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悪魔達の生活  作者: 鍵宮 周
日常
15/80

再会

 どれくらい考えていただろうか。それは30分だったかもしれないし、1時間以上悩んでいたかもしれない。シャミが心配そうにこちらをちらちら見ているが、そんなのも気にならなかった。

「どういうことなんだ」

 つぶやいてみる。つぶやくことによって何かが変わるわけでもないがなんとなくでつぶやいてみる。本当はシャミに聞いてもらいたくて言ったのかもしれない。そうすることによっと一緒に考えられるからな。

「ちょっ、ロイ!大変!」

 俺は考えるのに夢中になっており、リックが乱暴にドアを開けて帰ってきたのも気づかなかった。

「ロイ!聞いてる!?」

「ん、あ、リックかどうした?」

「どうした?じゃないわよ!ちょっと来て!シャミも!」

 俺とシャミは意味もわからないまま一人で騒いでいるリックについていくことにした。



「たしかここら辺だったけど」

 つれてきた割にはだいぶあいまいな案内だな。

 ここは俺が前に狩りに来ていた森だ。魔物は遠くに何匹かいる程度だ。やはりあのときが異常だったんだな。でも、ここに長くいてはそのうち魔物がこちらに向かってくるだろう。

「ってか、なんでこんなところまで来たんだ?」

「いや、大変なことが」

「大変なことってなんですか?」

「なんていったらいいんだろう?」

 リックがあいまいすぎる。もっとわかりやすく説明してほしいのだが。

「あ、見つけた!あの子!」

 あの子?さっき大変なこととか言ってただろう。人物なのかそれとも出来事なのか。とか思いながらリックが指差した方向を見たら、……まさに意表をつかれたという言葉がぴったりであろう。そこにいたのは約一週間前に服を買いに行ったときに会ったクソ悪魔に憑いていた女の子であった。

「あ、あ……」

 女の子はうろたえていた。ってか泣きそうだ。

「この子がこの森の中にいたのをさっき見つけて2人を呼びに行ったわけ」

 なるほど。だから急いでいたんだな。

 女の子はひどい有様だった。顔は傷だらけ。かすり傷やら擦り傷やらさまざまだ。服は泥だらけになっている。近くには大きい紙袋があった。

「この紙袋は?」

 シャミがそういいながら袋の中を見た。

「シャミ、何入っていた?」

「えっと、着替え」

 一着を袋から出して俺に見せてくれた。たたまれた形跡も洗った形跡もない。もう、ぐちゃぐちゃだ。

「ひどいな……」

 つい言葉になって出てくる。

「ひとまず家に連れて行くか」

「いや、それはやめておいたほうがいいよ。この子はあの悪魔に憑いている事になるから勝手に家に連れていけないよ」

 誰かに憑いている悪魔を無許可で自分の家に連れて帰ったりすると法律的なのに触れてしまうらしい、とリックがわかりやすく説明してくれた。なんで魔王はこういう法律みたいなことにはしっかりしているんだ。

 どうすればいいのかと俺が考えていると

「私…追い出された」

 女の子が小さな声でそういった。その声はもう少しで消えてしまうような声であった。誰かが守らないと消えて無くなりそうな、そんな感じがした。

「なら、連れて行っても問題ないよな」

「まあ、そうなるね」

「じゃあ、連れて行くぞ。立てるか?」

 俺が手をさし伸ばすと女の子はビクッと反応した。

「立てる」

 俺の手を無視し、自分で立った。なんとなく傷ついたが別いいか。

「あの、早く行きませんか?魔物さんがこちらへ」

 シャミの言うとおり、魔物たちがこちらに近寄ってきていた。

「んじゃ、帰るぞ」

 俺たちは家にすばやく帰ることにした。



「泥だらけだし、ひとまず風呂に入れてくるね」

 リックはそういい、女の子と一緒に風呂場へ向かった。

「私は服洗ってきますね」

 シャミは紙袋を持って、リックたちの後ろをついていった。

「さて、なにしたもんかな」

 俺は少しの間休もうと思いテレビをつけた。その瞬間

「お兄ちゃん、大変!」

 シャミ、リック、女の子が出てきた。早いな、まだ1分もたってないぞ。

「この子の背中!」

「あ?背中?」

「ほら、見て」

 リックは女の子の背中を俺に向け、服をまくりあげた。

「っ!?」

 声にならなかった。その子の背中には無数の痣があった。なにか棒状のものでたたかれたような痕。虐待だろうか。この子はあのクソ悪魔のところで虐待を受けていたのかもしれん。

「これは、ひどいな」

 見ているだけで痛い。

「多少はしみると思うが風呂に入れてきてくれ」

「うん、わかった」

 リックは女の子を連れ再び風呂場に戻っていった。

「ひどかったね」

「ああ」

「なんであんなことするのかな。まだあんなに小さいのに」

「まったくだ」

 俺とシャミはしばらくの間うつむき、黙っていた。

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