表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『戦国姫の脳内戦略会議』  作者: れんれん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

66/201

58話 桜の“次の脳内戦略会議”

――自由になったが故の重さ――**

(……静かだ)

城の外れに用意された、小さな屋敷。

板張りの床に、低い机。

正木の屋敷とも、城の一室とも違う、“桜たちの場所”。

桜は膝を抱えて座り、天井を見上げた。

「……決まっちゃった、ね」

誰に言うでもなく、ぽつりと零す。

里見まなは“残る”と宣言した。

義堯はそれを受け、正式に認めた。

そして――

考える役目は、すべて桜に一任された。

「……自由、かぁ」

脳内で、会議の鐘が鳴る。

――脳内戦略会議、開幕――

【理性】

「責任が伴う自由です。逃げ場はありません」

【現代知識】

「裁量権フル。上司は“結果だけ見せろ”タイプ。

 いちばん胃が痛くなるやつ」

【子どもの感情】

「でも……みんな、期待してた目だった」

【恐れ】

「失敗したらどうなる?

 まなの立場は? 正木は? 配下の子たちは?」

桜は目を閉じ、深く息を吸う。

「……一個ずつ、整理しよ」

机の上の紙を一枚、引き寄せる。

現状整理

「まず、今あるもの」

・農地改革 → 安定

・椎茸・味噌・醤油 → 収益化

・物流・規格 → 動き始め

・戸籍・治安 → 形になった

・医療・白粉 → 途上だが芽あり

「……やりすぎ?」

【現代知識】

「8歳でこれは過労死ルート」

【理性】

「しかし成果がある以上、止められません」

桜は苦笑した。

「前世と同じだね。

 できる人に仕事が集まるやつ」

新しい問題

桜は紙に、ゆっくりと書く。

“桜が止まったら、全部止まる”

「……これ、まずい」

【戦略】

「属人化の極致です」

「だよね」

桜は小さく頷いた。

「だから次は――

 “桜がいなくても回る仕組み”」

次の一手(仮)

「一、教育の体系化」

「二、役割分担の固定」

「三、まなを中心にした意思決定の形」

ふと、まなの顔が浮かぶ。

真っ直ぐで、まだ幼くて、

それでも“命じる側”に立った姫。

「……背負わせちゃったな」

【子どもの感情】

「怖くなかったのかな」

「怖いに決まってる」

桜はそう答えた。

「だから――」

結論

桜は紙に、最後の一文を書く。

“私が前に出すぎないこと”

「自由になったからこそ、

 全部を自分でやらない」

【理性】

「難易度が高いですね」

「うん。でも――」

桜は立ち上がり、障子を開けた。

外では、配下の少女たちが何かを話し合っている。

笑い声。

「一人じゃない」

その事実が、胸に落ちた。

「……よし」

桜は小さく拳を握る。

仕組みは、人を守るためにある

朝の城下は、いつもより静かだった。

桜は城の外れに設けられた自分たちの屋敷から、

まな姫のいる城へ向かって歩いていた。

隣には、幸恵。

少し後ろに、知子と香織、野乃。

「今日、何を決めるの?」

幸恵が首をかしげる。

「全部」

桜は即答した。

「え、全部?」

「全部」

皆が一斉に目を丸くする。

「……冗談」

桜は少しだけ笑ってから、続けた。

「でもね、“私が考える”のは全部でも、

 “私が決める”のは、もう違う」

城・協議の間

まなは、すでに席についていた。

義堯の一段下。

だが、視線は家臣たちと同じ高さで受け止めている。

「正木桜、参りました」

「……うん。入って」

まなは、はっきりそう言った。

もう、語尾に迷いはない。

桜は一礼し、前へ。

「本日は、提案が三つあります」

家臣たちがざわめく。

“提案”

それは、命令でも、お願いでもない。

これからの形を決める言葉だった。

一つ目:役割の固定

「今までのやり方は、

 できる人が、できることをやる――でした」

「だが、それでは限界が来ます」

桜は台帳を広げる。

「ですので、

 畑・加工・医療・教育・物流

 それぞれに“責任者”を置きます」

「判断は姫様が行い、

 私は“案を出す者”に徹します」

空気が一瞬、張り詰めた。

【前に出すぎない】

その言葉を、桜は本当に実行しようとしていた。

二つ目:学びの場の常設

「子供だけの集まりは終わりです」

「字を読める者、計算できる者、

 記録を残せる者を、

 意図的に育てます」

家臣の一人が口を開く。

「女子に、そこまで必要か?」

桜は、答えなかった。

代わりに――

「必要です」

まなが言った。

「この領は、人で持っている。

 学べる者が増えれば、

 守れる者も増える」

初めて、

まなが“自分の言葉”で場を動かした瞬間だった。

三つ目:決める場所を一つに

「これからの協議は、城で行います」

「桜たちは案を持ち込み、

 姫様が取りまとめ、決断する」

「責任の所在を、曖昧にしません」

義堯は、静かに頷いた。

「……よい」

その一言で、

流れが決まった。

帰り道

城を出たあと、

誰もすぐには口を開かなかった。

やがて、野乃がぽつり。

「……さくら、前より、遠くなった?」

桜は立ち止まり、振り返る。

「ううん」

少し考えてから、言った。

「前より、“ちゃんと横”になった」

皆が一瞬きょとんとして、

それから笑った。

桜の胸の内

(自由になった)

(でも、

 “守る仕組み”を作る役になった)

桜は空を見上げる。

もう、独りで突っ走る時代じゃない。

まなが前に立ち、

皆が役目を持ち、

桜は――次の道を照らす。

「……さて」

小さく息を吐く。

(次は、医療を“制度”にする番だ)

脳内戦略会議、

静かに次章へ移行した

「次は、“仕組みを作る側”だ」

脳内会議、静かに閉幕。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ