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『戦国姫の脳内戦略会議』  作者: れんれん


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57話 二つの場所、ひとつの意思

城の外れ。

かつては使われていなかった、

林に近い空き地に――

新しい建物が、静かに形を成していた。

「……ここが、私たちの?」

幸恵が、目を丸くする。

木造だが、しっかりとした造り。

風通しを考えた間取り。

作業場、保管庫、小さな集会の間。

そして――

一番奥には、見慣れた“棚”。

台帳が並ぶ場所。

「城下でも、正木の屋敷でもない」

香織が、ぽつりと言った。

「……でも、私たちの場所だね」

桜は、ゆっくりとうなずいた。

(拠点を分ける)

(でも、切り離すわけじゃない)

正木の屋敷。

これまで開発を進めてきた畑や工房。

それらは、そのまま使う。

「今まで通り、あそこにも通うよ」

桜が言うと、

野乃が少し不安そうに首をかしげた。

「じゃあ……ここは?」

「ここは――」

桜は、棚に手を置いた。

「考える場所」

「まとめる場所」

「守る場所」

一瞬の沈黙のあと、

知子が小さく笑った。

「……なんか、難しい言い方」

「でしょ?」

桜も、少しだけ笑う。

でも、心の中では分かっていた。

(ここは、“逃げ場”じゃない)

(“前に進むための場所”だ)

その頃――城。

評定の間とは別の、小さな会議の間。

そこに座るのは、里見まな。

その前に、家臣数名。

そして――

正木桜。

「今後の取りまとめは、私が行います」

まなの声は、落ち着いていた。

「城下、城外、正木の拠点――

 それぞれの報告を集め、

 判断を下す役は、私が引き受けます」

家臣の一人が、慎重に言う。

「では、姫。

 開発の中身、方針については――」

まなは、迷わず答えた。

「桜に、一任します」

その場に、はっきりとした緊張が走る。

「新しい案」

「危うい挑戦」

「成功も、失敗も」

まなは、桜を見た。

「それを考え、選ぶのは――

 桜の役目です」

桜は、一瞬だけ目を伏せ、

そして、静かに口を開いた。

「……責任は?」

まなは、はっきりと答えた。

「決断の責任は、私が負います」

「だから――」

少し、柔らかく微笑む。

「遠慮なく、考えて」

桜の胸に、

じんわりと熱が広がった。

(ああ)

(これが、“同盟”なんだ)

前に出る者と、

後ろで支える者。

でも、上下じゃない。

役割が違うだけ。

その夜。

城の外れの新しい建物。

女の子たちが集まり、

簡単な夕餉を囲んでいた。

「ねえ、桜」

幸恵が言う。

「私たち……どうなるの?」

桜は、少し考えてから答えた。

「忙しくなる」

「考えることも、増える」

「失敗もする」

一人ずつ、顔を見る。

「でも――」

「もう、“勝手にやってる子ども”じゃない」

「正木の配下で」

「里見の中で」

「役目を持つ人間になる」

静かな沈黙。

そして、香織が言った。

「……怖いね」

「うん」

桜は、正直にうなずいた。

「でも、私は――」

棚に並ぶ台帳を見る。

「ここまで来たなら、

 もう、止まらない」

外では、夜風が木々を揺らしていた。

城と、城の外れ。

二つの場所。

でも――

意思は、ひとつ。

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