俺と彼女がつきあうまで①
こちらは勇吾sideです。
『……は……』
聞こえそうで聞こえない声。
だけど、俺は知ってる。
今にも泣きそうな顔で、言ってくれた言葉を。
あれは…
「磯崎君っ!さっさと起きてP23の3行目から読みなさいっ!!」
バシーンッッッ!!!
突然頭の真上から大音声の怒鳴り声が聞こえた。
…と思ったら、その直後に頭に凄まじい衝撃が走る。
「は、はぃぃぃぃっっっ!!!」
つい反射的に大きな声で返事をしてしまってから、やっと頭を教科書で叩かれた事に思いあたった。
そして、その一瞬後…
「「「ぶはッ!あははははははははッッッ!!!」」」
教室の窓が割れるんじゃないかってくらいの笑い声。
おい、そんなに笑うんじゃねぇよ。俺は本気で痛いんだぞ。
多少ムッとしながらも、教科書を探す。
…あれ?
教科書がねぇ…。
もう一度カバンや机の中を探すが…
無い…。
うっわぁ…絶対怒られるぞ…。
チラッと先生を見ると、今の時点ですでに般若の形相…。
「せ、先生…教科書がありません…」
どもっちゃったよ…
「なんですって…?」
「や、あの…」
せ、先生っ!
顔顔っ!!
怖いって!!!
「…磯崎君…後で職員室に来なさい…」
「は、はい…」
静かな声が逆に怖ぇ…。
とりあえず、素直に従わないと殺されそうだ…。
素直に答えたが、笑顔が引きつってしまったのを自覚している。
先生は、はぁ…とそれはもう大きなため息をついて、授業を再開した。
いや…はい、すみません…悪い生徒で…。
そういや、本当に教科書どこ行った?
う~ん…と頭を抱えて考え込む。
『おーい、勇吾!教科書貸してくれよ!』
あっ!!
思わずパッと顔を上げる。
…2時間前に友達に貸したんだった…。
つーか返せよ!!
そのせいで俺、余計に怒られたじゃねぇか!!
今ここにはいない、別のクラスの友達に心の中で文句を言いまくる。
『……は……』
ふいに、さっきの夢を思い出した。
夢の中では聞こえなかったその言葉。
それを実際に言ってくれた人へと目を向ける。
すると、向こうも俺を見ていたらしく、目があった。
『バカ』
うわっ、相変わらずひでぇ…。
俺と目があった瞬間、幼なじみで俺の彼女の美咲がアイコンタクトでそう言ってきた。
つい苦笑いがもれる。
しばらくそのまま見ていると、美咲は何かを思い出したらしく、フッと笑うと前を向いて板書を写し始めた。
それでも俺はしばらくそのまま美咲を見ていた…。
こちらは勇吾視点です。
う~ん…なんだか勇吾視点のほうが書きやすいっていう…。
何故でしょう?
はい、今度こそ、次話から2人がつきあった当初の話に入っていきます!