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『戦国姫の脳内戦略会議』  作者: れんれん


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第39話 人が増えるという重さ

人が増えれば、活気が生まれる。

だが同時に――歪みも生まれる。

市は賑わい、夜でも灯が消えぬようになった。

一方で、小さな揉め事、盗み、身元の曖昧な流れ者も目立ち始める。

「善意だけでは、もう回らぬな」

父は帳面を閉じ、深く息を吐いた。

桜はその様子を見て、はっきりと言葉を選ぶ。

「父上、人が増えたからこそ、“数える”必要があります」

「数える?」

「はい。

誰が、どこに住み、何をしているのか。

それが分からぬままでは、守ることも裁くこともできません」

桜の口から出た言葉は、まだこの時代では馴染みの薄いものだった。

――戸籍。

家ごとに人を記し、年齢、仕事、移動を把握する。

それは支配ではなく、責任の所在を明確にする仕組みだと説明する。

父はすぐには答えなかった。

だが翌日、桜を連れて里見のもとへ向かう。

里見の当主は、帳面の案を見てしばし黙り込んだ。

「……面白い。

人を縛るためではなく、“数として守る”ための仕組みか」

豊富になった資金が、ここで生きる。

荒銭から生まれた金銀は、常備兵という形に変わった。

農繁期に関係なく雇われる兵。

給金を受け取り、領内を巡回し、夜の市を警邏する。

彼らは戦のためではない。

争いを未然に防ぐために立つ。

「名を名乗れ」 「どこの家だ」 「困りごとはあるか」

その問いかけが、次第に民の安心へと変わっていく。

戸籍が整い始めると、不思議なことが起きた。

人々が“ここに属している”という意識を持ち始めたのだ。

逃げ込む場所ではなく、

帰る場所になる。

桜は夜、灯の増えた町を見下ろしながら思う。

(人が増えたから、争いが生まれるんじゃない

仕組みがないから、歪むんだ)

戦わずして守る。

剣ではなく、帳面と巡回で。

それはまだ誰も名付けていない、

新しい統治の形だった。

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