表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『戦国姫の脳内戦略会議』  作者: れんれん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

57/60

第49話「試される忠と理」

城の朝は早い。

里見義堯の前に、数名の重臣が集められていた。

顔ぶれは、武断派と内政派が混じる、意図的な布陣だ。

「近頃、城下と正木領が騒がしい」

義堯の声は低く、感情を含まない。

「姫を中心に、人と物が動いているという話がある」

一人の家臣が、慎重に口を開く。

「……姫様の御名を使い、

正木の娘が動いていると聞き及びます」

別の家臣が、すぐに被せた。

「ですが、結果は出ております。

浜は潤い、畑は安定し、

争いの芽も減っている」

義堯は、黙ったまま指を組む。

(力を持たせすぎれば、

 姫は“利用される”)

(だが、縛れば――

 姫は“消耗品”になる)

そのとき。

「……正木の娘を、呼べ」

空気が変わった。

桜は、父と並んで御前に立った。

まだ幼い身体。

だが、視線は逸らさない。

「聞く」

義堯は単刀直入だった。

「お前は、

姫を守ると言ったな」

「はい」

「それは忠か?

それとも、算か?」

一瞬、周囲が息を呑む。

桜は、答える前に――

脳内で会議を開いた。

(忠義?

 戦国の言葉だと重すぎる)

(算?

 それだけでは冷たい)

(両方を、

 “暮らし”に落とす)

桜は、口を開いた。

「どちらでもありません」

ざわり、と空気が揺れる。

「私は、

姫様が“残ることで困る人”より、

“助かる人”の方が多いと知っています」

義堯の眉が、わずかに動く。

「畑が回り、

浜が回り、

城下が回れば――」

「姫様がここにいる理由は、

自然に増えます」

「それは、

忠でも算でもなく」

桜は、はっきりと言った。

「流れです」

沈黙。

義堯は、ゆっくりと息を吐いた。

「……流れを作るには、

責任が要る」

「はい」

「失敗すれば、

姫の名が傷つく」

「その時は――」

桜は一歩、前に出た。

「私が、

正木が、

全て引き受けます」

年齢に似合わぬ覚悟。

だが、言葉は軽くなかった。

義堯は、しばらく桜を見つめ――

そして、笑った。

「試してみるか」

家臣たちがざわつく。

「三つ、条件を出す」

「一つ。

姫の名を使う時は、

必ず私に通せ」

「二つ。

正木は、

過剰に武を持たぬこと」

「三つ――」

義堯の視線が、鋭くなる。

「結果を出せ」

桜は、深く頭を下げた。

「はい」

その夜。

桜は、帳面を広げていた。

(通過点、クリア)

(次は――

 “姫が何もしなくても回る仕組み”)

外では、城下の灯が増えている。

誰も知らない。

だがこの日――

里見の姫は、

初めて“試される側”から

“試す側”へと移った。

そして、その背後には、

確かに――

正木桜が立っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ