てるとか人間の時には考えもしなかったからな。
カン、カン。
ドアがたたかれた。どうやら誰かが来たようだ。魔界では人間界のように変な業者などがいないため来客は大体町の人や宅配の人ぐらいだ。
俺はリックが起きないように膝から頭を降ろし、俺はドアの元へ向かった。
「あーい」
と、コンビニのバイトのやる気のないような声で出て行った。そこには、大きな荷物を持ったシャミとリンがいた。
「あ、ただいまー」
「お、お帰り。なんだその荷物の量は」
「いろいろだよ」
「いろいろって。まあ、早く家に入れ。重いだろうからな」
俺は重い荷物を持って少しフラフラしているリンの荷物を持ち、家の中に入っていった。しかし、重いな。玄関から少し歩いただけでも大変だったからな。何が入っているんだ、これ。
「あれ、リックさんは?」
「そこで寝てる」
俺はソファーを指をさしながらシャミに教えた。リンはと言うと、リックに毛布を持ってきていた。なんていい子だ。健気や。
「そういえば、この荷物には何が入ってるんだ?」
荷物はダンボールであったため、中身は見えない。あれだけ重かったのだから大きいものでも入っているのだろうか。でも、ダンボール自体はそれほど大きくないしな。
「ん、これだよー」
ドラえもんが道具を出すような勢いでダンボールの中の荷物を出した。そこには……なんだ?見たときもない物を出した。なんだそれ、光線銃かなんかか?
「ちがうよー」
シャミは笑いながら言った。じゃあ、なんなんだ。
「これは……なんて説明すればいいのかな?まあ、とにかく見てて」
シャミは光線銃みたいなのを持って家の中を見回した後、ベットに向かって歩いていき、その光線銃をベットに向けて構え、案の定撃った。そしたら、なんと、ベットが大きくなったではないか。なるほど、それは光線銃ではなくビッグライトだったのか。
「何、ビッグライトって?」
「いや、気にしなくていい。で、それは一体なんの銃だ」
「今見てもらったとおり、家具とかを大きくするものだよ。家に住む悪魔が4人になるとこれを使ってある決まった家具を大きくしなきゃいけないんだよ」
なるほど。てことは、やっぱりこれからもベットでみんなで寝ないといけないのか。別に嫌じゃないぞ。普通に嬉しいからな。
そのあとシャミは家の決まった家具とやらにそのライトを当てていた。何に対して撃ったのかは俺は見ていないのでわからない。リンと昼食を作っていたからな。
午後はだらだらと過ごしていた。テレビを見たり、リックと依頼を片付けてきたり、リンと洗濯物を片付けたりしていた。ん、なんかひとつだらだらしてないものがある気がするが別にいいか。
そして、今は夕食をすでに食べ終え、風呂にも入りあとは寝るだけの状況になっている。俺はすでに歯も磨き終えているが、3人は今磨いているため、俺は一人でソファーに座りテレビを見ていた。今の時間帯はニュースしかやっていないため、俺は見たくもないニュースを見ている。なんか、どっかの街が天使の攻撃により壊滅的被害を受けたとかいうニュースをやっていた。
「おまたせ、お兄ちゃん。じゃあ、寝よう」
シャミが俺に言ってきたのでテレビを消し、寝ることにした。
「あーあ、ロイと離れ離れになっちゃった」
こう言うのはリックであり、それはベットに寝るのが4人になったから誰か一人は俺と離れるのは当たり前のことだ。今のベットに寝ている並び順は壁側からリック・リン・俺・シャミとなっている。
「別にいいだろ。んじゃあ、お休み」
俺はこう言うのと同時に電気を消した。そして普通に仰向けになった。しばらく眠れずに起きていると左腕の二の腕あたりの服がふとつかまれた。左側にはリンがいる。シャミとリックはすでに寝ているため、俺は小声でリンに話しかけた。
「どうした」
「暗いの苦手」
声が震えていた。相当怖いようだ。話を聞いてみると、前のところで何かミスするたびに叩かれるか暗いところにかなり長い間閉じ込められていたらしい。昨日も部屋を暗くしていたが、俺がテレビをつけていたためなんとか大丈夫だったようだ。
「大丈夫だ。俺がついてるさ」
俺はなるべくやさしい声を出し、リンの方向へと体勢を変え、リンをやさしく抱きしめた。最初は体ごと震えていたが、安心したのか震えはとまり、俺の腕の中で眠りについた。
俺もリンを抱く形でその後すぐ寝た。




