85話 桜が「撤退路」まで設計していると明かされる
――里見・京を結ぶ密談の夜
静まり返った一室。
集められたのは、ごく少数。
桜
まな姫
慈光尼
百地三大夫
灯りは一つ。
外には、伊賀の気配がある。
桜は、机の上に一枚の紙を広げた。
桜の一言
「これ、勝つための図じゃない」
一同が目を向ける。
「負けないための図です」
撤退路という発想
桜が指でなぞったのは、
京 → 近江 → 伊勢 → 房総
を結ぶ、一本の線だった。
「風魔が動いたら、
私たちは“受け止めない”」
「受け止めるから、潰される」
慈光尼が、静かに問う。
「……逃げる、と?」
桜は首を振った。
「違います。“溶ける”」
桜が設計していた三段階撤退
第一段階:商いへの偽装
清酒・調味料・医薬品
物流はすべて 商人名義
人は「従業員」「護衛」「使者」
「忍びが消えるんじゃない。
“忍びだと思われる人間”が消える」
第二段階:情報の分散
桜は、帳面を開いた。
技術は一箇所に置かない
製法は「半分ずつ」
誰も全体像を知らない
「ここを切っても、終わらない」
百地が、低く息を吐いた。
「……嫌な設計だ」
「だが、生き残る」
第三段階:人の撤退
桜は最後に、人の名前を書いた。
まな姫:京に残る
桜:商人に紛れる
伊賀:護衛と輸送に分解
里見:表で何も起きていない顔をする
「誰も“逃げた”って思わない」
百地三大夫の理解
百地は、しばらく黙っていた。
やがて、こう言った。
「……お前は、
最初から“敗戦後”を見ていたな」
桜は、はっきり頷いた。
「はい」
「風魔に勝つには、
風魔より“生き残る”しかない」
まな姫の沈黙
まなは、唇を噛んだ。
「……私が京に残る、というのは」
「囮になります」
桜は、視線を逸らさず答えた。
「だから“囮だと悟られない立場”にしました」
「姫として、
公家と向き合っている限り
風魔は手を出せない」
慈光尼の評価
慈光尼は、静かに笑った。
「これは……軍略ではありません」
「国家運営の設計です」
「そして、
誰も“英雄にならない”策」
桜の本音
最後に、桜はぽつりと言った。
「私は、
誰かが死ぬ前提の策は、
もう考えたくない」
「勝っても、失ったら意味がない」
その言葉に、誰も反論しなかった。
百地の決断
百地は立ち上がり、深く一礼した。
「伊賀は――
この撤退路まで含めて、受ける」
「お前はもう、
“守られる存在”じゃない」
「“守り方を決める者”だ」
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