83話 風魔視点
――京・裏の茶屋
風魔の忍びは、酒の流れを追っていた。
京に入り、近衛家に入り、さらに主上の御所修繕へと向かう“金と酒”。
だが、その動きはあまりにも――
「きれいすぎる」
忍びの一人がそう呟いた。
・運ぶのは商人
・通るのは公道
・裏金ではなく“献上”という形
・量も、時期も、帳簿通り
闇の匂いがしない。
通常、罠というものは
不自然な急増
隠したがる動線
仲介の乱立
がある。
だが今回の酒は違った。
誤判断①
「公家が絡む以上、武家の罠ではない」
近衛前久という名前。
それだけで風魔は一段、警戒を落とした。
「公家は金に困るが、戦は好まぬ」
それが風魔の常識だった。
しかも動いているのは若い姫君たち。
表に立つのは里見まな。
同行するのは公家の姫・雪姫。
そして――まだ十歳の少女、桜。
「駒としては弱すぎる」
それが彼らの結論だった。
誤判断②
「これは“政治”であって“戦”ではない」
酒は兵糧ではない。
金は軍資金にしては用途が曖昧。
修繕、慰撫、朝廷内の調整――
どれも戦を遠ざける行為に見えた。
「北条に向けたものではないな」
そう結論づけられる。
誤判断③
「商いの流れは止められない」
風魔は“影”だ。
だが商いは“光”。
堂々とした流通は、斬れない。
斬れば騒ぎになり、北条に不利になる。
「触れぬが吉だ」
その判断が下される。
ただ一つ、見落としたこと
その流れを設計した者が
まだ“子供”であるという事実。
「子供だから、ここまでだろう」
そう思った瞬間――
風魔は既に、桜の掌の上にいた。
風魔頭領の独白
「罠ではない……はずだ」
「これはただの“善政”だ」
「そうだろう?」
その問いに答える者は、いない。
だが、遠くで――
静かに網は張られ続けていた。
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