ショッピング
「ねえ、ロイ。こっちとこっちどっち似合う?」
「個人的にはそっちのほうがいいと思う」
「じゃあ、ロイがおすすめしてくれたほうにしよーっと」
今は魔王城の近くにある日本の東京のような都会に来ている。題名でもわかるとおもうが俺達3人は仲良くショッピングに来ている。そして、今は服を買いに来ている。上記の会話は俺とリックのものである。なんかこんなやり取りしているとカップルみたいだよな。
「ロイも自分の服選んできたら?」
「俺は別いいよ」
「そんなこと言ってるとシャミに嫌われちゃうよ」
「なぜ、そこでシャミが出てくる」
「まあまあ、とにかく見てきなよ。シャミのボディーガードは私がしっかりしてるからさ」
俺は「わかったよ」と言い、男が着る服が売っている場所、つまり紳士服売り場たる場所に向かった。ちなみにシャミは自分の服を選んでいた。その姿もかわゆい。
「しっかし、こう見るといろんな悪魔がいるもんだな」
堕天使みたいなやつもいればなんか鎧を着たような悪魔もいる。もちろん獣人族もいる。しかし、同じ種族でもだいぶ見た目はちがう。こう見ていてわかったのだが、男の悪魔には女の手伝い悪魔、女の悪魔には男の手伝い悪魔が憑いている気がする。男に男の手伝い悪魔というのは確かに嫌だけどな。おまけに同居。俺は絶対に嫌だね。
それにしても、やっぱり種族によって服が違うらしく、種族ごとに売り場を区別されている。俺達獣人族の所の服はやはり周りより少しサイズが小さいな。なんとなく屈辱を感じる。逆にでっかいのや鎧っていうのも嫌だけどな。俺は適当に服を選ぶことにした。
ある程度は決めた。ってか、少し選びすぎた感があるが別いいだろう。買い物カゴを2つ以上駆使して服を買っている奴らもいるしな。しかし、そいつらが小さい女の子の手伝い悪魔に荷物を持たせているのが少し気に障る。プライドというものがないのだろうか。
「ロイー、服選び終わった?」
比較的でかい声で呼ばれた。場所を考えろ、場所を。まあ、リックは元気があるのがいい所でもあるので別にいいが。
「ああ、終わったよ」
俺が振り向くと同時に周りの悪魔も振り向いたと思う。そしてその目線はリックとシャミにいっていた。なんか誇らしいね。自分のことではないのだが。
「いやー、いっぱい選んじゃった」
「選びすぎじゃねえか?」
リックの両手にはカゴ2つ。シャミの手にはカゴ1つ。俺の手に1つ。計4つカゴを使っていた。おまけにリックとシャミのカゴはパンパンだ。俺は半分ぐらいだ。
「えー、ロイが少なすぎるんだよ」
「男はこんなもんだ」
やはり買いすぎ感があるがリックががんばってくれたおかげ(俺も多少やったぞ)で金もたんまりあるので別にいいとしよう。
「ほれ、シャミ。カゴよこせ」
「え、でも」
「いいよ、持ってやるから」
「うん、ありがと」
シャミのためならこんなの苦にもならん。その笑顔が見られるなら俺はがんばれるからな。
「私のは持ってくれないの?」
「お前は筋トレ代わりに持ってろ」
「ケチー」
リックは不満な態度を表すために口をアヒルのように尖がらせた。
「リックさん、私が持ちますよ」
「いいよいいよ。大丈夫だよ」
「でもさっき」
「あれはロイだから言ったんだよ」
そんな会話を2人がしていると
「おい、はやく来い」
どっからか、ぶっとい男の声が聞こえた。で、その悪魔のだいぶ後ろの方に人間で言う、そうだな……だいたい小学4,5年生あたりの小さな女の子が体に合わない大きさのカゴを2つ持って男を追いかけていた。
「ああいうのたまにいるんだよね」
「扱き使うって感じのか?」
「うん」
俺とリックでその男悪魔を軽蔑の目で見る。
「私、あんな人の下に憑くのは嫌だな……」
シャミがこういった。大丈夫、俺がそうはさせないさ。
ふと気づくと、周りの悪魔も軽蔑の目でそいつを見ていた。やっぱりみんな考えること一緒なんだな。とか、思っていたら小さな女の子が俺達の目の前で転んだ。顔からヘッドスライディングのような感じで。見てる方が痛くなってくる。俺は見るに見かねず、その悪魔に近づき起こしてやった。
「ほら、大丈夫か」
「あ、は、はい」
「今度は転ばないように気をつけろよ」
俺はこの言葉と一緒にカゴも渡した。重い。俺でも重いのだから、この子は相当重く感じているだろう。
「あ、ありがとうございます」
「おい、なにやってんだ」
主人であろう悪魔だ。イメージはでかい。それだけだ。俺が小さいからかも知れないが。
「あの、その……」
「なにをやっていたんだと聞いてるだろ!」
女の子は怖いのかもじもじしており、男は怒っている。そして、男は俺に気づき
「お前は誰だ?」
「しがない一般人だよ。この子が転んだから起こしてやっただけだ。まったく誰だよ。こんな子にこんな荷物を持たせるようなクソ主人は。あんたもそう思わないか?」
「あぁん!?お前今なんて言った?」
「おっと、もしかしてあんたがご主人様だったか?それは失礼」
わざとらしく肩をすくめる。そのわざとらしい俺の反応に周りの傍観者たちがクスクスと笑う。
「……なんなんだお前は!?さっきから生意気な口ばっかり聞きやがって」
「あぁ、悪い悪い。すまないな、ご主人様?」
周りのクスクスが大きくなってくる。さすがのこいつも周りが敵だらけと気づいたようだ。
「チッ。おい、行くぞ」
男が一人で歩き始める。女の子は俺の前で何をしたらいいのかわからず立っている。
「ボーッとしてるな!いくぞ!」
「は、はい」
男はどっかに行ってしまった。女の子は俺に一礼したあと、その男を追いかけていった。
「ロイ、ナイス」
拳を出してきたので拳で答える。
「お兄ちゃん、かっこよかったよ」
「ありがと」
「じゃあ、会計して、お昼ごはんでも食べに行こうか」
「賛成ーー」
2人は話すと会計に向かった。俺もはやく行かないとな。カゴを取りにいくと、近くにいた悪魔達は俺を見てクスクスと笑っている。んー、これはどういう反応なんだろうか。いまいちわからんな。カゴを取り、シャミ達の元に向かおうとすると
「お前すげーな」
と、肩に手を置かれ言われた。若い男だった(大学2年って感じだな)。
「どもです」
「お前面白いな。気に入ったぜ」
などなど、俺に言った後、「じゃあな、いいもの見せてもらったぜ」と言い、どっかに消えていった。
また、向かっている途中には
「あなた、さっきのかっこよかったわよ」
と、女の人から声をかけられた。大人の女性って感じだ。ってか、どっかのお嬢様っぽくもある。
「私もああいうやつ見ると許せなくてね。でもあなたみたいな人がいてよかったわ。ありがとね」
と言われ、「じゃあね。また会えたら会いましょう」といい、これもまたどっかに行った。
「お兄ちゃん、遅かったね。なにか買い足してた?」
「いや、べつに」
すでに列に並んでいたシャミ達に合流し、俺はあることを思い出していた。
それはだいたい中学3年の卒業を目の前に控えたあたりだ。俺はカツアゲの現場などを見てしまうとつい体が動きとめに入ってしまうのだ。俺はこれを別に悪いことだと思っていなかった。陰では『偽善者』などと言われウザがれてたらしい。それを知ったときは相当なショックを受けた。おまけに俺の好きなだった奴にも思われていたらしいのでされにショックを受けた。俺は所詮そんなもんなんだと思ってしまったときでもあった。
……嫌なことを思い出しちまったな。




