夢
さっきはふと、人間界でのことを思い出したが、実際人間界でのことなんか俺はほとんど覚えていない。転生のときに大事なときのことを忘れさせたらしい。家族構成などさっぱり覚えていない。自分の名前とかの基本は覚えているが。
「大丈夫、ロイ?もしかして、まだ腹立ってる?」
「多少はおさまったが、思い出すとまた腹が立ってくる」
「まあ、無理もないだろうね。私もさっきのクソみたいな悪魔ははじめてみたもん」
「私もあんな怖い悪魔はじめて見ました。あの子大丈夫かな」
シャミはあの小さな女の子を思い出していた。あれは明らかに無茶しているだろう。
「あの子、クソ悪魔を怖がっていたからね」
俺たちの家での生活から見たら、あの家はかなりきついんだろうな。想像したくもねえ。
ちなみにここはファミレスである。さっき買い物していたところの比較的近くのファミレスだ。料理はすでに頼んだ後で、俺たちはさっきのクソ野郎について話していた。
「あの子を助ける方法があったらね」
「やっぱりそういう方法はないのか」
「うん、正直言ってないね」
話していたら料理が来たので、俺たちはその料理をさっそく食べ始めることにした。
「普通においしかったな」
今はすでに帰宅路である。すでにしたかった買い物もすべて終わしていたからな。
「でも、私は近くのファミレスの方が好きかも」
あそこもあそこでおいしいからな。俺もこのシャミの意見に賛成だな。
「私はやっぱり、シャミの料理が一番だよ!」
「あ、それ同意」
このリックの意見には全面的に賛成である。言われたシャミは「え、そうですか?私は普通だと思いますけど」とか言っていた。謙遜する姿もいいね。
「「「ただいまー」」」
3人の声が見事にハモる。それにしても重かった。荷物は食料をはじめ、服や食器少々、ちょっとした小物など様々なものだ。
「お兄ちゃんもリックさんもお疲れ様でした」
「ははは、大丈夫だよ」
リックは明らかに大丈夫じゃない。狩りは疲れなくてもこれは疲れたか。
「俺はもう無理だ、少し休むわ」
「じゃあ、私も休む」
「私は夕食の準備かな」
「いいよ、まだしなくて。シャミも一緒に休もうぜ」
「じゃあ、お兄ちゃんがそういうなら」
3人それぞれが持っていたものをテーブルの中心にまとめて置き、ソファーに座り、テレビをつけた。シャミとリックは俺の隣に座ってきた。シャミはふうと息を吐き出し、リックは「あー、もう疲れたー」とか言っていた。俺はと言うと、ソファーに座った瞬間睡魔に襲われ、戦っていた。睡魔とタイマン張っているとシャミが俺の肩に頭を置いた。リックも俺の肩に頭を乗せさっそく眠っていた。言うまでもないが俺もそのあとすぐ寝てしまった。
目が覚めたのは寝てから大体1時間後ぐらいであろうか。両肩がなんか重いなと思ったら、シャミとリックも寝ていた。2人の美女が俺の肩に頭を乗せ寝ている。まさに両手に花って感じじゃないか。でも、困るなこの状況。動きたいけど動けない。2人をのければ動けるがそれはもったいない気がする。ので、俺はこの状況でボーッとテレビを見ていた。時々リックの髪が俺の鼻を擽り、むずかゆかった。
今はすでに7時前。シャミがせわしなく料理の準備をしていた。俺はリックにマッサージをしてもらっていた。さっきの体勢でボーッとしていたら肩がこってしまったのだ。それを言ったら今のこの状況になっている。リックのマッサージはとてつもなく気持ちいい。的確にツボを押してくれる。最高だ。今日はまさに最高の日だ。あの、クソ悪魔に会わなかったらな。思い出しただけでもまた腹が立ってきた。
そのあとのことはもう言うまでもない。いつもどおりだったからな。飯を食い、風呂に入り、歯を磨き、テレビを見て、寝た。
その夜、なんとなく変な夢を見てしまった。フラッシュバックと言えばわかりやすいだろうか。そんな感じの夢であった。恐らく場所は人間のときだろう。家にいて、俺がいて、誰かと部屋の隅にくっつきあっていた。誰かを待っているような、それとも誰かを恐れていたような感じであった。もちろんその誰かというのはわからない。顔もまともに見えなかったからな。しかし、雰囲気が誰かに似ていた。シャミでもあり、リックでもあるような。なんか不思議な感覚がした。俺にはそれしか言えない。いや、他に当てはまる言葉が出てこないだけだ。だけど、これだけは言える。この夢はとても大事な記憶であると。




