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悪魔達の生活  作者: 鍵宮 周
日常
14/80

夢に惑わされる日々

 最初の夢を見てから一週間。ずっとその内容に悩まされていた。なんでもないようなこととは到底思えない。俺の頭もそう叫んでいる。

「お兄ちゃん、このごろずっと上の空だけどどうしたの?」

「一週間ぐらいずっと変だよ。なんか変なものでも食べた?」

 シャミとリック2人から聞かれてしまった。やはり外から見てもおかしく見えるんだな。

「いや、なんでもない」

「言いたくないなら別いいけど」

 リックにはバレてるみたいだ。

 わがままを言ってしまうと人間のときの記憶を取り戻したい。無理とはわかっていてもこの気持ちが無くなることはないだろう。

 本当に自分がムカつく。なぜこんな大事なときに頭が働かないのだろう。どうでもいい時には働くのに。

「あ、私今日、外で働いてくるから」

「わかりました」

 二人の会話すらまともに耳に入ってこない。誰か俺を助けてくれ。

「すまん、ちょっと寝る」

 俺は寝ることであの夢をもう一度見れることに期待していた。そうすることで自分の気持ちが抑えられるような気がするからだ。

「膝枕してあげようか?」

「いや、いい」

 いつもの俺なら飛びつく話だが今はそんな余裕すらない。俺の頭が悲鳴を上げているようだ。容量がもう1MBもないだろう。

 俺は夢を見れることに期待しながら眠った。



「OO、元気だったか?って、死んだのに元気も何もないよな」

 例のコックのおっちゃんだ。これは夢であろう。しかし、俺が見たかった夢ではない。これは恐らく比較的最近の出来事であろう。保障はできないが。

 おっちゃんは俺の骨が眠っているだろう墓の前にいた。

「お前もお前の親も妹も早く死にすぎだ。まだまだこれからだっただろう」

 なんか聞いていられない。泣きそうになってしまう。しかし、耳をふさいでも聞こえてくる。心の中に響く感じだ。

「お前と話していたのがつい昨日のように思えるぜ。なんか、まだお前はどっかで生きている感じがするよ。そんなわけないのになんでだろうな」

 俺は姿が変わっちまったけど元気に生きてるよ。そうおっちゃんに言いたい。でも、言えない。

「お前の妹を殺した犯人。この前自殺したらしいぜ。あっけない終わりだよな。悔しいよ」

 これは本当に夢なんだろうか。今現代のことをそのまま見ている感じがする。

「んじゃ、俺はそろそろ帰るよ。また来るな」

 おっちゃんはそう言って帰っていった。


 目の前が真っ暗になった。また場面が変わるんだなと思っていたら、出てきたのはまた墓の場面であった。俺は彼女でも来るのかなと予想していたのだが、出てきたのは、予想外もしないものだった。

「………」

 なんかいる。なんだこのおぞましい空気は。

「なんで、私はなんで死んじゃったの?なんであの女を助けて、私を助けなかったの?ねえ、なんで!?」

 そこにいたのは妹らしきやつだった。これは夢であり俺はそこにいるはずもないのに明らかにこちらをみている。

 少女は顔を上げた。その顔は血がついていた。ただならぬ空気がそいつの周りを漂っていた。やめろ、やめてくれ。そんなこと俺が知るわけないだろう。

「あの女はお兄ちゃんを偽善者呼ばわりしたやつだよ。私お兄ちゃんといつも一緒にいたからわかるの。あいつを助けてなんで私を助けなかったの?ねえ、教えてよ!」

 やめろ、知らないと言ってるだろ。

「教えてよ。お兄ちゃんだけが今、幸せに生きている理由教えてよ。お兄ちゃんも一緒にいようよ。また一緒にいようよ。お兄ちゃんはもう死んでいるんだよ?なんでまだ生きているの?……お前も早くこっちに来いよ!!!!」

 そう言うと、そいつは手を伸ばし俺の首を絞めてきた。やめろ、苦しい。やめろ。やめろ!やめろ!!


「やめろーーーーーーーー!!!!!!!!!」

「お、お兄ちゃん!?大丈夫!?」

「ここは………」

 知らない間に「やめろ」という声が出ていたらしい。なんだ、あのリアルな感覚は。首を絞められた感覚がある。そういうことだ。誰かわかるやついないか。俺にわかりやすく教えてくれ。

「お兄ちゃん、本当に大丈夫?うなされてたみたいだけど、変な夢でも見た?」

 つい、お兄ちゃんというワードを聞くとビクッとなってしまう。

「シャミ、水くれ」

「あ、うん」

 シャミは俺に水をもってきてくれた。

「ありがとう」

 俺はその水を一気飲みした後、夢について考えた。が、さっぱりわからない。シャミが心配そうにこちらを見ている。

「熱とかある?」

 とか言いながら、俺のおでこに手を当てたりしている。シャミ、俺は風邪ひかないぞ。心配してくれるのはありがたいけどな。

「心配かけたな。すまん、もう大丈夫だ」

「本当に?」

「ああ、本当だ」

 大丈夫なわけがないが、シャミに心配をかけないようにするためにはこう言うしかないからな。

「クソ、どういうことだ」

 俺はこうつぶやくと再び夢について考えることにした。

 夢に惑わされる自分がだんだん嫌になってきた。

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