14話 特産品の開発と椎茸人工栽培への密かなる挑戦
椎茸1本の価格戦国時代
足軽の月給の3倍に値していた
足軽給金 → 現在価値
① 日当制
5文/日
約 500~1,000円
10文/日
約 1,000~2,000円
現代で言うと
「日雇いの最低賃金以下」レベル
1日1000円×30日×3倍=90000円
1本の価格が9万という破格の価格です。
特産品の開発と椎茸人工栽培への密かなる挑戦
――正木桜・脳内戦略会議、継続中。
(農地は安定。
台帳も回り始めた。
……次は“特産品”)
桜は囲炉裏端で、膝に帳面を広げていた。
見た目は五才の幼子だが、頭の中では忙しく歯車が回っている。
(保存がきく。
軽い。
価値が高い。
山と畑、どちらにも属する――)
「……椎茸」
ぽつりとこぼれた言葉に、兄が首をかしげる。
「しい……なに?」 「山のきのこ」 「また変なの考えてる」
(変でいい。
最初は全部、変に見える)
■ 内緒の開発会議
城下で仲良くなった同世代の子どもたち――
香織、幸恵、知子、野乃
人目につかない畑の端、切り出した原木が並ぶ。
「ねぇ、これ、育てるの」 「木で?」 「うん。山に行かなくても」
子どもたちは半信半疑だ。
(説明を削る。
“菌”“胞子”“培養”は禁句)
「この白いのが、きのこのもと」 「ふーん……」
桜は壺を取り出す。
■ 寒天“もどき”への挑戦
(寒天……ない)
(ゼラチン……ない)
(でも“固めて増やす”発想は使える)
桜は試した。
米を炊いて、柔らかくして冷ましたもの
米のとぎ汁を煮詰めたもの
麦を蒸して布で包んだもの
「これに、白いのを置く」 「……それだけ?」 「それだけ」
(本当は全然それだけじゃない)
原木に穴を開け、
白いものを入れ、
土と葉で覆う。
(雑菌、来るな……)
■ 失敗の連続
数日後。
「さくら、これ、くさい」 「……失敗」
白くなるはずが、灰色。
ぬめり。
虫。
「こっちは?」 「……何もない」
原木を割っても、
中はただの木。
(定着してない)
(勝ててない)
次も、次も――失敗。
子どもたちも不安そうになる。
「ほんとにできるの?」 「……わからない」
桜は正直に答えた。
■ 1年では無理か?
夜、帳面を開く。
成功:自然発生のみ
人工:全滅
(設備が足りない)
(時間も足りない)
五才の身体で、
一年はとても長い。
でも――
(技術としては、短すぎる)
「……一年じゃ、無理か」
声に出してみて、
胸が少し軽くなる。
(なら、二年)
(三年でもいい)
■ 小さな結論
翌日。
「今日はやめる」 「え?」 「しばらく、木を置くだけ」
子どもたちは驚いたが、桜は静かだった。
(急がない)
(環境を作る)
(失敗を残す)
帳面に、失敗を書き続ける。
(これも“開発”)
正木領の片隅で、
誰にも知られない挑戦は続く。
白いものは、言うことを聞かない。
けれど――
逃げもしない。
特産品への道は、
まだ、土の中だった。




