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『戦国姫の脳内戦略会議』  作者: れんれん


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199話 春日山への招き

越後より正式な使者が来る。

差出人は――

上杉謙信

「正木家の娘、桜殿。

 春日山にて直に問う」

噂ではない。

疑念でもない。

直接確かめるという意思。

桜は迷わず応じた。

――春日山城・対面――

山城は静謐だった。

豪奢ではない。

武威を誇示する造りでもない。

実直。

それが主の気質を映している。

広間で対面する。

謙信は無駄な言葉を使わない。

「尾張と通じ、戦を変えたと聞く」

桜は伏して答える。

「変えたのではなく、早めただけにございます」

わずかに空気が動く。

桜は顔を上げる。

「西は、いずれ一つになります」

断言。

「それを止めることは叶いませぬ。

 ならば、速やかに終わらせる方が民のためにございます」

謙信は視線を外さない。

「東はどうする」

ここが本題。

桜は一拍置き、言う。

「東をおまとめくだされ」

静まり返る広間。

名指し。

責任の指名。

「北条殿がおられます」

北条という名を出す。

直接的な敵対の象徴。

(※史実上の関東の覇者は 北条氏康)

桜は続ける。

「されど、誰かが軸とならねば、

 戦は繰り返されます」

「義を掲げられる御方は、

 殿をおいて他にございませぬ」

これは称賛ではない。

責務の提示。

「そのためならば」

桜は深く頭を下げる。

「いくらでも協力は惜しみませぬ」

・兵糧の融通

・備蓄の共有

・交易路の確保

・情報の提供

「東が安定すれば、西と均衡が保てます」

「均衡が保てれば、大戦は起きませぬ」

謙信は沈黙する。

長い。

重い。

彼の内で、義が問われる。

義とは戦うことか。

それとも守ることか。

関東出兵は“正義のため”だった。

だが戦は終わらなかった。

民は疲弊した。

桜の言葉は、戦を否定してはいない。

無秩序を否定している。

やがて謙信が言う。

「我は天下を望まず」

「されど、乱世を座視もせぬ」

視線が鋭くなる。

「東をまとめよと申すか」

桜は静かに答える。

「はい。

 剣ではなく、軸として」

謙信の反応は怒りではなかった。

むしろ、わずかな笑み。

「面白い娘よ」

「尾張を利で縛り、我を義で縛るか」

桜は否定しない。

「縛るのではございませぬ。

 結ぶのでございます」

やがて謙信は決断する。

「北条とは剣を交えねばならぬやもしれぬ」

「されど、終わらせる戦とする」

ここが変化。

無限の関東出兵ではない。

目的を定めた戦。

「東の安定を得られるなら、

 そなたの策、試してみよう」

桜は胸の奥で息を吐く。

(動いた……)

西は合理で動き、

東は理念で動く。

その間に里見がいる。

小さいが、止め木のように。

春日山を下る桜。

山風が冷たい。

だが恐怖は薄れている。

義と理はまだ衝突している。

だが初めて、

同じ未来を見た。

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