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『戦国姫の脳内戦略会議』  作者: れんれん


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33/60

第30話 乾燥椎茸と主上への献上

献上は、

一度きりでは意味を持たない。

続けられる形にして、

初めて道になる。

■ 乾かすという選択

山の小屋。

桜は、生の椎茸を前にして考えていた。

(香りはいい)

(だが、生は不安定)

湿り。

時。

運ぶ距離。

戦国の道は、

今もなお荒い。

桜は小さく頷いた。

「乾かそう」

幸恵が首を傾げる。

「味、落ちない?」

桜は首を振る。

「逆」

「閉じ込める」

天日。

風通し。

夜露は避ける。

香織が呟く。

「軽くなるね」

「うん」

「軽くなって、

 強くなる」

■ 安定という価値

乾燥した椎茸は、

香りが濃い。

形も崩れない。

量も読める。

父は手に取り、

しばらく黙ってから言った。

「これは……」

「献上に向く」

桜は静かに答える。

「季節を越えます」

それが、

最大の意味だった。

■ 里見の判断

里見義堯は、

乾燥椎茸を前にして、

すぐに理解した。

「これは、

 商いではないな」

側近が言う。

「日持ちします。

 香りも強い」

義堯は頷いた。

「だからこそ、

 京へ持っていける」

里見は、

商人のつてを使うことを決めた。

城下を通り、

港を越え、

都へ。

目的は一つ。

公家との繋がり

そして――

主上への献上

■ 名を伏せた献上、再び

献上の品には、

詳しい説明は添えない。

「安房の山の幸」

それだけ。

だが、

乾燥椎茸は、

火を入れた瞬間に違いを語る。

戻した水。

立ち上る香り。

公家の一人が言った。

「これは……

 記憶に残る」

主上の御前に並んだ折、

言葉は少なかった。

だが、

残された椀は、

空だった。

■ 朝廷へ伸びる糸

里見のもとに、

静かな知らせが届く。

「安房の品、

 覚えられております」

義堯は、

深く息を吐いた。

「通ったか」

それは、

戦ではない。

血も流れない。

だが――

国を守る糸が、

一本、都へと繋がった瞬間だった。

■ 桜の記録

夜、灯の下。

桜は帳面に書く。

――「軽くして、

――遠くへ」

――「強くして、

――長く」

乾燥椎茸は、

ただの保存食ではない。

距離を越え、

時を越え、

身分を越える。

桜は筆を置く。

(これで、

 正木は“土地”から

 “名”になる)

名は、まだ表に出ない。

だが、

確かに――

朝廷へ届いていた。

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