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『戦国姫の脳内戦略会議』  作者: れんれん


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59/60

51話 桜の脳内戦略会議まなが嫁がない選択も

夜。

正木の屋敷の一室。

桜は帳面を広げ、灯明の下で一人、脳内戦略会議を始めていた。

(縁談を“断る”のは悪手)

(拒否は敵を作る)

(必要なのは――価値の再定義)

紙の上に、小さく文字を書く。

「里見まな=嫁ぐ姫」

その横に、線を引いて消す。

「里見まな=領内を回す要石」

(この像が広まれば、

 縁談は“奪う行為”になる)

桜は、次々と札を並べていく。

一、姫不在時の損失を可視化する

翌日、桜は父を通じて、

さりげなく里見家の家臣に資料を回した。

・姫名義で動いている浜と畑の連携

・姫の名で通っている融通

・姫がいるからこそ集まる人材

どれも、

「姫が命じた」とは書かれていない。

だが、読む者には分かる。

(……姫がいなくなれば、止まる)

二、縁談相手に“重さ”を持たせる

次に桜が動かしたのは、商人だった。

「姫様がいなくなる可能性がある」

そう“噂”として流す。

するとどうなるか。

「え?

 じゃあ、この取引は……」

「浜の整いは?

 畑の保証は?」

縁談相手の家には、

自然とこうした声が届く。

(姫を迎える=

 成果ごと引き取る責任)

(それ、

 本当に払えるか?)

三、姫自身を“象徴”にしない

桜は、まなにだけ伝えた。

「姫様、

 何もしなくていいです」

「ただ、

 “ここにいる”だけで」

まなは戸惑ったが、

桜は静かに続ける。

「今は、

 姫様が動くほど

 縁談が加速します」

「だから――

 動かない」

「周りが、

 姫様を必要だと

 言い出すまで」

夜。

桜は、帳面を閉じた。

(縁談は、人の欲で始まる)

(ならば、

 欲を満たせない形にする)

(敵を作らず、

 価値だけを重くする)

ふと、笑う。

「……ほんと、

 大人のやり方だな」

数日後。

里見義堯の元に、

一通の報せが届く。

「縁談先、

 再考を願い出ております」

理由は、

「時期尚早」。

義堯は、文を置き、

小さく息を吐いた。

「……正木の娘か」

その目は、

警戒よりも――

感心に近かった。

同じ頃。

まなは、桜に言った。

「……ねえ」

「私、

 選ばされた気がしない」

桜は、少し首を傾げる。

「だって、

 まだ何も選んでないですし」

まなは、

くすっと笑った。

この時、

縁談は“消えた”のではない。

意味を失ったのだ。

そして――

姫が“残る未来”は、

静かに現実になりつつあった

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