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悪魔達の生活  作者: 鍵宮 周
日常
16/80

また増えた同居人

 シャミとの沈黙が続く。別に苦にはならないが、なんとなく変な空気が流れていた。

「あがったよー」

 リックの声が聞こえてきた。風呂場のほうを見るとバスタオルを頭にかけ、出てきていた。一緒に入るというのは本当にそのままの意味だったようだ。

「シャミ、この子になんか食べ物を出してあげて」

「わかりました」

 シャミは台所の方に歩いていった。

「おっと、飲み物も出さないとね」

 リックはそう言い冷蔵庫のほうに向かっていった。

「…………」

 女の子はうつむき立ち尽くしている。なぜかたまに俺のほうをちらちら見てくる。気になるので、俺が目を合わせようと女の子の方を見ると、ビクッ!っと過剰反応して、再びうつむいてしまう。何をしたいんだろうな。それとも何か言いたいことでもあるのか?

「こっちおいで」

 と、シャミが呼ぶと、女の子はテーブルに向かっていった。俺も昼は寝ていたので食べていないが腹は減っていない。てか、食欲がない。

 女の子は席に着くと最初は遠慮していたが、食べ始めた。相当腹が減っていたためか、かなりいい食べっぷりだ。俺は飲み物を出すために冷蔵庫に行き、水を出した。俺はそこでふと思い、その子に聞いた。

「お前、名前は?」

「……」

「ああ、飲み込んでからでいい」

 すこし経って、飲み込み

「……リン」

 いまいち聞こえなかったが「リン」でいいんだよな?

「リンちゃん、ですね」

「よろしくね」

 この機会だいろいろ聞いてみよう。

「じゃあ、リン。お前、森にどれくらいいた?」

「……たぶん5日」

 俺たちが会って比較的すぐ追い出されたのか。

「その間飯は食っていたよな?」

「少し」

 しっかりと聞かないと聞き逃してしまうような音量で答えてくれる。

「飲み物は?」

「少し」

 これまた小さい声だ。

「じゃあ、なんだ。五日間ほとんど飲まず食わずだったのか?」

「……そう」

 おいおい、大丈夫だったのか。相当きついぞ。俺は耐えられないかもしれん。

「私、こういうの慣れてるから」

「慣れてるって?」

 俺が聞く前にシャミが聞いていた。

「前のご主人様の時は一週間以上ご飯抜きとか当たり前」

「えっ!?」

 俺でもさすがにショックを隠せなかった。一週間以上が当たり前だと?あのクソ悪魔には腹が立ってばかりだ。あの日から血圧は何回上がっただろうか。すまないな、血管。

「あと種族の関係上大丈夫」

「なんの種族だ」

「エルフ」

 ……エルフ?エルフって、悪魔だったか?

「エルフは悪魔じゃないよ。でも魔王様が『エルフっていいよね?じゃあ、悪魔にしてみようかな?』とか言って、エルフの人に協力してもらって悪魔にしたんだよ」

「そんな簡単に悪魔にできるのか?」

「あの、転生機を使えばできるらしいよ。ちょっと面倒くさい作業があるらしいけど」

 シャミが説明してくれた。うむ、そんなことができるのか。

「話元に戻していいかな?」

 リックが言った。そうだな少し、脱線してしまった。

「……あの」

「あ、飯食うの邪魔しちまったな。いいぞ、食って」

 俺がそう言うのと同じタイミングで勢いよく食べ始めた。やはり、いい食べっぷりだな。見ているだけでこっちまで腹いっぱいになってくる。しばらくの間俺たち3人はリンの食事風景を見ていた。


 4人になるとやっぱり今までとは違うよな。少し家が狭くなったみたいだ。今はみんなでテレビを見ている。

「…………」

 なぜだろう。リンがソファーに座らず地べたに座っているのはなぜだろう。

「……ソファーに座ったらどうだ?」

「……いいの?」

「いや、俺に拒否する理由なんてないだろ」

「わかった」

 そう言うと、遠慮するようにリックと俺の間に座った。シャミは今、夜ご飯を作ってくれている。さて、今日はどんな料理を作ってくれるのだろうか。

「前いた家はどんな感じだったの?」

「叩かれたり、暗い部屋に閉じ込められたり、ご飯抜きだったり……」

「……大変だったな」

 何気ない気持ちで頭を撫でてやろうかと思い手を動かしたら、またもやビクッ!と反応した。

「…あ、すいません」

「いや、別いいよ」

 恐らく虐待の恐怖心がまだまだ残っているのだろう。手を上げるとまた叩かれると勘違いして体が反応するのだろう。虐待を受けた子供によくある反応らしい。

「ちょっと、シャミ手伝ってくる」

「あ、うん、わかった」

 なんとなく居心地が悪くなったのでそう断り、シャミの手伝いにいった。



 飯も食べ終わり、俺は風呂に入ることにした。

「じゃあ、風呂にでも入ってくるか。シャミ、一緒に入るか」

「えっ、えっ!?」

「冗談だって。そんな真剣に捉えるなよ」

「もう、からかわないでよ」

 なんていう、しょうもない話をした後、俺は風呂に入った。

「今日は大変な日だったな」

 夢で殺されそうになるわ、リンと再会もしたしな。特に前者のほうはかなり大変なことだった。あんな夢二度と見たくもねえ。

 風呂にまで入って難しい考え事も嫌なので、ゆっくり風呂に入ることにした。



 すでに夜。時間は深夜2時だ。ほかの3人はすでに寝ている。なぜ寝ないかというと、正直言って眠くない。あの夢を見るのが嫌だって言う気持ちもあるが。音を聞こえるか聞こえないかの大きさにしてテレビを見ている。

「ん……」

 リンが起きた。どうしたのだろうか。

「リン、どうした?」

「…ちょっと、のど渇いちゃった」

「水でいいか?」

「え、自分でやる」

「いいから、甘えろって」

「う、うん」

 俺は水を出して、リンに渡した。

「ありがとう」

「どういたしまして」

 リンは水を飲み始めた。こいつが何かを食べたり飲んだりするところを見るとなんでもおいしく見えるな。

「お前も大変だったな」

 俺はリンの頭を撫でようとした。やはりリンはビクッとなってしまう。しかし、俺は半ば無理矢理頭を撫でた。

「俺は前の悪魔みたいにお前を叩いたりしないさ」

 そう言うと、リンをコクリとたてに首を振った。

「さ、もう寝ろ」

「…お休みなさい」

「おう、お休み」

 リンはベットに行き、寝た。

 俺はそれを見るとつい微笑んでしまう。

 俺は朝まで起きている予定だったが知らない間に寝ててしまっていたようだった。気がついたら朝だったからな。夢は見ないですんだ。正直ホッとした。夢にビクビクしてる俺っていったい何なんだろうな。

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