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『戦国姫の脳内戦略会議』  作者: れんれん


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72話 桜・脳内戦略会議

――至高の海に沈む

夜。

里見城の外れ、桜たちの居所。

灯りは落とされ、紙と筆だけが机の上に残っている。

桜は、座ったまま動かなかった。

整ったもの

(衣)

――布はある。

――染めも、規格も、流通も整った。

(食)

――味噌、醤油、干物、椎茸。

――浜と里が循環している。

(住)

――人が住める。

――病を診られる。

――学ぶ場所もある。

(医)

――常設診療所。

――薬。

――野乃がいる。

(治安)

――常備兵。

――戸籍。

――警邏。

桜は、ゆっくりと息を吐いた。

「……整った、よね」

誰に言うでもない独り言。

戦について

(戦)

――里見義堯。

――慈光尼。

――伊賀。

「正面からの戦は……」

「かなり、防げる」

それは、驕りではなかった。

計算だった。

桜自身が、

戦わずに済む地盤を作ってきた自覚がある。

それでも残る問い

「……でも」

筆先が止まる。

「次は?」

声に出すと、重かった。

過剰な力の危険

(軍を増やす?)

――刺激になる。

――北条が動く。

(城を固める?)

――籠城は限界がある。

――経済が死ぬ。

(弱いまま?)

――吸収される。

――時間切れ。

「詰んでない」

「でも……」

「詰みやすい」

桜は、そう評価した。

同盟という選択肢

(同盟)

――差し出すものは?

土地?

娘?

利権?

情報?

「……全部、切り札すぎる」

どれも、

一度出したら戻らない。

朝廷?

ふと、思考がそこへ沈む。

(朝廷)

――権威。

――正統性。

――だが、遠い。

「……使える?」

「それとも、使われる?」

朝廷は、

剣ではない。

けれど、

剣よりも厄介な力を持っている。

至高の海

思考が、深く、深く沈んでいく。

判断材料は、揃っている。

経験も、知識も、味方もいる。

それでも――

「決め手が、ない」

桜は、自分を責めなかった。

これは、

軽く決めてはいけない局面だと、

はっきり分かっているから。

結論なき結論

「……今は」

桜は、目を閉じた。

「答えを出さない、が答え」

至高の海の底で、

まだ形にならない何かが、

静かに流れている。

次の布石

机の端に、桜は小さく書いた。

朝廷(権威)

商(流れ)

教(人)

女(縁)

線で結ばず、

ただ並べただけ。

「……いつか、線になる」

そう呟いて、桜は筆を置いた。

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